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第四十五話 教皇様、変態になる

 せっかく夜遅くにアルテーナ大聖堂敷地内にある礼拝堂にビーチェたちと忍び込み、二人にお祈りをしてもらって天界へ繋がっていると思われる光の扉が出現したのですが……

 (わたくし)、光の扉からペッと吐き出されてしまいましたあ! うぇーん!

 そして(わたくし)のオーラを感じたのか、それを不審に思い様子を見に来たウサギさん着ぐるみのパジャマを着た少女が、なんとサリ教の教皇ジョバンナ・パオラ二世だったのでした。

 彼女は(わたくし)のオーラについて問うたので、嘘を言っても余計に不審がられてしまうでしょうから正直に(わたくし)の正体を言いました。

 すると彼女は、発狂して床を転げ回るほどびっくりしてしまいましたが、その訳は?

 恐らく(わたくし)のオーラの質で神だとあっさり確信してしまい思わぬ事で驚いたのでしょうが、それでも正気に戻ると僅かに疑っているように彼女の目とオーラが語っていました。


『まだ、私が神だということを信じていませんか?』

「い、いえ! そのようなことは!」

『――目が、あなたのオーラが、そう言っていないようですよ?』

「それは…… いくら私が教皇と言えど神様とは実際にお目に掛かることはありませんでしたし、代々の教皇から伝わる神様の話は作り話かと思っていました……」

『あらあら、今の教皇はなかなかの現実主義者なんですね。うふふ』


 いいですわ。この子可愛いし、正直そうで気に入りました。

 私が神だということを証明するために、彼女にオーラを流し込んでみます。


『今から、私からあなたへ神の啓示を行います。リラックスして下さいね』

「ええっ!? は、はい……」


 (わたくし)は彼女が被っているうさ耳フードを外し、前髪を上げ、ゆっくりとおでこにキスをしました。


 んちゅー


「あややややややあばばばばばば……」


「ありゃ、キスしちゃった」

「むほほっ」

「なに興奮してんだっ」 バシィィッッ

「痛っ またかよぉぉっ」


 ビーチェはいつものようにジーノの後頭部をひっぱたいてました。

 教皇はまた白目になって狼狽(うろた)えてしました。

 さすがに女同士、口では遠慮したいですよ。

 きっと彼女はファーストキスになるでしょうから、それも可哀想ですからね。


 ――そっとおでこから唇を離すと、彼女は放心状態。

 いいえ、今彼女の脳裏には天界にて私の記憶にあるサリ様の教示が見えているはずです。


『――汝、よく学び、よく遊びなさい。そして、神を愛し人を愛しなさい。一生を愛せる人を探しなさい。あなたが幸せになると、皆も幸せになります。皆が幸せになると、愛が溢れる世界になります。ああっ 好き好き好きっ 大好きいぃぃぃっ――』


 サリ様が一人でクネクネしていてちょっと変態で恥ずかしいんですが、これがサリ教の教皇へ直接啓示する機会があったときに使っている定型の映像です。

 それも教皇何代、何年ぶりでしょうね。忘れちゃいました。

 おや、教皇が正気に戻りそうですよ。


「あっ…… あう……」

『如何でしたか。あの方がサリ様なのです。とてもお美しい方でしょう?』

「はい…… とても…… ポッ――」


 あらら、顔を赤らめちゃって…… 早速効果があったのかしら。

 これで彼女が教皇である時代は、サリ教は安泰ですね。


「ディナ様?」

『はい』

「私と……」

『ん?』


 教皇、ぷるぷる震えて何か様子がおかしいですよ?


「私と愛し合いましょおおお!」

『はひいぃぃぃぃ!?』


 教皇は飛びかかり、抱きついてきました。

 私のおっぱいに顔を押しつけないで下さい!


「ディナ様ディナ様ディナ様ディナさまああああ!」

『あやややややそそそんなとこを!』


「ディアノラ様、教皇様に何したんですかあ?」

「うへへ、何か面白くなってきたぞ!」


「クンカクンカクンカッ 良い匂いでふぅぅ!」

『ちょちょちょっと教皇! 何をしてるんですか!?』


 うううっ さっきお風呂に入ったばかりだから臭くないはずですが、女の子にこんなことをされるなんて恥ずかしいですぅっ


「すうぅぅはぁぁぁ……」 チラッ


 教皇が私の匂いを嗅いでいる途中、ビーチェたちのほうを向きました。

 すると私からそっと離れてしまいました。


「あなた!」


「へっ? あたし?」


 ウサ耳教皇はビーチェに人差し指を()し、強めに呼びました。

 その格好じゃ全く威厳を感じませんが。


「とうっ!」


「とうっって…… わわわわ!?」


 教皇、今度はビーチェの胸を目掛けて飛び込んでしまいました。

 (わたくし)の時と同じように、ビーチェのおっぱいに顔を(うず)めてブルブルを振るわせてました。


「もふっ もふっ もふうぅぅぅっ クンカクンカクンカッ こっちの方がふわふわで若いからもっと良い匂いいいいいっ」

「ひえぇぇぇぇぇぇ!!」

「ゴクリ……」


『まあ失礼しちゃうわっ どうせ(わたくし)はババアで貧乳ですよぉぉぉ! うぇぇぇぇん!』


「ディアノラさまぁぁ! 泣いてないで何とかして下さいよお! 教皇様、キスされてから絶対おかしくなってるよお!」

「もふもふもふううっ クンカクンカスーハースーハーッ」


 見て当たり前ですが、教皇は強い興奮状態です。

 うーん、どうしてでしょうね……

 私のキスで余分な作用があったのかしら。

 あら、十分堪能したのか教皇は笑顔になり、ビーチェから離れていきました。


「ふー、やれやれ…… ん?」


 ビーチェは安堵し胸をなで下ろしました。

 次、教皇はジーノの方へ向きましたが…… まさか?


「あなたも!」


「おおお俺!?」


 教皇に指さされ、ジーノ自身も自分に指さしました。

 そして彼に飛び込んでいきます!


「どぉぉぉぉぉぉん!!」


「うひゃぁぁぁぁぁ!!」


 教皇はジーノに抱きつき、彼の胸に頬をスリスリしています。


「おおおお男の子を抱き合うなんて初めてですうぅぅ! クンカクンカスンスンスンッ ああああ女の子より断然良い匂いですわぁぁぁぁぁ!!」

「うほぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

(おおお俺も女の子に抱きつかれたの初めてだよお! ビーチェとは子供の時にじゃれ合っていた時ぐらいだったからなあ。すげえ! 甘いミルクみたいなめっちゃ良い匂いがするわああ! むほほぉぉぉ!!)


 ジーノは教皇を避けもせずにそのまま抱きつかれ、とてもだらしない顔になっています。

 横にいるビーチェの顔がみるみるうちに鬼のようになっていきました。

 そして彼女は右拳を強く握り、ジーノへ目掛けて――


「くぉらジーノぉぉぉぉぉぉぉ!! 何やってんだああああ!!」


 ボコォォォォォォォォォォ!!


「ぐぇぇぇぇぇぇっっ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 なんと、ビーチェの渾身のパンチはジーノの頬にぶち当たり、教皇もろとも吹っ飛ばしてしまいました。

 あわわわ…… 教皇って、一応アレでも世界中のサリ教で頂点に立つ人なんですよ。

 それを何メートルもぶっ飛ばしちゃって、大丈夫でしょうか……


「あ痛ててててて!! 目から本当に星が出たぞぉぉぉ!」

「うっ うううっ」


 ジーノは咄嗟(とっさ)に教皇を(かば)い、教皇は仰向けになった彼の上で目を回してました。

 さすがバルの戦闘訓練を受けただけはありますね。


「おまえというやつはああああ!」


 ビーチェはぶち切れてますが、ジーノとは幼なじみという関係だけで恋人ではないのに、幼なじみは他の女と仲良くしちゃいけない謎の感情が彼女にはあるんですよね。

 あまりにも慣れすぎて、いつまでも自分の物で離れちゃいけないと認識しているんですよ。


「うううん…… あれ? あれれ?」

「うん? どうした? いや、どうしましたか教皇様?」

「えっ? ええええっ!? どうして私があなたの上にいるんですかああ!?」


 教皇はそう言って、飛び起きました。

 どうやら吹っ飛ばされた衝撃で、正気に戻ったようですね。


「それはその…… 教皇様が…… うへへ」


「へっ? 私、いったい何を……」


「教皇様は知らなくていいんですっ ムスーッ」


 ビーチェが怒りながらそう言うので、教皇はそれ以上問い詰めることはありませんでした。

 まだ床に寝転んだままの、ジーノの腑抜けた顔を見て不審そうな表情をしてはいましたが……

 教皇が正気に戻ったことなので、ロッツァーノで私がこの二人の祈りで地上界へ落ちてきて帰ることが出来なくなった事情を、改めて詳しく彼女に話しました。


「そっ そんなことがあるのですか!? でも…… 事実なんですよね……」


『このことを知っているのは、この二人と教皇様、あともう一人連れの魔法使いだけなのですよ。だから他の人には一切話さないで下さいね。あとこの世界ではディアノラという名で通してますから』


「承知しました。でも天界へお帰りになれないとは、お(つら)いですね……」


「いいじゃんディアノラ様。こっちは美味しい物いっぱいだし、満更じゃなさそうだったけれど?」

「そうだよ。やることやったら俺たちとアレッツォへ帰ろう。そのうち何とかなるよ」


「ディアノラ様をアルテーナ大聖堂でお世話させて頂きたいところですが、ベアトリーチェさんたちが天界へ帰れる鍵ならば一緒にいたほうがよろしいんですよね…… それにこの大聖堂で、神官や修道女以外で人が急に増えると他の者に不審がられて良くありませんから……」


『いえ、お構いなく…… ただこの像で、途中まで上手くいけたんです。何が足りないのか全くわかりません。私の力不足なんでしょうか。ヨヨヨヨヨ……』


「また泣くし……」

「俺たちも頑張って祈るからさ、もう一回やってみようよ」


「そうですわ! 私もお祈りしましょう!」


「そうですね…… よろしくお願いします……」


 と言うわけで、今度は教皇も一緒になって三人でお祈りしてもらうことになりました。

 教皇のオーラが合わさるなら、もしかしたらもしかするかもしれませんよ!?

 何だか希望が出てきました! うひょーい!

 再び私は女神像の前に立ちました。


「まあっ 像がディアノラ様と本当にそっくりです。千三百年前に作られたと聞いてますが、当時の教皇が自ら作られたそうなんですよ。ということは、その教皇はディアノラ様にお会いしていたのかもしれませんね!」


『そうなんでしょうか…… ごめんなさい。あまりに昔のことでよく覚えて無くて…… ゴホゴホッ』


「大丈夫ですかディアノラ様?」


『いえ、何でもありません。始めて下さい……』


 悲しくてちょっとむせてしまいました。

 そんなこともあったようなどうだか……

 どんな名前でしたっけ…… うーん……

 ヨヨヨヨヨ…… 私、こんなに忘れぽかったんでしたっけ?

 歳は取りたくないものです。

 ヨヨヨ…… ヨ? あっ 思い出しましたわ!

 ヨランダ(Iolanda)です! ヨランダ一世! あの子です!

 あの子も年若くて、二十歳ぐらいだったかしら。

 生真面目でしたが、髪の毛が長くとても綺麗で明るい子でしたね。

 おっと―― その話はまた思い出したときにでも。

 三人がお祈りを始めました。


(女神ディナ様が天界へ戻れますように。女神ディナ様が天界へ戻れますように――)

(女神ディナ様が天界へ戻れますように。女神ディナ様が天界へ戻れますように――)

(女神ディナ様が天界へ戻れますように。女神ディナ様が天界へ戻れますように――)


 およっ!? 身体が浮き始めました。

 いいですよいいですよ! この調子で行って下さいよ!

 おおっ! 再び光の扉が出現しました!

 三人は続けて熱心にお祈りしてくれています。

 ああっ 光の扉に入っていくうぅぅ!!


『それでは皆さん! 今度こそさようならあ! ありがとうございましたあ!』


「やはり本当の女神様! ありがたやありがたや! 私は今日という日を絶対に忘れません!」

「ディアノラ様ばいばーい!」

「本当に今度こそだよー! 落ちちゃダメだぞー!」


 手を振る三人に見送られ、光の扉は閉じてこの光のトンネルを越えたら天界です!

 やっと帰れるんですね! 嬉しいいいいいっ

 ガルバーニャの美味しい食べ物は忘れませんよお!


「ああ…… 行っちゃいましたね……」

「またボトンと落ちてきたりしてな。ハハハッ」

「あたしめっちゃ祈ったぞ。さっきより上手くいってたみたいじゃん。なるわけないってハハハッ」


 ペッ ボトンッッ


「「「えええええええええっっ!!??」」」


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