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企画「ひだまり童話館」参加作品

ありんこトニー

作者: 霜月透子

 ありんこトニーは寄り道ばかり。

 みんな一列にならんで歩いていても、トニーだけはあっちにふらふら。こっちにふらふら。ちっともまっすぐに進みません。

 気になるものがあるとすぐに列を外れていなくなってしまいます。遠足のとちゅうでもおかまいなし。

「先生~! またトニーがどっかにいっちゃいました~!」

 一匹のアリがそういうと、一列にならんで歩いていたアリたちはきょろきょろと見回しました。

「ほんとうだ。トニーがいないぞ」

「また勝手にいっちゃった」

 先頭を歩いていた先生は、きれいにならんでいるアリの子たちをふりかえりました。

「ほかの子たちはみんないるかい?」

「はーい」

「よし。それならこのまま進もう」

「先生、トニーを連れもどさなくていいんですか?」

「行きと同じ道を帰るから迷子にはならないだろう。トニーがくねくねと遠回りをするのはいつものことだからな。きっとすぐにもどってくるさ」

 先生が歩き出すと、アリの子たちは一列にならんでついていきました。

 先生がいったとおり、トニーはすぐにもどってきました。

「あ。トニーだ」

「トニーがもどってきたぞ」

「やあ、トニー。どこにいっていたんだい?」

「ちょっとあの石のむこうまで」

 そうこたえると、またどこかへいってしまいました。

「先生~! またトニーがどっかにいっちゃいました~!」

 そんなことを何度もくりかえしたら、先生が立ち止まりました。急に止まったので、後ろを歩いていたアリの子たちはごっつんこしてしまいました。

「先生、どうしたの?」

「困ったことになったぞ。道がなくなっているんだ」

 目の前には行きにはなかった川ができていました。どこからか流れてきた水が川になったようです。これでは先に進めません。

「うわーん。おうちに帰りたいよー」

 みんながないていると、トニーが帰ってきました。

「みんな、どうしてないているの?」

「トニー、きみはいなかったから知らないんだね。川ができて帰れなくなったんだ」

「だいじょうぶ。帰れるよ。ぼくについてきて」

 みんなはぞろぞろとトニーについていきました。先生も一番後ろからついていきます。

「ほら。ここからわたれるよ!」

 そこには一本の小枝があって、橋のようになっていました。

「すごいや、トニー」

「えへん。寄り道をして見つけたんだ」

 みんなで小枝の橋をわたっておうちにかえりました。



 ありんこトニーは寄り道ばかり。

 みんな一列にならんで歩いていても、トニーだけはあっちにふらふら。こっちにふらふら。ちっともまっすぐに進みません。

 気になるものがあるとすぐに列を外れていなくなってしまいます。遠足のとちゅうでもおかまいなし。

「先生~! またトニーがどっかにいっちゃいました~!」

 一匹のアリがそういうと、一列にならんで歩いていたアリたちはきょろきょろと見回しました。

「ほんとうだ。トニーがいないぞ」

「また勝手にいっちゃった」

 先頭を歩いていた先生は、きれいにならんでいるアリの子たちをふりかえりました。

「トニーがくねくねと遠回りをするのはいつものことだからな。きっとすぐにもどってくるさ」

「先生、きょうはどこにいくの?」

「みなさん、きょうの遠足はごちそうを食べにいきます」

 先生が胸をはっていいました。

「わーい。ごちそうってなんだろう」

 先生が歩き出すと、アリの子たちは一列にならんでついていきました。

 先生がいったとおり、トニーはすぐにもどってきました。

「あ。トニーだ」

「トニーがもどってきたぞ」

「やあ、トニー。どこにいっていたんだい?」

「ちょっとあの葉っぱのむこうまで」

 そうこたえると、またどこかへいってしまいました。

「先生~! またトニーがどっかにいっちゃいました~!」

 そんなことを何度もくりかえしたら、先生が立ち止まりました。急に止まったので、後ろを歩いていたアリの子たちはごっつんこしてしまいました。

「先生、どうしたの?」

「困ったことになったぞ。ごちそうがなくなっているんだ」

「ごちそうってなんだったの?」

「ビスケットだよ。こーんなに大きなビスケットがあったから、みんなで食べようと思ったんだ」

「うわーん。ビスケット食べたかったよー」

「おなかぺこぺこだよー」

 みんながないていると、トニーが帰ってきました。

「みんな、どうしてないているの?」

「トニー、きみはいなかったから知らないんだね。ごちそうを食べるはずだったのに、ビスケットがなくなっちゃったんだ」

「だいじょうぶ。ごちそうならあるよ。ぼくについてきて」

 みんなはぞろぞろとトニーについていきました。先生も一番後ろからついていきます。

「ほら。ごちそうだよ!」

 そこにはお砂糖の山があってきらきらかがやいていました。

「すごいや、トニー」

「えへん。寄り道をして見つけたんだ」

 みんなでお砂糖をたべました。おなかいっぱいになったので、おみやげに一粒ずつかかえて帰りました。



 ありんこトニーは寄り道ばかり。

 みんな一列にならんで歩いていても、トニーだけはあっちにふらふら。こっちにふらふら。ちっともまっすぐに進みません。

 気になるものがあるとすぐに列を外れていなくなってしまいます。遠足のとちゅうでもおかまいなし。

「先生~! またトニーがどっかにいっちゃいました~!」

 一匹のアリがそういうと、一列にならんで歩いていたアリたちはきょろきょろと見回しました。

「ほんとうだ。トニーがいないぞ」

「また勝手にいっちゃった」

 先頭を歩いていた先生は、きれいにならんでいるアリの子たちをふりかえりました。

「ほかの子たちはみんないるかい?」

「はーい」

「よし。それならこのまま進もう。トニーがくねくねと遠回りをするのはいつものことだからな。きっとすぐにもどってくるさ」

 先生が歩き出すと、アリの子たちは一列にならんでついていきました。

「雨上がりだけど、また川ができていたらどしよう」

「今朝の雨でごちそうがとけちゃっていたらどうしよう」

 きょうの遠足はなにがおこるのかと、みんなどきどきしています。

 しばらくすると、トニーがもどってきました。

「あ。トニーだ」

「トニーがもどってきたぞ」

「やあ、トニー。どこにいっていたんだい?」

「ちょっとあの花のむこうまで」

 またどこかへいってしまうのかと思いましたが、トニーは先生にいいました。

「先生。いいものを見つけたから、みんなでいきませんか?」

「なにを見つけたのかな? 先生はいってみたいと思うけど、みんなはどうかな?」

「いきたーい」

「なんだろう? なんだろう?」

「きっとびっくりするよ。ぼくについてきて」

 みんなはぞろぞろとトニーについていきました。先生も一番後ろからついていきます。雨のしずくをつけてきらきらしているお花の先までいくと、トニーが立ち止まりました。

「ほら。ここだよ!」

「わあ!」

 目の前に大きな虹がかかっていました。

「すごいや、トニー」

「えへん。寄り道をして見つけたんだ」


 ありんこトニーは寄り道ばかり。

 みんな一列にならんで歩いていても、トニーだけはあっちにふらふら。こっちにふらふら。ちっともまっすぐに進みません。トニーが先頭になると列はくねくね進みます。

 ありんこトニーは寄り道ばかり。

 そして、すてきなものを見つけてばかり。


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《くねくねな話》
― 新着の感想 ―
人生は時に寄り道が必要。 トニーがそんなことを教えてくれるような、素敵なお話でした! ありさんの行列可愛いですね♡ キラキラのお砂糖の山。いつの間にかありさんの視点になっている私も、嬉しくてわあっと…
おお、童話の王道、三つのリフレインですね。 (三段オチ? 言い方がわからないのでこう言ってみました) まわり道ですか。 私の人生も、常にそんなものですよ。まわり道のはずが、いつしか本筋となる場合もあ…
ありんこトニー! より道ばかり! ハチやアリの一部はサボると聞いたことがあります。 トニーのより道は、アリにとって違う可能性を探す道なのかもしれませんね。
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