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第五十二話 ムズムズ気持ちよくなる技と、バルの師匠

 ――ピシュイーーーンピシュイーーーンピシュイーーーン


 マルゲリータさんの五本の指から発せられる白いレーザー光線のようなオーラが、ジーノに襲いかかっています。

 いくらジーノが避けても、追いかけるように次々と光線が彼に向けられて停まることが出来ません。

 断然にドナートのメッツァルーナ乱れ撃ちより速い攻撃です。


「ふっふっふっ いつまでも逃げるだけでは終わらないよ! もっとあたしを楽しませてくれなきゃ! ペロリ」


 このお姉さん舌舐めずりなんかして、ドSなんですかね。

 ある意味ジーノとお似合いかも知れませんね。うぷぷ

 光線による攻撃は途切れることなく続き、ジーノはマルゲリータさんに近づけないでいます。


(くっそー こんなんじゃ全然間合いが取れやしねえ。どこか付け()る隙がないかなあ)


 ――ピシュイーーーン ピシュイーーーン ピシュイーーーン

「それっ それっ それっ あははははっ」


「ひぃぃぃぃっ!」


 ジーノで遊んでますねえ。

 それでも、あの攻撃を避けられるだけでもジーノは常人を遙かに超えてます。


「ああもう! さっさとオーラからノーブルへ高めろよ!」

「ビーチェよ。ジーノも、そのノーブルというものに目覚めているのか?」

「えっ? はい。あたしと同じ時に……」

「それではリタも負ける可能性が高いではないか。こちらの三人は誰もノーブルに目覚めていないはず。最初から不利ではつまらないのう」

「はい、私もノーブルとは初めて聞きましたから、三人とも目覚めていないと思います。ビーチェたちの修行とは一体どんなものだったのか、気になりますな」


 ビーチェが煽ってますが、ジーノに聞こえるはずもなく。

 陛下はビーチェにノーブルについて問い、不平を鳴らしていました。

 軍務大臣の言葉は問題になるかも知れません。

 修行方法そのものは秘密にしているわけではないのですが、下手をすればバルの正体がバレてしまいます。

 もっとも、この場で本当のことを知っているのはウルスラしかいませんから大丈夫だと思いますが……

 ウスルラ自身が長寿命高位魔法使いのロッカ族ということも、陛下たちは知らないでしょう。


「ビーチェとジーノは――」

「うん?」


 軍務大臣の言葉に対しウルスラが口を開くと、陛下が反応しました。

 まさか、バルのことを話すのですか?


「昔、私と仲間だった男がこの二人の師匠でね。彼が五年前から今までみっちり鍛え上げてきた結果です。それだけですよ。いくらノーブルに目覚めていても今回ビーチェの場合はまぐれに近いですから、ジーノは発動出来るかわかりませんね」

「ほう、そうなのか。その師匠に興味があるな。いつか会ってみたいものだ」

「仲間? それではあなたもノーブルに目覚めているのか?」

「勿論です。魔法使いでもね」

「ううむ…… 何者なんだ君たちは……」

「――」


 ウルスラは最低限の返答をして、それでも陛下はバルに興味を示しました。

 そして軍務大臣が問うとウルスラは肯定し、それ以上は無言で微笑むだけでした。

 この先面倒なことにならなければ良いんですけれどね。


 ――ピシューーピシュピシュピシュイーーーーン


 マルゲリータさんとジーノの攻防、いえジーノは逃げているだけですがその間もずっと続いています。

 でも、走ってアレッツォからアルテーナまで来られるくらいの体力がありますから、十分(じゅっぷん)やそこらじゃ何でも無いジーノですね。


「しぶといねえ! ならばこれならどう!?」


「なに!?」


 ――ピシュイーーーンピシュイーーーンピシュイーーーン

 ――ピシュイーーーンピシュイーーーンピシュイーーーン


「ぎゃああ!! 両手でやるのかよ! ひいぃぃぃぃ!!」


 マルゲリータさんは両手で、つまり十本の指からオーラの光線でジーノを追いかけ再度攻撃を始めました。

 ますます間合いが取れなくなり、ジーノは不利になるばかり。

 ここから逆転させることが出来るのでしょうか。


「それっ それっ あっはっはっはっ!」


「くうっ」


 両手攻撃でも本気を出さず、ジーノで遊んでいるようです。

 ジーノはギリギリで(かわ)していますが、マルゲリータさんは敢えてそうしているのかも知れません。


「ドナートがやられたあの女の子の強大なオーラ、何だっけ? でも窮地に立たされないと発動されないとみた。それならば君を追い込まず、程々に痛めつける作戦。良い考えでしょ―― ふふふふっ それそれええええっ!!」


「なにぃ!?」


 ――ピシュピシュピシュピシュイーーーーン

 ――ピシュピシュピシュピシュイーーーーン


「ぐあっ (いって)ええええええ!」


「これでも致命傷にならない強力なオーラを(まと)っているとは流石ね。君に興味が湧いてきたよ。ニヤッ」


 マルゲリータさんの苛烈なる攻撃でジーノの腕が赤くなっています。

 常人ならば恐らく腕がちぎれ飛んでいるはず。


(くっそぉ、あの手を封じ込める方法ってあるのかよ!)


 ジーノはマルゲリータさんの隙を探しているようですが、マルゲリータさんの技【ラジ・ディ・ルーチェ】を前に何も出来ないでいます。


(ん? 攻撃が途切れた!? 今だ!)


 マルゲリータさんの攻撃が一瞬停まった隙に、ジーノはオーラランスで彼女の腕を中心とした上半身に集中攻撃!


 ――スパパパパパパパパパパッ


 ジーノがオーラランスを放った瞬間、マルゲリータさんはスライディングの体勢に変わりました。

 なんと右足の先から白くて太めの光線が一本放出し、ジーノに襲いかかる!


 ――バシュウゥゥゥゥッ

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


 光線はジーノの脚に命中し、その勢いで前へ倒れ込んでしまいました。


「ハッハッハッ あたしの上半身ばかり見ているからそういうことになる! 逃げるのは上手だったけれど、実戦経験はまだまだねえ!」


「くぅぅぅぅぅ!!」

「ほーらまた捕まえた!」


 マルゲリータさんは倒れ込むジーノの下に潜り込み、そのまま彼を両手両脚で抱え込みました。

 所謂、大好(だいしゅ)きホールドというやつです。

 ジーノの顔はマルゲリータさんのおっぱいに挟まれて手脚をジタバタさせてますが、がっつりと捕まえられているためにそれ以上身動きが出来ないでいます。


「モゴッモゴモゴッモコモゴッ」

「やっぱり若い男の子って良いわねえ。うっふっふっふ」

(ぐっ、(ぐる)ひい…… なんて馬鹿力なんだ。身体を動かせねえ…… でも何このふわふわおっぱい! それに女の人の良い匂いだなあ…… 幸福感でこのまま逝ってしまいそうだ……)


「――あ゛あ゛あ゛あ゛!! 何やってんだああああああ!!」

「あ~ぁ…… 先生の悪い癖が出たか……」

「ええっ!?」

「先生は、見習い兵士の若い男を見つけては訓練と称してああいうふうに捕まえて遊んでいる」

「リタはまだそんなことをやっていたんですか。困ったやつだ…… はぁ」

「うほうひうひゃひゃひゃ!」


 ビーチェがそれを見て怒り心頭に発すると、陛下がマルゲリータさんの癖について言いました。

 軍務大臣はそれを聞いて呆れ、ウルスラは腹を抱えて大笑いしていました。


「ジーノ、あなたスジはいいからさ、あたしの弟子になってみない? 毎日こんな修行が出来るよおおおっ うっふっふっふ」

「ムグムグモゴッムググッ!?」

(ま、毎日おっぱい三昧になるのか!? それならバルが師匠よりずっといいかもなあ、うへへへへ…… いやいやいかん! 俺はアレッツォでファビオやみんなを魔物から守るんだ!)


 マルゲリータさんはジーノを自分の弟子にしようと誘っていますが、彼はおっぱいに埋もれてモゴモゴ言うだけです。

 彼はそれを聞いて何を考えているのでしょうか。


(ここからどうやって抜け出して反撃しようか…… !? 思い出した! 動物の雌にしか使ったことなくて人には今日初めてだけれど、ビーチェに秘密で師匠にこっそり教えてもらった方法で…… よおし! 燃えろっ 俺のオーラ!! ぬぬぬぬぬ――)


 ジーノのオーラが急に高まりました。

 彼は何かしようとしていますが、何をするつもりなのか私は想像が付きません。


「モゴモゴモゴゴゴゴッ」

「なあに? あたしの胸がそんなに気持ち良いの? ふふふ…… え?」

(なに? おかしい…… だんだん胸とお尻がムズムズしてきた…… うっううっ)

「モゴモゴッ」

(ふふっ 効いてきたみたいだ。ウサギや狼の雌にしか試したこと無かったのに…… これで締めが緩んだら抜け出してやるぞ!)


「ん? 先生の様子が変だ。それにジーノから異質のオーラを感じる」

「あっ 本当だ。あいつのオーラが変だぞ」

「ううむ…… 陛下、そうなのですか?」


 VIP席で最初にジーノのオーラに気づいたのは陛下でした。

 陛下に言われ、ビーチェもそう感じたようです。

 私の身体も…… やん!? 何ですかこれ?

 お股と胸の先がムズムズ……

 今ジーノが出しているオーラって、もしかしてそういうオーラなんですか?

 軍務大臣はオーラに敏感でない一般人のうえに、男性だから感じていない様子です。

 誰だかわからない三人の女の子も恥ずかしそうに(うつむ)いていて、後ろにいる男性はケロッとしています。

 やはり女性だけにしか効かないと!?


「うむ、遠くからでも私の身体が少し熱くなってくるようだ」

「あああっ あたしもだ!」

「――私もです、陛下……」

「私も……」


 アデーレさんとルイーザさんはちょっと重そうに顔を赤くしてました。

 陛下とビーチェは軽そうなので、恐らく感じ方にも個人差があるのでしょう。

 ちょっと、ジーノったらなんてことを!


「はわわわっ 何ですかこれぇ!? お、オシッコ出ちゃいそうですぅ!」


 教皇は慌てて立ち上がり、VIP室から飛び出してしまいました。

 トイレへ行ったのでしょう。

 まだ十四歳の教皇はきっと、女性のこの感覚が何なのかわかっていないかも知れません。


「バルめえ…… ジーノにアレを教えたなあ?」


 と、ウルスラはそう言いながら左手で自分の胸を揉み、右手は股間を押さえてました。

 こんなところではしたないですよ!

 ウルスラが何か知っていそうなので、(わたくし)は彼女の隣に座り小声で聞いてみることにしました。


(ちょっとウルスラさん、ジーノのあれは何ですの?)

(あっ ディアノラ様。これはバルの技…… 正確にはバルの師匠が考えた技で、【キノーズ・ノーイェ(Kvinnans nöje)】っていうんですよ)

(ヴィルヘルミナ語で―― お、女の快楽って、露骨な名の技ですね……)

(あのスケベクソ(じじい)が考えた技でね。私もバルに腰が抜けるほどヤラレちゃったわけで――ハッハッハッ)

(バルの師匠って知らないんですけれど、そんなにスケベなんですか?)

(私の胸やお尻を触るのは当たり前で、ぱんつの中にも手を入れてきましたからねえ。その度に魔法で黒焦げにしてたんですが、あいつそれでも死なないんですよ)

(に、人間なんですか?)

(一応人間の内に入るんですが、私と同じ少数長寿族のビッタンギ族(Vittangi)で二千歳近かったかなあ。魔力は私のロッカ族より劣るけれど、体力と耐久力、オーラとノーブルの変幻自在は非常識なほどありますね)

(この(わたくし)でもビッタンギ族とは初めて聞きました。そんな人が師匠だなんて…… その人との修行がバルの強さの秘密なんですね)

(そういうことです。ジーノは胸で視界を塞がれてるしマルゲリータに使う技としては正解だけれど、品が無いわね。幸いビーチェにはあまり効いていないから、黙っていれば面白そうだしバレないわ)

(ああ……)


 ウルスラはそういう性格でしたね。

 (わたくし)…… また下着を汚してないかしら。

 そうそう、肝心のジーノとマルゲリータさんはどうなっているのでしょうか。


「あひっ お腹の下が変…… これじゃあ力が入らない…… はふぅっ」

「モゴモゴモゴッ モゴゴ!」

(おっ 力が(ゆる)まった! 上手く抜け出せそうだぞ! うりゃあ!)

「きゃああ!!」


 マルゲリータさんは、下からジーノによって強引に投げ飛ばされてしまいました。

 そしてジーノは立ち上がり、倒れているマルゲリータさんを見ながら白々しくこう言いました。


「リタ……さん。どうしたのかな? あんなに力強く捕まえられてたのに、俺、抜け出せちゃったよ」

「ぬくく……」


 投げ飛ばされたマルゲリータさんはジーノの()()オーラのために力が入らず、そのまま横たわっています。

 ジーノは自分の技だと言うことを隠し、あくまで(とぼ)ける作戦に出たようです。

 まっ そうですよね。

 バレたら女性陣にボコられるに決まっていますから。


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