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EDEN  魔王と大天使に溺愛される私は次の神様らしいです  作者: 秦江湖


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狂喜

理事長室の前に校長が姿勢を正して立っていた。

「やあ、校長先生」

純が声をかける。

「理事長。お待ちしてました。みなさんお待ちです」

恭しく一礼すると理事長室のドアの横にあるカードリーダーにカードを通してセキュリティーを解除した。


ドアロックが外れると純が中に入る。


部屋の中は照明を落としていて薄暗く、窓はカーテンで外からは見えないようになっている。

部屋の中央には大きなテーブルがあり数台のモニターが設置されていて奥にある純の席に向いていた。


校長は部屋に入ると後ろ手にドアを閉める。

席に着いた純がモニター画面に向かって話し始めた。


「みなさんお待たせしました」


数台のモニターにはそれぞれ男が映っている。

全員が純の父親かそれ以上に歳の離れた大人だ。


「片桐理事長、その後の経過はいかがですか?」

モニターに映っている白衣を着た男が訊ねた。


「数値的には問題ありませんね。ここ数か月のデーターも申し分ありません」

それを聞いて全員から感嘆の声が上がる。


「ただね、みなさん」

純は目の前に置かれたコップの水を口にしてから続けた。


「環境破壊の速度は予想を超えて上がってきているでしょう?」

「そうだ!それを聞きたかった…… このデーターは間違いないんですか?」

一人が質問する。


「ええ。各国との比較を検討にはじき出したものですからね。半年以内には万全の準備を整えておかないと。もう足踏みは許されない」


モニターの画面がざわつく……

純は各々の反応を確認してから不敵な笑みを浮かべて言った。



「EDENプロジェクトの仕上げに入りましょうか」

その言葉を聞いて、モニターの向こうの男たちは一斉に純に問いかける。

「仕上げ!?」

「大丈夫なのか?」

「例の件はどうなったんだね!?あの病気の」

「各国間の連携はどうする?」

純は肩をすくめて鼻で笑った。



「みなさん、ナンセンスですよ。心配するところはそこじゃない。少なくとも半年後には世界のパワーバランスが崩れるんだ。生存か?滅亡か?その最後の鍵は僕らが握っている。そうでしょう?」

全員が押し黙ったように静まり返った。


純は続ける。


「今は各国間の連携なんて言ってますけどね、どんなに数が減っても他者より優位にたとうとするのが人間ですよ。出し抜く機会をうかがってるに決まってる。こっちがやらなくても向こうがやってきますよ」


純はメンバーの心理を煽りながらも安心を与えることも忘れなかった。


「大丈夫。激発性身体機能不全は半年後には発症しなくなります。ワクチンの開発はもちろんコピーのストックで対応だってできる」


その言葉を受けてモニターに映る一人が口を開いた。

「わかった。では君の言うとおり準備を進めよう」


「ありがとうございます」

純が頭を下げると残りのメンバーも賛同した。



会議はその後、一時間弱続いた。


「ふう……」


会議が終わると純はイスの背もたれに身体を預けた。


「お疲れ様です」

校長がかける労いに片手を上げて応える。


「校長先生。ありがとうございます。これから研究所に指示を出しておきますから先生はそろそろ通常業務に戻ってください」


「かしこまりました」


校長は純に一礼すると退出した。



純は自分の目の前に置かれたもう一台のモニターに人差し指をあてると操作した。

画面に人が映し出された。

「お待たせしました。高原教授」

純が挨拶した人物はマリアの父親。

高原教授だった。


「今の会議は聞いていたでしょう?」

「ああ」

笑顔の純に対して高原教授は厳しい表情をしている。


「そういえばこの前の報告書にあった例のモノの解析は?」

「今からそちらに送信する」

「あの学校での狂犬騒ぎはビックリしたけどね、君の報告を聞いてそんなもんは吹っ飛びましたよ。あの裏山にはなにがあったんです?」


純と高原教授が話しているのはルシファーが悪霊と戦った裏山のことだ。

もちろん彼等は、ルシファーの戦いそのものは知らない。

しかし想像を絶する痕跡は残されていた。



「まず核爆発に匹敵するような超高熱が局所的に発生した形跡があった。だが汚染されたような症状は見られない。自然現象ではとても考えられない。もちろん今の科学でも不可能だ」


「たしかに。そんなエネルギーは聞いたことがない。で?」


純の関心はその先にあった。


「また、未知の生物の死骸…… わずかな肉片だが、それと細胞から微量だが未知のエネルギーがいくつか採取された。もちろん地球上のものではない」


「それそれ。それが聞きたかった。なんだと思います?」


高原教授は間を置くと慎重に答えた。


「我々の知識にはない。だがEDENプロジェクト…… いや、君の研究にとっては大いに飛躍するものだろう」


「でしょうね。あの死骸の写真とレポートを見たときに直感しましたよ。僕の研究は正しかったってね」


笑みを浮かべて顔を歪める純を高原教授は無言で見つめてから口を開いた。


「今そちらに送信した。確認してくれ」



純は急いで目の前にあるもう一台のモニター画面を操作した。

着信されたメールを開くと添付されたデーターを見る。


「ああっ…!!」


驚嘆の声を漏らすと純は高原教授と話していたのも忘れたかのように画面を食い入るように目を見開いた。



データーを読み進めていくうちに純の口元が歪む。

やがて身体が小刻みに震えだした。



「クックックックックック…… やっぱり!!」


肩を揺すって笑い出す。


「これだ!!これだよッ!!――ア――ッハハハハハ――!!」



狂気…


狂喜…!!



身悶えしながら歓喜の声を上げる純を高原教授は静かに見ていた。


その表情からは何を思っているのかうかがいしれない。


誰もいない部屋の中で純の狂気をはらんだ笑い声だけが響いていた。







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