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第二話 「石の上にも怨念」結1

メッセージを読んだ俺は、すぐさま佐野詩織を連れて、さくら先生のアパートに向かった。

アパートに着くと、ちょうど警察の車から降りて来るさくら先生とお姉さんの姿が見えた。どうやら、警察で任意の事情聴取を受けて、帰りに送ってもらったところだったらしい。

「あの、何があったんですか?」

佐野詩織がさくら先生たちに向かって尋ねた。口を開いたのは、お姉さんの方だった。

「裕紀人さん……、私の元婚約者がね、私のせいで……。」

お姉さんは、言葉に詰まって泣き出してしまった。すると、さくら先生が、お姉さんの背中をさすりながら、「ここじゃ難だし、部屋に上がってから説明しますね。」と俺たちに言った。

部屋に入ると、さくら先生のお姉さんは、居間と繋がった寝室の布団の方に力なく倒れた。さくら先生はそれを見て、居間と寝室の間のカーテンをそっと閉め、俺たちは居間のちゃぶ台を囲むように座って、さくら先生の話を聞いた。

「あの、昨日見た、庭の大きな石、覚えてます?あの石の下敷きになって、今朝遺体で発見されたらしいんです。……発見、って言っても、石玄が、自分で通報したらしくて。当然警察の方で事情聴取されてたんですけど、今のところ石玄を犯人として逮捕するのはほぼ無理らしいです。死因が内臓破裂による失血死だっていうのは分かってるんですけど、ただ、殺害方法に謎があるんです。人が石の下敷きになってるってことは石が一度持ち上げられたってことじゃないですか。あれほど大きな石をどうやって人の手で持ち上げたのかって。しかも、そのうえ隣家の子供の目撃証言があって。昨日の夜中、大きな石が石玄邸の庭をのっしのっしって歩いてたって。」

……石が歩く?

「細長い、手足みたいなのが生えてるのも見たってその子は言っているらしいんですけど、警察もその子の親も寝ぼけた子供の証言だってそこまで相手にしてないみたいなんです。」

そりゃそうだろう。

「第一、なんで子供がそんな夜中に起きてたんですか?」

「夜中トイレに行ったときに、廊下の窓から明かりがちらちらしてて、見たら隣の家の庭で歩く石を見たって。」

「一人で夜中にトイレに行けるなんてかなりしっかりしたお子さんじゃないですか。」

確かに、佐野詩織の言う通りだ。

「はい。中学生らしいので。」

思ったよりだいぶデカかった。そうなると証言の信憑性も上がってくる。

「でも確かに、鑑識さんの調べでも、おかしなことに、まるで歩いたみたいに、石が動いて、ピンポイントで、ドンってお腹を踏みつけたような状態だってことで。ほら、しめ縄が付いてたじゃないですか、あれに泥が付いてないから転がした訳でもなく、かと言って、住宅街に持ち込むと目立つだろうし道路の幅的にも入らないからクレーンとかで持ち上げた訳でもなく、って。実はこれが初めてじゃないらしいです。石玄の家で、同じように亡くなった人が発見されるのは。前も証拠不十分で逮捕されなかったみたいです。このままだと今回も、ですよね……。」

「歩く石には心当たりがあります。」

俺もゲームに出てくる歩く石の怪物ならいくらでも心当たりがある、と言おうか一瞬迷ってやめた。

「ただいくつか確認したいことがあるので、今日は一度帰宅させて頂きます。」

おい、マジかよ!この状態の姉妹を置いていくのか、こいつは!

「ご安心ください。絶対に石玄を司法で裁いてもらいます。」

自信に満ち溢れた凛々しい表情で、そう言い残した佐野詩織はそのままそそくさと本当に帰って行った。

残された俺は正直困っていた。この後バイトがあるからである。頃合いを見て帰りたいのはやまやまなのだが、この状態で帰りますとは言いだしづらい。しかし、刻々とバイトの時間は迫ってくる。どうせ帰るんだったら謎を解いてすっきりさせてから帰ってくれよ、佐野詩織!

意を決して、「本っ当に申し訳ないんですけど!」と俺が言いかけると同時にさくら先生が、「あの!」と言い出した。

「はい何でしょうか?」

俺は即座にさくら先生の話を聞く態勢に切り替えた。

「お家の方とか、心配されてるんじゃないでしょうか?帰らなくて大丈夫なんですか?」

渡りに船だった。

「実はこの後バイトがありまして……。大変心苦しいのですが、今日のところは俺もお暇させて頂きます。お邪魔いたしましたぁ。」

と挨拶して、バイトに向かった。


翌日の放課後、佐野詩織から、先日悪魔の呪いについて謎解きをしたあの公園に呼び出しがあった。

行ってみると、佐野詩織と、さくら先生のお姉さんの二人しかいなかった。

「あれ?さくら先生は?」

「さくら先生は都合により第二回開催の方にはお呼びしていません。」

ん?

「第二回開催って何?第一回があったってこと?」

「はい。先ほど警察署の方でやって参りました。」

佐野詩織は嬉々として答えた。いや何だよ、都合って。全員第一回でまとめろよ。

「第二回は、江戸川、さくら先生のお姉様、そちらの中谷さん、林さん、石玄代理をお呼びしての開催となります。」

後半三つは先日のリスの遊具を指差して言った。あ、こないだは暗くて分からなかったが、犯人役にされるリス、開けた口の塗装が右側部分だけ少し剥げていて、まるで左の口角だけ上げて、ニヒルな笑みを浮かべているように見える。これはいかにも犯人な、悪い顔だ。なるほど、だからこいつを犯人役に指名したのか。

俺がそんなことを考えていると、パンっと両手を合わせた佐野詩織は前と同じように、始めた。

「さあ、皆様お揃いのようですので、それでは始めさせて頂きます。『石の力』の謎解きを。」

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