表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EDEN  魔王と大天使に溺愛される私は次の神様らしいです  作者: 秦江湖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/43

涙と動悸と幸福と・温もり

次の日。


学校が終わってからリリに誘われたけど私は用事があるといって先に帰った。

嫌なこととか考えないように遊んで発散したいけど……

そんなときに襲われたら巻き添えにしちゃう。

一人、川を横目に歩いていた。



あれ?

前方に見覚えのあるバイクが一台、道路に停めてある。

土手を見ると郷が横になっているのが見えた。


歩いて行くと気がついた郷がこっちを見る。

「オッス!なにしてんの?」

片手をあげて声をかけた。


「なんだよ?今帰りか?」

郷は関心ないように視線を空に向けた。

「まあね」

言いながら横に座る。



「なにしてんの?こっちの方にいるなんて珍しいね」

「ちょっとな。考え事だよ」

「ふうん…なに考え事してたの?」

すると郷は体を起こして煙草をくわえた。


「最近、おまえがしけた顔してるからな。なんだろうって思ってよ」

フーッと煙を吐く。

「別にしけてなんかいないって」

「ならいいけど」

強がって笑い飛ばしたけど、あっさり流された。

私のこと考えてくれてたんだ……

郷は川をながめながらタバコを吸ってる。


私も同じように川の流れを見てみた。

「綺麗だね」

陽の光を反射してキラキラと輝く川を見ながら言った。

「そうか?」

郷は関心のないといった声。

「そうじゃん」

「なんだ?今日は仲良しごっこの取り巻きはいねえのかよ?」

「そういう言いかた止めてくれない?みんな“友達”なんだから」

そして一言付け加えた。


「あなたもね」

私が言うと郷は「フン」と鼻を鳴らした。

「オマエは本当にこの川が綺麗だと思っているのか?」

「えっ」

郷が何を言っているのかわからなかった。

どこからどう見ても綺麗なんだけど……

「捻くれてるのね」

私が言うと郷は呆れたように笑った。

「なにが可笑しいの?」

「だってオマエ、汚染されてるぜ?この川も、空も、こうして座ってる地面も」

「まあた… どっかで聞いたようなこと言っちゃってさ」

人の生活の側にあるんだから、そりゃあ山奥の源流みたいなわけにはいかないだろうけど。


「ほら!水鳥だって気持ち良さそうにしてるじゃん」

水面を滑るように移動している水鳥を指さして言った。

水鳥がいるってことは餌になる魚もいるってことだし。

「まあいいよ。綺麗ってことにしとこうぜ」

郷はそう言うとまた寝っ転がった。

私はその横で座りながらゆっくり流れる川を見ていた。



なんだか時間の流れを忘れてしまうような気分……


「ねえ」

「ん?」

「いいよ。私」

「なにが?」

「神様になっても」

郷の横顔を見つめて言った。

今、そんな気分になった。

もういろいろ考えるのも嫌だし、いっそのことサッサと神様とかになれたらどんなに楽かなって。


郷が煙草をくわえながら私を見る。

「なんでだ?」

首を傾げて聞いてきた。

なんでって……

ここで聞くか!?

私にとにかく神様になって欲しくって、自分の宇宙を創りたかったんじゃないの?


「別に…… そういう気分になったの」

郷は黙って私を見るだけで話さない。

薄紫色の瞳が私をまっすぐ見てる。

とても澄んだその瞳は、なんだか私の考えてること全部を見透かされそうな気がした。

慌てて目をそらす。


「ミカエルじゃなくて俺でいいのか?」

目をそらした私に聞いてくる。

「別にどっちでもいいよ。あなた達だって神様になるのが私でなくても別にいいんでしょう?」

どっちだってよかった。

天使でも悪魔でも。

あなた達だって同じようなもんでしょう?

私じゃなくても、他の誰かが神様になるのなら私と関わることもないんだし。


「なんの心変わりだ?おまえは人間として恋愛もしたい、友達と遊びたい、そう言ってなかったか?」

「だってそんなの無理じゃない」

「?」

郷がきょとんとする。

「私がいたら…… あの魔神とか化物が襲って来るわけでしょ?この前の学校みたいに関係ない友達まで巻き込んじゃうもん」

「ふうん。で?」

素っ気ない。


「だからぁ!さっさと神様にでもなったほうがいいかなって思ったのよ!

なるまで時間かかるなら誰もいない無人島にでも行こうかなって。

そこでずっと暮らしてれば他の人に迷惑かからないじゃない?」

私が言うと郷は何も答えないで私を見てた。

「ほら、無人島くらいすぐ行けるんでしょ?連れてったよ」

どうにでもなれと思った。

そこまでいけばいろんなことに踏ん切りがつくかなって。



「プッ……」

「えっ?」

「クッククク……クハハハハハ……」

郷が肩を揺すって笑い出した。

「アッハッハ…… ア――ッハッハッハッハ――ッ!!!」

肩にとどまらずお腹まで抱えて笑ってる……

「なによ!?なにがそんなに可笑しいのよ!?」

「ヒ~ 腹痛ぇ~おまえ、そんなことで?もしかしてここんとこしけた面してたのかよ?」

な、涙を流すほど面白いの!?

「ちょっと!!なんなの!?人がどんだけ悩んだとか考えたことある!?」

腹が立った。

あんまりじゃない!?


「おまえなあ、ズレまくりなんだよ」

ようやく笑い終わって郷が言った。

「なにがよ?」

「いいか?魔神どもが襲って来るのも、おまえが主になるのも全部おまえとカンケーねえところで勝手に他人が決めたことなんだよ。おまえに責任なんざ1ミリもねえ!」

「そんなこと……」

そんな簡単な理屈じゃないよ……

「そのせいで誰かが怪我したりしたらどうすればいいのよ!?」

みんなの顔が浮かんだ。

パパ、詩乃、瑞希、神尾先生……

それに美羽に純、リリ……


「ほっとけよ。そんな連中。おまえが気にするようなことじゃねえよ」

「バカっ!!」

郷をにらんで怒鳴った。

「みんな私にとってはかけがえのない人なんだから!」

「だからそんなことは俺様に任せとけばいいんだよ」

郷が見下ろしながら言う。

「ものはついでだからおまえの取り巻き連中も守ってやる。だからおまえは友達ごっこに恋愛ごっこと楽しンでりゃいいんだよ」

……

「な!何よその言いかた!!」

完全に頭に来た!!


「ふん。調子戻ってきたじゃねーか。おまえはそのくらい威勢がいい方が似合ってる」

「えっ」

「おまえの居場所はここだ。大事なのはおまえがここにいたいのかってことだ」

私の居場所……

私はここにいたい。



「それから最初に言ったように決定権は俺にある。勝手に無人島に行くとか喚くな。おまえは今迄どおりいろ!ウジウジ悩んでる顔見ると俺様の神経に障るんだよ」

「いいの…?私がみんなの側にいて」

「ああ」

郷は私を見てうなずいた。

「ありがとう」


そのとき異変が起こった。

私は笑顔でお礼を言ったはずだったのに、そのつもりだったのに目から涙が溢れてきて、嬉しいのに涙が止まらなかった。

「おい?なんだよ!?なに泣いてるんだよ!?」

今度は郷が驚いて慌てる。

私は泣き笑いしながら首を振った。



しばらくして、ようやく泣き止んだ私は郷に家の近くまで歩きで送ってもらった。

夕陽を受けてまっすぐ伸びる私と郷の影。

「ここでいいよ。ありがとう!」

ここを曲がるとすぐ私の家に着く。

「ああ」

「なんか郷の言葉でいろいろ吹っ切れた気がする」

私が言うと郷はフッて笑った。

ほんとうに大分楽になった。



「じゃあな」と言うと郷は背中を見せて歩き出した。

離れていく郷の背中に声をかけた。


「ねえ!私が悩んでるってなんでわかったの?詩乃や瑞希はいつも家で一緒だからわかるけど美羽やリリは気がついてないと思うし、郷なんてちょっとしか顔合わせないじゃない?」

立ち止まった郷はこっちを向いた。

薄紫色の瞳が私を射るように見つめる。

そして郷の口から出た言葉は、


「俺が考えてることっていったら、いつでもマリアのことだけだからだ」


その言葉を受けて私はなにも言葉を返せなかった。

なんて言っていいのか頭に浮かばない。


固まったみたいになってる私を見てフンと鼻で笑うと郷は後ろ手に手を振って歩き出した。

その背中を見えなくなるまで見ていた。



なんかヤバイ……

これって変な感じ。

私の心臓はドキドキして……

胸の奥がキュウ―ッって締めつけられるみたいで……

ため息が漏れてくる。



家に帰ってもしばらく治まらなかった。

私ったらどうしちゃったんだろう…?



その日はパパも早く帰って来ていたので家族みんなで食事ができた。



そして次の日。

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい」

「気をつけてな」


鳥のさえずりが聞こえる中、パパと神尾先生の見送りを受けて私と詩乃、瑞希の三人は学校へ行った。

目の覚めるような青空から降りそそぐ気持ちのいい朝日を浴びながら歩いていると詩乃が話しかけた。


「なんか元気になったじゃん」

「うん!まあね」

私が言うと瑞希が、「お姉ちゃんが元気になって良かった!」と言った。

「ごめんね心配かけて」



くよくよ考えても仕方がない。

私の居場所はここで、私はここにいたい!

それが一番大事なんだから。



学校の側まで行くと美羽とリリが歩いていた。

「おはようマリア」

「おはよう」

二人に私は笑顔で挨拶を返した。



もう冬で、風は冷たいけど私達を照らす陽は暖かい。

その温もりにたまらない幸せを感じた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ