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第五十話 オーラを越えるノーブルの光

 時を(さかのぼ)り、約二年前のことです。

 ビーチェが十四歳、ジーノが十三歳の時でした。

 この時もアレッツォの森の中にある川端で、バルと三人で修行をしていました。

 ビーチェのお胸は発展途上ですが、それでもCカップ!

 ジーノはほぼ子供であどけない可愛らしさが残ってます。


「おいおまえら、今日はいつもよりちと厳しい訓練をする」

「えー、厳しいのはいつもじゃん!」

「そうだそうだ!」


 バルはビーチェとジーノを前にそう言いましたが、当然二人は文句を言い返します。

 いつものことですけれどね。うふふ


「バカもん。おまえたちが死なないようにする大事な訓練だ。真面目にやるんだぞ」

「「はぁ~い」」

「今から俺はオーラランスの雨でおまえたちに攻撃する。それを全部避けるんだ」

「オーラの槍で…… 雨? そんなの避けっこないよ!」

「最初は慣らしでゆっくりやる。それならいいだろ」

「「わかった……」」


 ビーチェとジーノはそれぞれ若干離れて配置につき、オーラランスを受ける体勢になりました。

 二人とも真剣な顔になってきました。


「では行くぞ! ふううううんっっ!!」


 バルは顔の横で両拳を握り、オーラを集中させる構えになりました。

 どんどんオーラが大きくなりますが、訓練でバルがこのようにちょっとだけ本気を出すのは珍しいです。


「うわぁぁぁぁ……」

「師匠のオーラがヤベぇ! 俺たちを殺すような勢いだぜ!」


 二人は(ひる)んでいますが、それでもこの三年で厳しい修行を積んできているので逃げようという考えは無いです。


「どりゃぁぁぁぁぁ!!」


 ――シュウゥゥゥゥゥゥゥゥッッ ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッッ


 バルが両手を天に広げると、そこから無数の光る槍がビーチェとジーノへ目掛けて高速で攻撃します。


「うぎゃぁぁぁぁ!! 師匠、手加減無しだよおお!!」

「ひぃぃぃぃぃ! こんなの慣らしじゃねえよ! (かわ)すのに精一杯だ!!」


 二人は光る槍に当たらないようチョコマカと動きながら(かわ)しています。

 普通の子供が修行三年目の時点で人間離れした動きが出来るようになっているとは、バルの修行はそれだけ効率が良かったのでしょうか。


「口が開くんならまだ余裕だな! それ!」


 ――ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッッッッ


「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


 バルは一層、高速の槍のスピードを速めました。

 ビーチェとジーノはまるで早回しの動画のような動きで(かわ)してしますが……


 ――ビシッ ビシッ


 時々オーラランスをかすり、傷が付いています。

 オーラを発動させる訓練を受けているのでそれで済んでいるわけですが、このままバルの猛攻が続けば重症も免れません。


「ぐっ ぐぐぅっ」

「痛ってえ……」


「今のおまえらのオーラではそのうち槍が突き刺さるぞ! もっと限界まで近づけろ!」


「そ、そんなこと言われたって……」

「もう限界だってばあ!」


「いやまだだ! 喋らないで集中しろ! 第二のオーラ、ノーブルに目覚めるんだ!」


(――だ、第二のオーラ!?)

(――ノーブルだって!?)


 オーラの次の段階『ノーブル』。

 つまりオーラを超越した高尚な気の流れであり、攻撃に対する身体の防御力、そして攻撃力が比べものにならないほど上がります。

 バルってば、今の段階でこの子たちにノーブルを出させようとしてるんですか!?

 まだ早すぎます!


 ――ビシッ ビシッ ビシビシッ


「ほらどうした! 早くしないと身体に穴が開くぞ!」


(ええっ!? 師匠がいつもと違うよお!)

(なんで!? マジで俺たち殺す気!? いや、師匠に限ってそんな……)


 二人は高速で動いていても避けきれないオーラの槍を身体に受けており、自身が発しているオーラの防御力で致命的な傷にはなっていないものの、肌は赤く腫れ上がっている箇所がたくさん出来てしまいました。

 それでもバルはを苛烈極まる勢いで二人を攻撃しています。


 ――ビシビシビシビシビシビシビシッッッ


「きゃぁぁぁぁ!!」

「ぐぁぁぁぁぁ!!」


「何をやっているぅ! 前へ! 前へ進めえ!! そして俺を撃てえ!!!」


――ズバババババババババババババッッッ


「くぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「でぃぇぇぇぇぇぃ!!」


 おや!? 淡く青白い光が二人の身体に(まと)われました!

 これこそオーラを越えるノーブルの証です!

 ビーチェとジーノは同時に、とうとうノーブルに目覚めたのです!


「バルぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「いいぞおまえたち! 来い!!」


 ――ピシューーーン!! シュシュシュシュッ ズバァァァァァァンッッッ


「ぬおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」


 二人は同時に、ノーブルを(まと)った超高速パンチをバルに撃ちました。

 バルが放ったオーラの槍はまるで爪楊枝をばら撒いたように、二人のパンチに弾かれてしまいました。

 バルは両腕をクロスし防御の構えをして両脚を踏ん張っていますが、そのまま後方へ押されています。

 それにしてもビーチェとジーノの何という息の合い方!

 幼少の時から姉弟のように一緒だっただけありますね。


 ――バゴォォォォォォォォォ!!!!


「「うりゃああああああああああ!!!!」」


「ぐはあああっっ!!」


 ――ドカァァァァァァァァァ!!!!


 バルは二人の猛烈な連続パンチで遙か後ろへ吹き飛ばされてしまいました。

 森の大木に引っかかって、そこで止まっていますが……

 いくらバルでもちょっと心配な状態です。


「はぁ はぁ はぁ…… た…… 倒したぞ……」

「はふ…… はふ…… やったなビーチェ……」


 二人はゼイゼイ言いながらその場で立ちすくみ、バルを倒した喜びを噛みしめていました。

 まさか一瞬でもノーブルに目覚めるなんて私も思いませんでした。

 凡人だった二人が、たった四年の修行で……

 バルの修行とはそこまで効率が良かったのか、(わたくし)はずっと見ていましたけれど最初にオーラを開花させる時も一年かかりませんでした。


「おいっ ジーノおかしいぞ?」

「なんだよ」

「あたしら師匠に痛めつけられたのに、怪我が一瞬で消えてる!」

「うお!? 本当だ!」


 ビーチェが自分たちの身体に異変があるのに気づきました。

 二人の身体は、服の破れや血が滲んだ跡が残っているものの、かすり傷や切り傷が一切残っていません。

 これはノーブルの治癒能力によるもので、オーラでも自己治癒は出来ますがこれほど早く治ることはなく、ずっと強力です。


「――さて、師匠が吹っ飛んで行っちゃったけれど……」

「おいヤベえぞ! 師匠のオーラが感じない!」

「げっ まさかまさか……」

「いやあ…… 師匠に限って死ぬこと無いって…… いやでも……」

「早く見に行くぞ!」

「お、おう……」


 二人は急いでバルが飛ばされた大木の場所へ向かいました。

 バルは大木の幹に打ち付けられ、木の根元でグッタリと横たわっていました。


「おーい師匠ぉぉぉ!!」

「大丈夫かああ!!」


「う…… ああ……」


 良かった。意識はあるようですね。

 ですが相当手傷を負っているようです。

 バルは幹に持たれながら起き上がりました。


「師匠! こんなことになるなんて……」

「わっ 血だらけじゃん!」


「問題無い。俺はこれくらいでは死ななあああい!!」


 ――ピュウゥゥゥ


「あっ」


「ひえっ」

「おいおい師匠! 頭から血が吹き出てきたぞ!」


「これくらい何でも無い。おまえたちに今から俺のノーブルを見せてやる―― はああああああっっ!!」


 バルが両手の拳を握り気合いを入れると、先ほどの二人と同じように身体が青白い光に包まれました。

 二人とは比べものにならないくらい強い光です。

 スーパーなんとか人みたいに、黄金色に光って髪の毛は逆立っていませんよ。


「うひゃあああ!! あたしたちのノーブルよりすごくない?」

「しかもあんなにあっさりノーブルを出せるなんて……」


 そう言っているうちに、バルの身体から一瞬で傷が消えてしまいました。

 血まみれなのは変わりませんけれどね。


「おまえたち悪かったな。だが、窮地に追い込まないとノーブルには目覚めないんだ。あの感覚がだいたいわかったろ?」


「うーん…… なんとなく」

「俺はまだよくわかんないな」


「じゃ、今度もう一回やろうな!」


「「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」」


 バルのようにノーブルが常時でも出せるようになるまで、まだまだ厳しい修行が続きそうですね。

 ――修行後、ラ・カルボナーラへ帰ると……


「――何ですかその服は」


「あいやその…… 修行でちょっと……」


「そんなことはわかっています。何で()()みんな血まみれになっているんですか?」


 いつもニコニコで滅多に怒らないナリさんが、ギロッとバルを睨んでいます。

 般若みたいとは言いませんが、静かに抑圧してくるような感じですね。


(うっわあ。お母さんがたまに怒ると怖いよお)

(俺のかーちゃんが怒ってもストレートに怒鳴るだけだからなあ。ナリさんが怒ると背中がゾクゾクして冷や汗を掻くぜ……)


 その後、三人並んでナリさんからお説教。

 途中で学校から帰ってきたファビオ君は空気を読んで開店準備をしていましたが――

 結局お店の開店が一時間遅れてしまいましたとさ。


---


 現在の、対戦が行われているコロッセオに戻ります。

 ビーチェと、一番目の戦士ドナートが戦っている最中です。

 ドナートの技、「メッツァルーナ乱れ撃ち」の猛攻で彼女は苦戦している模様。

 これから逆撃することが出来るのでしょうか。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ――シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュッッ


(うひぃぃぃ!! しつこいなあ、あいつ! あたしの体力が切れるのを待ってるのかな)


 ビーチェは反撃も出来ずドナートの攻撃をひたすら避けるだけです。

 ほら、()()を思い出しなさいよ。今こそ使う時ですよ!


(やっぱりノーブルを展開するしかないのかなあ。久しぶりだから上手く出来るかわかんないけれど、一か八かやってみるっきゃないか!)


「ぬうぅぅぅぅぅどりゃぁぁぁぁぁ!!」

(なんだこの子しぶといなあ! しかも全部避けてる!? いや、少しは当たってるはず…… 何故だ!? 何故何ともない!?)

 ――シュガガガガガガガガガガガガガッッ


 ドナートのメッツァルーナ乱れ撃ちはさらに強まり、ビーチェの回避はもう限界!?

 もうビーチェったら早く!


「おおおおいビーチェ! どうすんだよおお!?」

「私もドナートがここまで苦戦するとは思わなかった…… ビーチェとジーノはどんな修行をしてきたのだ?」

「そりゃ大変でしたよお…… 十歳の時にジャイアントボアと戦わせられましたからね……」

「なっ!? そんな小さな時にあのジャイアントボアをか!?」


 VIP観覧室でジーノと陛下がそう話していました。

 最初にオーラを目覚めさせるため、バルはとんでもない修行を二人に行っていましたからね。


「クックック…… やっぱりバルってそんな修行をやってたんだね。まるで手に取るようにわかるわ」


 ウスルラはそう言いました。

 バルにも師匠が存在していた時があり、そのような修行をしていたと聞きました。

 自分が受けた修行は弟子にも同じようなものを受けさせるのは自然なことかもしれませんが……

 バルの師匠ってどんな人なんでしょうね。


「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ――シュゴォォォォォォォォォッッ


(ああもう、やってらんない! ノーブルの発動だ! 上手く行けよぉぉぉぉ!!)

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ――ピシューーーン!


「なっ 何ぃ!? ビーチェの身体が青白く光った!?」


 とうとうビーチェはノーブルを発動することが出来ました。

 ビーチェが光る姿を見たドナートは目が飛び出るほど驚きましたが、それでも手を止めずにメッツァルーナ乱れ撃ちを続けています。

 ビーチェの反撃は成功するのでしょうか?


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