表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

彼女が去って行くのをベランダから見ていた

作者: 黒楓

この作品は「なろうラジオ大賞6」応募作品です。





「あ!鍵、返さなきゃね」

 彼女はバッグからキーホルダーを出し、この部屋の鍵を外そうとする。


「オレ、やってやるよ」


「いい! 私が!……」と言い掛けた彼女は

「まあ、あなたの合鍵だから……任せるわ」とキーホルダーをオレに渡す。


 こうやって彼女から何かを頼まれるのも久しぶりだ。


『それも……オレが口ばっかりだったからか……』

 自分の部屋の鍵を外しながら今更ながらに思う。


 彼女との時間は……さっき宅配業者が来て引き上げて行った荷物の数くらいで……


 いや、それも違うか……


 彼女の()()がオレよりずっと大きくて……その齟齬が、彼女がオレに愛想を尽かす事となり、彼女がオレの部屋で作り上げた物の大半を……惜しげもなく打ち捨てて行く結果となった。


 勿論オレは!

 浮気なんかしない!

 彼女に手を上げた事も声を荒げた事も無い!


 それでも彼女は住むべき部屋をさっさと用意し、手際よく荷物をまとめた。


「それは他に男が居るんだよ!」と友人はビールジョッキをグイッ!と()ってオレを諭し煽るけれど……それは心の内に不毛な嫉妬を起こさせるだけで……オレはますます惨めになる。



「もう行くわ!」

 最後の荷物であるキャリーバッグのファスナーの引く音が別れのファンファーレ。


 オレの目の前からサッ!とキーホルダーを取り上げて彼女はコートを羽織る。


 やり直しを懇願する言葉がオレの中で溢れかえっているけれど……背中を向けたままのオレはドアが閉まる音を聞いただけだった。


 部屋がしんとしてしまって……

 手持ち無沙汰にタバコを持ち、ベランダへ出る。


 彼女はもうこの部屋に居ないのに……こうして彼女との約束事に縛られて……やりきれなく視線を泳がすと、日常を刻んでいる国道に沿って歩いて行く彼女が見えた。

 背筋を伸ばし、カツカツとヒールの音が聞こえてきそうな勢いで、駅へ向かってカートを引いて行く彼女の姿が……






まあ、ダメな男の話で……私は彼女に同情もしますが……こんな男、居ますよね?(^^;)



ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんな男、いますね…… と言うか、俺、こんな奴じゃね?とため息つきたくなる男性が多いと思います、私も含め。 男性心理まで踏み込めるなんて、楓さん、流石! ちなみに私、カクヨムを始めましたが、今の所…
別れのファンファーレ、日常を刻む国道、とさりげなく使われているおしゃれなワーディングが素敵だなと思いました。 愛情の温度差はなかなか埋めるのが大変かも。 でもその歩み寄りができなければ、気持ちは離れて…
あー、なんか沢田研二の『勝手にしやがれ』を思い出してしまいましたー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ