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第五十七話 王宮での野外パーティ

 突然、アレッツォにやって来てバルたちを襲ったラースローネという黒服の魔女。

 しかしバルの暗殺に失敗し、退散したのでありました。

 そんなことが起きたのもビーチェたちはつゆ知らず、王宮の庭で行われる野外パーティへ向かっていました。

 服装は堅苦しくなくて良いと聞いてましたが、それでも王宮ですから一応用意してきたブラウスや、スラックスを履いてきました。

 ビーチェとウルスラはミニスカですね。アイドルと対抗するつもりなんでしょうか。


 ――広い王宮なので、近衛兵に案内されて庭までやって来ましたが……


「ジーノォォォォォォォォ!!」


「わっ リタ…… さん」


 なんとマルゲリータさんが、ジーノのオーラを感じたのかパーティ会場から駆け寄ってきました。


 ――ガシュッ ぽよよん


「あーーーー!!」


 マルゲリータさんはジーノに思いっきり抱きついて、彼の顔はおっぱいに(うず)まってしまいました。

 それを見たビーチェは大きな声で叫びます。

 対戦相手に過ぎなかったマルゲリータさんがどうしてそんなことを?


「フガッ フガガッ!?」

「あーん! ジーノぉぉぉ! あたしと結婚しよぉぉぉ!!」

「な、なんだと! ジーノはあたしの()()だ!」


 マルゲリータさんはいきなりジーノへ求婚!?

 彼女がそんなことを言うものだから、ビーチェも勢いで彼を自分の所有物のように言ってしまいました。


「クックックッ 面白いことになってきた」

『いえ、むしろ面倒なことになってきたのでは……』


 ウスルラはこの状況が楽しくて仕方がないようです。

 ジーノの身体にグネグネ纏わり付くようにしているマルゲリータさんを見て、ビーチェは赤鬼のような顔になっています。


「ねーんジーノぉ、あたしにあんなことをして責任取ってくれるよねえ?」

「フガガッ? フガッ!」

(あんなことって? キノーズ・ノーイェか!)


「なーにやってんだあああ!! オ・バ・サ・ン!」

「オバサン? このクソガキめ。あんた、ジーノの何なのさ? 恋人?」

「ここここ恋人ぉぉぉ!?」


 責任とは、やはりジーノが掛けたエッチな技、キノーズ・ノーイェのせいでしたか。

 安易に使うからこんなことになるんですよ。

 マルゲリータさんがビーチェにオバサンと言われ、ギロッと怖い顔で睨みます。

 そして恋人かとツッコまれると、ビーチェは赤鬼の顔からトマトが爆発したような顔になりました。


「何? 恋人じゃないってのならジーノをもらってもいいんじゃない?」

「だ、大事な幼なじみだ……」

「ふーん、幼なじみねえ。何となく察したけれど…… ジーノに聞いてみようかな?」

「フガッ!?」


 マルゲリータさんはジーノの顔を自分のおっぱいの谷間から話すと、抱きついたままこう問いました。


「ねえジーノ? あたしとビーチェ、どっちと結婚したい? あんたの強さなら私にふさわしいし、夜のお手合わせもお互い楽しめそうよ? フフフ……」


「おおおお手合わせ!?」


「ううううっ ジーノぉぉぉぉぉ!!」


 マルゲリータさん、随分ストレートな質問ですねえ。

 ビーチェはまた赤鬼の顔に戻ってしまいました。


「あいや! リタさんことはよく知らないし何とも…… ビビビビーチェとは…… うううっ」

「ええ? 男ならはっきりしなさいよ」


 まあ、こんな状況で普通は応えられるわけないですよね。

 ビーチェは限界になったようで、二人の方へ重くドシドシと歩いて行きました。


「だから()()はあたし()だ!」


 ビーチェはそう言って、ジーノをマルゲリータさんから引っ剥がし、自分の胸へ(かか)え込みました。

 今度はビーチェの胸の谷間にジーノの顔が挟まれました。


「フガフガッ!?」

(おおっ ビーチェの胸のほうがちょっと硬めだな。やっぱり歳を取ると柔らかくなるのか?)


「ハァ…… 仕方ないわ。あんたたちの郷はアレッツォって村だっけ? 今度遊びに行くね。フッフッフッ」


 マルゲリータさんはそう言い残し、先にパーティ会場へ行ってしまいました。

 本当にアレッツォへ来たら、また一騒動がありそうですね。


「来なくていいよぉぉぉ! べー!」


 ビーチェはマルゲリータさんの去りゆく後ろ姿にあかんべー。

 ジーノが頼んだビザのマルゲリータにも噛みついてきたくらいですから、敵意に満ちてますね。


「あにょビーチェ、そろそろ息が苦ひい……」

「へ? う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 ――ボカァッッッ


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


 ビーチェは自分の胸の谷間にジーノの顔を挟んでいたのを今更恥ずかしくなって、ジーノを殴り飛ばしてしまいました。

 見られても、触るのはまだ駄目なんですね。ましてパ◯◯フでは……


「な、なんて理不尽な……」 パタッ


「こんなところで倒れないでよ。しょうがないわね……」


 ウルスラは気を失ってるジーノを魔法でそのまま浮かせ、パーティ会場へ向かいました。

 その後ろを付いていくビーチェと(わたくし)

 ビーチェの表情は、不貞腐れてるのか、ジーノに対して申し訳ないのか、何とも言えない顔でした。

 案内の近衛兵は終始苦笑いするだけ。当たり前ですよね。


---


 王宮の一角に設けられた立食のパーティ会場。

 近くにはガゼボ(西洋風の東屋(あずまや))があり、そこで休憩が出来るようです。

 空中にいくつか浮いてる魔法の球で照らされており、まるでお祭りのよう。

 集まっているのは国王陛下と始めとしたコロッセオでの観覧者と三人の戦士たちです。

 勿論パンタロニ・カルディのメンバーも。

 それから給仕の若いメイドが―― 八人ってとこでしょうか。


 ――パンパンッ


「ほらジーノ起きなさい。アイドルの女の子が待ってるよ」


 ウルスラはジーノのほっぺたを優しく叩くと、アイドルという言葉を聞いた彼の目はカッと開いて立ち上がりました。


「おお!? エルマちゃんたちだぁぁぁぁ!」

「こいつ、アイドルを見つけたらでれーっとしてさ…… しょーもなっ」

「まあ、今日だけなんだから許してあげなさい。ぷぷっ」


 そして私たちが会場に着いてウルスラが一声掛けテーブルに着こうとすると、陛下が口を開きました。


「お待たせしました」


「うむ、ようやく来たか。面倒な挨拶はせん。早速乾杯だ」


「陛下、その姿は……」


 ジーノが問うた陛下の姿は、隣に立っているサビーナさんと同じ上下黒基調のブレザーとミニのプリーツスカートでした。

 国王陛下たる方が太股ばっちり見えるスカートとは、ジーノも反応してしまうでしょう。


「これか? サビーナと学校へ行くと言ったろう。そのままここへ来たのだ」


「せ、制服がよくお似合いで―― えへへ」


「そうか? フフン」


 ジーノにそう言われ陛下は気を良くし、身体をくるっと一回りしました。

 ああ…… スカートがフワリと…… ぱんつ見えそうですよっ


(むふっ 陛下もアイドルに負けないくらい可愛いな…… おっとっと、顔に出たらまずい。不敬になってしばかれたら大変だ)


「ああ、それより乾杯をしなければな。では国の新たな強者の誕生を祝して、乾杯!」


「「「「「乾杯!!」」」」」


 陛下やビーチェたち十八歳未満はぶどうジュース、他の大人たちはワイン、ウルスラと軍務大臣だけはビールで乾杯しました。

 ウスルラは無論、軍務大臣も飲んべえの予感がしますよ。


「よおビーチェ!」

「あっ!? ドナート! あははは…… さっきはやり過ぎて悪かったねえ……」


 会場でビーチェとドナートが対面。

 ドナートは何事も無く明るい様子でビーチェに声を掛けました。

 彼に偶然おっぱいを触られたビーチェは衝動で勢いよくぶん殴ってしまい、今は申し訳なく思っているようです。


「ふっ いいってことよ。サビーナに魔法で治してもらったからな。それにしてもおまえの高速パンチは効いたぜ。若いのにいったいどんな修行をしてたんだよ」

「優秀な師匠がいて早くオーラに目覚めたからねー あと子供の時からジャイアントボアを追いかけてたし」

「ジャイアントボア!? あんなのを? 俺がガキの頃は普通の猪を狩るのが精々だったのに……」


 と、軽く会話してから二人ともしばらくは食べることに集中していました。

 余程お腹空いていたんですね。

 ドナートのボコボコになった顔は、サビーナさんの治療魔法によって綺麗に元通りになっていました。


 ――庭にはテーブルがいくつも運び込まれ、多彩な料理が載せられた皿が並べられています。

 立食ビュッフェ形式で、並べられている料理はピザ、小サイズのステーキ、パスタ料理各種、リゾット、カルパッチョ、カプレーゼ、アーティチョークのフライなど。

 デザートもたくさん!

 パンナコッタ、カッサータ、一口サイズのケーキ各種、ビスコッティなどデザートも盛りだくさん!

 軽いメニューが多いですが、王宮の一流シェフが調理したものですから見たことも無いくらい見た目も美しい!

 ビーチェとジーノはまるで夢の国へ来たような喜びようで、早速あちこちから料理を取って食べ始めています。

 八人のメイドさんたちは皿を下げたり代わりの皿を持って来たり、料理の補充に大忙し。


「ううっ このカルボナーラ、お母さんが作ったのより…… いや、絶対お母さんのカルボナーラのほうが美味しい…… きっと」


 ビーチェはいろんな種類のパスタ料理を食べて、ナリさんが作った料理と比べてますが、自信が無いくらい王宮の料理が美味しいみたいです。

 さてジーノは……


「はい、ジーノ君アーンして?」

「アーン…… モグモグ…… エルマひゃんにこんにゃことされてるなんて、夢みたいだにゃ……」

「あははっ にゃだなんて、猫人間みたいで面白いね!」


 アイドル三人に囲まれ、エルマちゃんにサイコロステーキを食べさせてもらい、顔がふにゃふにゃになって喜んでいます。

 ビーチェは食べることに夢中になって気づいていないようですが、もし見ていたら耳を引っ張って連れ去られそうです。

 ま、今晩だけの夢を見させてあげましょう。


「ガハハハハッ ウルスラ殿もイケる口ですなあ!」

「おっさんこそどんだけ飲んでんだよっ キャハハハッ」


 ビールを浴びるように飲んでいる軍務大臣。

 それに付き合っているウルスラも上機嫌で、偉い人をおっさん呼ばわりしてます。

 軍務大臣はそれについて怒ることはなく、厳つい見た目に反して気さくな人なんですね。

 メイドさんは二人の豪快な飲みっぷりに、お代わりの用意が大変そうです。


「お姉さん…… 今宵の星空は美しいですね。だが貴女(あなた)はもっと美しい…… まるで天の川を渡る天女のようです」

『あら、ありがとうございます。オホホホ……』


 実際天女なんですけれどね。この星にも七夕の話があるのかしら。

 それでなんと、ドナートが(わたくし)にキザな言葉で声を掛けてきました。

 今、(わたくし)は祭服を着ておらずブラウスとスラックスなので彼は気軽に声を掛けてきたんでしょうが……

 イケメンだけれど、私の好みからは外れてます。

 私の好みは、ファビオ君があと数年成長したら…… むっふっふ


「この後どうです? 二人でゆっくり飲み直したい……」

『ああっ その今日は少し疲れてまして……』

「お疲れだからこそ、あなたとリラックスして過ごしたいのです」


 ああ…… どうしましょ。この男しつこそうです。

 そんなことを言って今までスケコマシみたいなことをしてたと思うと笑っちゃいますけれど。

 本当についていったら、ナニされるんでしょうかねえ……


「おいドナート、ナニ司祭様をナンパしてんだよ。バチが当たるぞ」

「ゲッ リタ! 今何と言った?」

「だから司祭様だってんだよ」

「そうですよっ まったくあなたって人は!」


 ――ポカポカポカポカポカッ


 マルゲリータさんと教皇が私の元へやって来て、声を掛けてきました。

 教皇は怒ってドナートにポカポカと叩いています。

 ドナートにとって、普通の中学生女子くらいのパンチなんて痛くも何ともないでしょうが。


「し、司祭様でしたか…… 知らぬ事とはいえ、大変失礼しました……」

『ああいえ、バチは当たりませんから安心して下さい』


 彼は頭を下げすぐに謝罪しました。思っていたより紳士的ですね。

 しかしマルゲリータさんと教皇とは意外な組み合わせですね。

 彼女はドナートとも親しげな感じですが。


『教皇と皆さんはどういった関係なのですか?』

「はい、この方たちが強敵と戦うときは、私も出撃することがあるんですよ。強力なバリアを張るときは私でないといけませんから」

『へー、そうだったんですね』


 教皇はそう答えました。

 なるほど、確かに街が吹っ飛ぶほどの威力でも防御できるバリアが張れると聞いてましたから、一緒に戦うのは自然なことですね。


「でもさ、前に魔物が怖くておしっこ漏らしたことあったっけな。あたしの替えのぱんつを貸してやったことがあったんだよ。Tバックだけどな。いっひっひ」


 ――ポカポカポカポカポカッ


「ギャー! マルゲリータさん! 憧れのディアノラ様の前で何てことを言うんですかあ!!」


 教皇、今度はマルゲリータさんを叩いています。

 このちんちくりん教皇にしてTバック……

 その時の様子が手に取るように想像出来ます。

 ――こちらは何だか騒がしくなってしまいましたが、あと陛下とサビーナさんはどうしているのでしょうか?


「サビーナ、どうだ? 美味いか?」

「モグモグ―― はっ はい、陛下…… ポッ」


 あー 二人はそういう関係なのですね。

 べったりくっついて、陛下が一口サイズのケーキをつまみ、サビーナさんの口へ持って行き食べさせてますね。

 尊い制服姿の二人がこんなことをしているのを、三人のアイドルに囲まれているジーノは見逃していますよ。

 あら、そういえばザマスのマネージャーは見かけませんが不参加なんですかね。

 芸能界の面白そうな話を聞けるかと思ったのですが。

 宮内庁長官執事のアデーレさんも不参加、陛下の執事であるルイーザさんは警備を行いながらメイドさんたちの補助をしていました。


 ――そんなこんなで、野外パーティの楽しい時間が過ぎていくのでありました。


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