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ちゅきちゅき、あいちて!  作者: 榛名のの(春夏冬)
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プロローグ

初めましてよろしくお願いします。

「跡取りは、次男の雲英きらとする」


そんな馬鹿な!俺の手腕で株式上場するまでに育った会社が何故?!何もしてないヘラヘラ笑っているだけの雲英に!


「さすがは、会長!名采配です!」


大きな拍手の渦がホテルの大会議場に響く。

皆、同じように祝福してるのか?!


会長である父のいわおは挙げた片手一つで拍手を止めると続けてこう言った。


「長男の英智えいちには、引き続き開発部門の主任をやらせるので皆よろしく頼む!」


アイツが社長で、俺は一部門の主任?!

やってられるか!

テーブルを両手で叩きつけ立ち上がる。


皆が何だと俺を見る。


「今、この日を持って辞めさせていただきます!」


ジャケットの内ポケットに折り畳んで持っていた辞表を父の前に置き会場を後にした。


誰も俺を止めなかった。

自宅替わりのキャンピングカーで夜の高速を北へ走り、祖父 利英きえいの道場へと向かう。途中でスマフォが鳴りっぱなしになったが、誰の話も聞く余裕はなかった。

 人生に絶望してたのだ。

しかし、祖父にも拒絶された。


「それは逃げて来ただけではないか!」


「利英先生、お願いします!何でもやります!私をここにおいて下さい!」


「ならぬ!」


「お願いします!何でもやります!」


「ならぬ!出て行け!」


グウ~~ゥ。


赤くなる利英先生。

冷蔵庫を開ければ何も入ってない。


「買い出しに行って参ります!」


「待て!ワシはもう長くない!道場も閉じる気だ。…胃ガンのステージ2だそうな」


即刻、入院させて手術をさせた。あ~だこ~だ文句を言ってたが手術費用が無かっただけだろう!任せておけ、金ならある!

ボロボロだった道場と母家もDIYしてきれいになった。祖母との思い出の家、なるべく変えない方法でリノベーションした。手すりを付けたり、階段をスローブにしたり、さすがにお風呂は、五右衛門風呂だったので業者に頼んでヒノキ風呂の介助できる広さにした。

 幸い、胃ガンの方は、利英先生が年の割りに頑強だったおかげで、即手術でき、夏には退院出来た。

 食事は、ポタージュと工夫をこらした柔らかい食事を心掛けた。量も少なくおかずは品数多く。利英先生もよく我慢して俺の料理の腕が上がるまでどんなダークマターでも食べてくれた。時々吐いてたので、病院へと、言えば、「不味すぎる」と一言。反省して料理教室通って何とかした。

手術から1年が経つと、道場の引き継ぎが始まった。

 その頃になると、料理もまともな物が作れるようになって道場の弟子にも振る舞う事が増えた。

 利英先生の教えているのは総合格闘技で弓も真剣も使う玄人向けの物だったので、以前は空手家や柔道家の黒帯の中年世代が通っていたが、今は異世界召喚を夢見る中高生が通っている。段を取っていつ、異世界召喚されてもいい状態にするらしい。厨二病が重いが真剣に稽古してるので見逃している。

 利英先生はますます元気で、俺を容赦無くボコボコにしてる。

異世界召喚ムーブも徐々に高まり近年稀に見ぬ弟子の数になった。


「英智先生、異世界では、魔物は生きてるんで、的を動かして下さい!」


面倒なこと言いやがって!ま、それぐらいならちょっといじったら良いだけたから、出来るけど。仕方ないから的が動くようにしたら、もっと弟子が増えた。一番稽古してるのは利英先生だった。…イキイキしてる。


「これはいいな!」


利英先生はその翌日喀血してそのまま帰らぬ人となった。ガンが全身へ転移していた。

 一番近くにいたのに気付いてあげられなかった。俺は心に空いた穴を埋めることが出来ず利英先生からいただいた真剣で胸を突き、自分の人生にピリオドを打った。



 ♢♢♢♢♢


目が覚めると薄暗い森の中だった。


「なんれ、いきちぇるんだ?」


何だ?!この話し言葉は、何かおかしい!朝露に濡れた草から身を起こす。顔に土がついてるので手で拭く。モミジの葉っぱみたいに小さな手。体を触って見る。うん、子どもだ。それも3才くらい。信じられないような鮮やかな朱色の髪の毛をしてる。

前髪が邪魔だ。切りたい。

すると、胸が熱くなり、剣の柄が心臓から出て来た。


「なんら、これ?!」


柄をおそるおそる掴むと脇差しがズルリと体から出て来た。

これ、利英先生の形見の日本刀に似てる。考えたら形見の刀になった!

お、重い!

また脇差しくらいに小さなサイズになった。

そうだ、前髪を切ろう。肩くらいの長さがある前髪を脇差しの先でぷつりと切る。

脇差しを藤の蔓で腰にくくりつけて立ち上がる。余りの身軽さにフラついていると目の前の茂みが揺れ観たことも無い動物が出て来た。


※※※※※鑑定

バジリスク(Aランク)

魔獣。人肉大好き!毒で攻撃してくる。今のエイチでは勝てない。「ちゅきちゅき、あいちて!」で難を逃れるべし!

※※※※※※


「【ちゅきちゅき、あいちて?】なんだ、それ!」


ヨダレを垂らした超大型カメレオンはボウッとしている。今のうちに逃げればいい!


「どっちにげりゅの?!かんてい!」


※※※※※鑑定

木の上でしたら大丈夫でしょう。これは貸しですからね!

※※※※※※※


鑑定、世知辛い!

木登り久しぶりだな。

指の力だけで、木登りして下を見るとバジリスクの巣だった!木を伝って遠くへ逃げる。

逃げてる間にピンと来た。


「いちぇかいてんちぇいだ!」


小声で呟いて気配を消す。

 そうだったら困ったことになった。女神様にも会ってないし、チートと言えばこの脇差しと鑑定だけ。しかも鑑定には貸し借りありのよう。なるべく使わない方がいい。

 お腹空いた。


※※※※※鑑定

15キロ先に行けば地上に降りて狩りが出来るでしょう。それまでは、ちょっと苦いけど、マロの実を齧って腹を満たしましょう。

※※※※※※


実を探して木を伝っていると栗の実みたいなのがあった。イガを取って中を齧れば、ちょっと苦いけど、美味しかった。空腹こそ最高の調味料!

結構大きい実だったけど、3個食べた。

木の上で寝てたらデカい蛇が来た。脇差しで眉間をついて倒した。急いでその場から離れた。


転生2日目。寝不足でふらつく体をどうにか動かしていたが寝落ちしてしまった。生臭い臭いに目を開ければまた、大蛇が迫っていた。


※※※※※鑑定

「ちゅきちゅき、あいちて!」です!

※※※※※


「【ちゅきちゅき、あいちて!】こりぇっちぇ、みりょう?」


※※※※※鑑定

そうです。簡単なお願いなら聞いてもらえます。

※※※※※※※


マジか!


「15キリョのせてってくりゃさい!」


※※※※※鑑定

降りたら狙われるでしょう。

※※※※※※


それは対策考える。

銀色の蛇の頭にライドオンして進んでもらうと15キロはあっという間だった。お礼に眉間に脇差しのプレゼント。はい、死んだ!


「おい、従魔になんてことするんだ!」


革鎧のお兄さんお姉さん達発見。


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