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EDEN  魔王と大天使に溺愛される私は次の神様らしいです  作者: 秦江湖


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死の景色・マリア

4日目になり雨は止んだ。



なんだか久しぶりに青空を見たきがする。


窓を開けてみると空を覆っていた黒雲は断片的に残ってはいるけども小さい塊が間隔をおいてぽつん、ぽつんとあるだけだった。

久しぶりに気持ちのいい朝を迎えた。



「おはよう!」

「オッス」

「おはようお姉ちゃん」

リビングに降りていくと先に来ていた詩乃と瑞希が手を上げて応えた。

「久しぶりに綺麗な空ね」

朝食を並べながら神尾先生が言う。

「ほんと!空だけじゃなく私もスッキリしたみたい」

パパの席だけが空いている。

「お父様は今晩お帰りになるわ。さっき連絡が来たから」

「良かった!」

私が席に着くといつものように神様にお祈りを捧げて朝食を食べた。



神尾先生がテレビを点けると朝のニュースが流れていた。

4日ぶりの快晴についてキャスターが笑顔で話している。

そして芸能人の結婚やサッカーの試合、普段通りの何の変哲もないありふれたニュースが画面から語られた。



朝日を浴びながらいつものように3人で歩いて行く。

「なんか変な臭いしねえ?」

詩乃が気がついた。

「ほんとだ。臭い」

瑞希が顔をしかめる。

「これって魚?なんか生臭い」

私が言うと2人がうなずいた。

嫌な予感がした。


不気味な雨が止んで、青空が顔を出していつものような綺麗な景色が戻ってきたと思っていたのに。

なんだろう?この予感は。

嫌な気持ちのまま3人川沿いの道に出たときだった。



「ああっ…」

瑞希が呻くように声を漏らして立ち止る。

私も詩乃も立ち止った。

目に写った光景は私達から言葉すら奪った。

そこには無数の死骸があった。

川に浮かぶ魚の死骸。

死臭が風に流されて拡散される。

さっきの異臭はこれだったんだ。


川の水は灰色に変色している。

きっと黒い雨水のせいだ。

「なんだよこれは…?」

詩乃が川面を見渡して言う。

「お、お姉ちゃん!詩乃ッ!」

瑞希が足下を指さして言った。

「ああっ!!」

声を発した私は思わず自分の口に手をやった。

足下――

地面に生えている雑草はほとんどがどす黒く変色して枯れていた。

草に隠れて虫の死骸もたくさんある。




学校まで続く川沿いの道を改めて見渡してみた。

灰色の死骸を浮かべた川。

枯れ草色の土手。



「おい。いこうぜ」

詩乃が私と瑞希に言う。

でも知らない間に脚がガクガク震えて歩きだせない。


何が起こったの!?

どうしてこんなことが!?

何かが起きている。

私達の知らないところでとても恐い何かが。



得体のしれない恐怖が足下からじわじわと這い上がってくる気がした。

私達は終始言葉をかわすことなく無言で歩いた。

死の景色の中を。



学校に着くと話題は今朝の光景のことで一色だった。


「マリア!あれ見た!?」

私が教室に入ると美羽が駈け寄ってきて聞いてきた。


「うん…」

「あれってやっぱ黒い雨のせいなのかな?」

「わからないけど… そう思う」

テレビでは黒い雨は害がないようなことを言っていた。

私もそれを聞いて安心していた。

多分みんなも。

でも、今朝の光景を見てしまったらとてもそうは思えない。



「オイ!日本だけじゃないみたいだぜ」

固まっていた男子グループの誰かがスマホを持った手を高く上げて言った。

周囲のみんなが群がる。

私と美羽は窓際からその環を眺めていた。

「こっちにも載ってるよ」

詩乃と純が私達の側に来て、詩乃が画面を見せてくれた。

画面は投稿サイトだった。

そこには投稿された写真や動画がのっていた。



日本だけじゃない、いろんな国から投稿されている。


そうだ……

あの雨は世界中で降ったんだ。

黒い雨が原因なら世界中で同じようなことが起きてておかしくない。

コメントには「黒い雨のせいだ」って書かれてある。

じゃあ、どうしてテレビでは何も言ってなかったの!?



「これってヤベ―ンじゃね―の?」

「世界終了とか?」

「でもテレビじゃなんも言ってなかったよ?」

「隠してるんだろ?テレビで言ってみろよ?大パニックだぜ」

「でもネットで見れるんだし」

クラスメート達は画面を見て口々に騒ぎだした。

「騒ぎすぎでしょう。だいたい雨の成分だって解っていないのに」

純がニッコリとして言う。

「じゃあ純は、あの黒い雨は関係ないって言うの?」

「それは解りません。ただ今騒いでもなにもならないってことです」

私が聞くと純は騒いでいるクラスメートを見ながら静かに言った。



「たしかに純の言う通りかもな。騒いでもしょうがないって」

詩乃がスマホをポケットにしまいながら言った。

教室内の騒ぎをよそに始業のチャイムが鳴る。



普段通りの日常を告げるチャイム。

でも世界では普段通りでないことが起こっている。

そのギャップが滑稽を通り越して異様にも感じた。





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