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第一話 元勇者と二人の弟子

 この物語は元勇者バルが主人公ですが、話の進行は弟子の女の子ビーチェが中心になります。

 ナレーション(語り手)は天の声型式でやっていきます。

 こちらは地球とは別の宇宙、つまり異世界の銀河の中にあるマール星。

 そのマール星北半球にはヴィルヘルミナ帝国という国がありました。

 今から二十五年以上前に【大魔王ゼクセティス】を首領とした魔族が、その国だけならず周辺諸国まで襲い、人々は脅威にさらされていました。

 それに対抗しようと若き勇者と三人の仲間たちは決起し、彼らは魔王と魔族共々見事打ち倒すことに成功しました。

 その後、勇者と仲間三人は散り散りに――


 ――そして二十年もの時が経ちました。

 元勇者ことヴァルデマールが二十年を経て流れ流れにたどり着いた地は、ガルバーニャ国の片田舎にある小さな街アレッツォ。

 ガルバーニャ国とは、ヴィルヘルミナ帝国のずっと南にある食べ物が美味しい暖かい国で、地球の十九世紀末イタリアに良く似た立憲君主の国です。

 そして彼は勇者だったことを隠し、あることをきっかけにバルという名でアレッツォに住むことにしたのでした。

 その時から彼は、野盗に殺害された父親の(かたき)を討ちたいという十一歳の女の子のビーチェ、ついでに彼女の幼なじみである十歳の男の子ジーノの二人を弟子にし、修行をつけてあげることにしました。


 あらっ 申し遅れました。

 私は天界の、第六ブロック第二管理部所属の女神、ディナと申します。

 読者の皆様へこの物語のご案内を務めさせて頂きます。

 勇者ヴァルデマールはあまりにも強大な力をつけてしまったので、私の上司である女神サリ様に押しつけられ……

 いえ、命令で二十五年間ずっと監視を続けて参りました。

 の、覗きじゃありませんよ。

 彼はただの筋肉おじさんですから見て楽しいわけがないです。

 でも若いときは可愛くて…… じゅる

 ――あいやいや、何でもありません!

 いろいろ詳しいことはまとめて記しておきましたら、次回は必ず読んでおいて下さいね。


---


 勇者ヴァルデマールは二十年間放浪してアレッツォに住み始め、五年経ったある日のこと。

 四十代半ばになったヴァルデマールことバルは、十六歳になったビーチェと十五歳になったジーノを五年間、師匠として毎日のように鍛えていました。

 今日も彼らを近くの森へ連れて行き、いつものように修行をつけていました。

 森の中を流れている川の(ほとり)に広い場所があり、恰好(かっこう)の修行場なんです。

 朝から三人でしばらく組み手をやっていたようですが――

 おや。今日はバルが二人を集めて、何か変わったことをやるようですよ。


「これから二人には目隠しをして俺に攻撃してもらう。ずっと前にもやっただろ」


「ええー!? この前やった時は全然当たらなかったじゃーん。無理だってば!」


「ビーチェ。何度も口を酸っぱくして言ってるだろうが。相手のオーラを感じろと」


 バルがそう言うと、ジーノが文句を言います。


「オーラは感じるけどさあ。師匠がすぐ逃げるからだよ」


「おまえたちのキックが強いから、当たると痛いんだなこれが。ハッハッハッ」


「「えっ ええ……」」


 ビーチェとジーノはバルの言葉を聞いて呆れ顔。

 確かに長年訓練を受けた彼らの攻撃をまともに受けていては元勇者でも痛いでしょう。

 バルったらよくヘラヘラと笑っていて、屈強なくせに適当なんですよね。


 ――とまあ、ビーチェとジーノは五年間の修行でバルにそう言わせるほど力を付けてきたのでありました。

 オーラとは体内を流れる気のようなもので、オーラを感じるとはわかりやすく申しますと気配を感じ取ることに近いのです。

 五感を超越した感覚を厳しい修行によって鍛え、自らの(こぶし)で叩き潰しあらゆるものを切り裂き、その足は地を砕くことが出来るようになります。


「つべこべ言わずにこの布を巻いて目を隠せ」


 バルはハチマキのような白い布を二人に手渡し、着けました。

 気に掛けてちゃんと洗ってあるようですよ。ふふふ


「俺のオーラを人並み以下に抑えてみる。ちょっとでも当てたら合格だ」


「「はい!」」


 バルは二人に礼儀作法もたたき込んでいるので、修行の時だけは素直で行儀が良いようです。

 特にビーチェは子供の時から女の子よりも男の子と遊ぶ方が大好きで、ジーノたち近所の悪戯(いたずら)好きの男の子たちと走り回っていたせいかおてんばを通り越して粗暴になり、両親を困らせていたくらいでした。

 それをバルは教育して人並みにしたんですから大したものですね。


 ビーチェとジーノは目隠しをしながらもお互いのオーラを感じ取り、まるで目で見ているかのように連携を取ってバルに立ち向かう。


 シュタタタタタタタタッ ザザッ


 ビーチェはバルの左側へ手刀で斬りかかり、ジーノは真後ろへまわりキック。

 だがバルは紙一重でゆるりと(かわ)してしまう。


「あっ」


「なっ!?」


「おまえたち何もわかっていないな。自分自身のオーラがコントロール出来ていないから俺に丸わかりだ。俺が目を(つむ)っていてもわかるくらいにな」


「そんなこと言われたってえ……」


「どうすれば出来るんだよ」


「いいか二人とも。必要なときだけオーラを解放するんだ。今の俺は並の人間どころかネズミや猫並のオーラに絞っている。それでもおまえたちの攻撃は簡単に避けられるぞ」


「ということはさ。店に出てきたネズミを退治する時みたいに師匠をぶっ叩けばいいんだね!?」


「――おい、その言い方…… まあ理屈はそうだ。ネズミだって気配を察知されれば逃げる。逃げる前にサッと叩く。それと同じだ」


 師匠をネズミ扱いするビーチェにも困ったものですが、それを流してしまうバルは懐が深い元勇者でありました。

 勿論弟子の二人はバルが元勇者ということを知るはずもありません。

 彼らがいつか親の敵を討ちたいが為素直に修行を受ける様をバルは健気に思い、自分の子供のように感じているのでしょう。

 バルはこの歳になっても子供はいません。

 子供が出来るようなことはたくさんしているくせにね。


「さて、もう一度始めるぞ」


「ネズミ退治を思えば楽しくなってきたなあ。うひょー」


「おいビーチェ。あんまり変なことを言ってると師匠に逆撃されるぞ」


「無駄口を叩いてないで早く来い!」


 今度は二人がバルの周りを、隙を(うかが)うように回っている。

 目隠ししてそんな動きが出来る二人も大したものです。

 当然バルは、そんなことはお見通し。

 彼はネズミ並みのオーラから完全に気配を消してしまいました。


(あれ? 師匠がいなくなった!?)


(え? 消えた?)


 焦った二人はその瞬間、バルに向かってパンチをしたがスカ。

 バルはその場でしゃがんだだけでした。


「ハッハッハー! バカもん!!」


「ええっ?」


「うわっ」


 バルはしゃがんだまま両手を左右に広げ、手の平からオーラを爆発させるように二人を遠慮無く撃ちました。

 二人は十メートルほど吹っ飛ばされましたが、受け身を取ることが出来たので怪我はありません。

 バルはそれをわかってて撃ったんですね。

 二人とも目隠しの布を外すとこう言います。


「オーラを完全に消すなんて師匠ずるーい!」


「実戦ではこういうこともある。油断したおまえらが悪い」


「手本見せてくれよ。今度は師匠が目隠ししてさ」


「はあ…… しょうがねえな。ジーノ、布を貸せ」


 バルはジーノから貰った布を巻いて目隠しをしました。

 ビーチェから借りなかったのは女の子だから流石に遠慮したのでしょう。ぷぷぷ


「ほれ、いつでもいいぞ」


 二人はバルから五メートルほど距離を取り、息を殺しながらどう出るか(うかが)っています。

 この子たちも気配を消しているため、連係攻撃が難しく迂闊なことは出来ません。

 二匹の猫が同時に一匹のネズミを捕まえるようなシチュエーションですね。

 バルは立ち尽くしたまま微動だにしません。


(どうすっかなあ。師匠、全然隙が無いよ……)


(ビーチェも動かない…… 俺が先にアクションを起こしてみるか)


 タタタタタッ


 ジーノが軽やかな俊足ダッシュでバルに近づき、バルの足下へスライディングキックをする。

 だがバルはひょいと飛び上がり難なく(かわ)してしまった。

 その瞬間、ビーチェはその場でオーラを(まと)った一秒間に百発以上の高速パンチをバルにお見舞い。

 その勢いでバルは吹っ飛ばされてしまい、さらにジーノは高速で追いかけてサッカーボールのように空中高く蹴り上げてしまった。

 何てことでしょう。普通の人間ならば身体がバラバラになってしまいます。

 でもご安心を。バルの身体はそんなことでビクともしません。

 目隠ししたまま空高く蹴飛ばされたバルは、そこでニイッと微笑みました。


(ふん、オーラを丸出しだ。あいつらもうこの修行の目的を忘れてやがる)


 バルは体勢を整えるため、地上に向かって身体の向きを変えました。

 そして手の平をビーチェとジーノに向け、球状になったオーラの塊を数十個ぶちかます。


 ビシィッビシィッビシィッビシィッビシィッッッ

 ――バゴォォォォォォォォォォォォォォォォ!!


「「ギャァァァァァァァァァァァァ!!」」


 ビーチェとジーノの叫び声が聞こえる。

 バルはそのまま降下し、スタッと地上に降り立ちました。

 二人がいた場所は大きな爆発があり、煙と埃に巻かれて視界がほとんどありません。


「――ありゃ、気絶させてしまったかな。やり過ぎたかも知れない」


 二人のオーラを感じることが出来ない。

 バルは頭をボリボリ掻き、目隠しを取って煙が消えるまで待つことにしました。

 こんな攻撃をしても死なないと思っているくらいですから、五年間続けたバルの修行というのはそれはもう凄惨(せいさん)と言って良いほど厳しいものでした。


「ん?」


 バルが一瞬何かを感じたとき、目の前にはビーチェとジーノが現れました。

 彼らは手刀の小技で(くう)を斬るエアスラッシュを連続で放ち、バルを滅多斬りにしようとする。

 さすがのバルも避けきれないと察し、即座に中級魔法のマジックウォール・プラスを展開。

 この魔法は魔力による透明の障壁を作り、大抵の一般攻撃魔法や物理攻撃も防げるんです。


 ババババババババババババァァァァン!!


 障壁にエアスラッシュが当たり、大きな音を立てている。

 バルが子供の頃に初級魔法を覚え、勇者稼業をやっている最中に魔法が使えるメンバーから教育されたという中級魔法ですが、魔力の質が高い分障壁も強固のようです。


「はあああやっぱり防がれちゃったかあ」


「もうちょっとだと思ったのに」


 ビーチェとジーノはケロッとしながらヘラヘラと言う。

 この子たちはあれだけの攻撃を受けながらほとんど傷が無く、服が汚れただけでした。


「おいちょっと待て。本当に俺を殺そうとしてないよな?」


「師匠だってあんだけ強力なオーラをぶつけてきたじゃん。おあいこだよ」


「そうだそうだ。ちょっと痛かったぞ」


「う…… まあよくやった。そろそろ休憩にしようか」


 ビーチェとジーノはせっかく頑張ったのに、バルの態度に不満げでした。


「ちぇっ。なんか誤魔化してるみたいだし、褒めるのそれだけ?」


「俺グレちゃおうかな」


「ああもうクソガキめ。わかったわかった。最後のは良いフェイントだった。俺もちょっとびっくりしたよ」


 バルはそう言いながら、大きな両手で二人の頭をわしゃわしゃと撫でました。

 純粋な彼らはそれで喜び、ニコニコしています。

 とても厳しい修行でも、バルの暖かさが彼らをそうさせているのでしょうね。


「今日は天気が良いしな。おまえら川で汚れた服を洗って水浴びしてこい」


「はーい!」

「ほーい」


 ビーチェはウキウキ、ジーノは何か懸念があるような顔をして、修行場から少しばかり離れた川辺へ向かいました。


---


 ビーチェは川辺に着くなり、服と下着をあっという間に脱いですっぽんぽんになってしまいました。

 太ってもなく痩せてもなく均整が取れている健康的な身体。

 運動している女の子らしく筋肉の付きが良く、それでいて程良く脂肪が付いておりムチッとした太股(ふともも)は、男ならば目が釘付けになるでしょう。

 それにしてもおっぱいが大きい子ですね。

 お椀型で張りがあって、羨ましいわ。

 わ、(わたくし)のは…… グスン


 ジーノは距離を置いた場所でちょっと恥ずかしそうにノソノソと服を脱ぎました。

 二人ともバルから修行を受ける前の子供の時からこうして裸になって一緒に川遊びをしていたので、思春期になっても今まで気にしないでいたのですが……


「おーいジーノ!! そんなとこで何やってんだよお! こっち来いってばあ!」


「――いや、うん」


 全裸のビーチェが手を振って呼んでいるので、同じく全裸のジーノは自分の服を持って渋々そちらへ向かいました。

 ビーチェは早速、汚れと汗びっしょりになったブラとパンツを洗っています。


「おまえも早く洗えよ。暑いから早く水浴びしようぜっ」


「あ、ああ……」


 ジーノもぱんつとシャツ、ズボンを水につけてシャコシャコと洗い始めました。

 チラチラと裸のビーチェの方を見つつ……


(ビーチェってもう十六だよな。なのに子供の時から俺の前で裸のまんま、何考えてんだろ……)


 洗濯は一通り終わったようですね。

 すぐ近くに大きな石があるので、二人は洗濯物を熱を持った石に貼り付けるようにして乾かします。

 田舎なのでビーチェの下着は綿パン綿ブラ、特に可愛くありません。

 それでもジーノはチラッと見ています。

 彼はムッツリスケベに成長してしまったんでしょうか。

 洗濯物を干すと二人は再び川辺へ向かいました。


「ひゃー! 冷てえ!!」


 ビーチェは浅い川に入ってパシャパシャと水を身体にかけています。

 今度はジーノに向かって水をかけ始めました。


「ほらーっ (パシャパシャッ) あっはっはっはっ

 二人でこうするのって久しぶりだよな!」


「うっ 冷た!」


 こうして見るととても微笑ましいのですが、如何せん二人とも立派な大人の身体です。

 ビーチェは鍛え上げられた肉体にもかかわらず肌は女の子らしくふわっとしており、お尻はむっちり、素晴らしいバストの持ち主です。

 ジーノも男らしく鍛え上げられた肉体で、バルみたいな筋肉おじさんと違いとても瑞々しくて、(わたくし)興奮してしまいますよ。フンガフンガ


「あのさあ、ビーチェ。俺たちこの歳になってこんなことをしててもいいのかなあ?」


「こんなことって水浴び? いいじゃん別に誰も見てないし。あっ 師匠がいたね」


 そのバルは向こうの木陰で寝転がって休んでいました。

 ピチピチ十六歳の娘が裸になっているのに、全く興味が無いようです。

 ビーチェの方も、バルに見られていても気にしていません。

 この三人の感覚ってどうなんでしょうね。


「そうなんだけれど、いやそうじゃなくてさ……」


「何だはっきり言えよ」


「いやさ、俺たちみたいな歳の男だとおっぱいとか気になるじゃん……」


「はあ? あっはっはっはっ今更!?

 おまえに裸を見られても別に恥ずかしくないしー

 あたしはおまえのソレ可愛いなと思ってるだけだぞ」


「うっ……」


 ビーチェはジーノの股間を指さして笑っています。

 なかなか酷い女の子ですね。

 でもジーノは顔を赤くして(うつむ)いてしまいました。


「――って、何で手でソコ押さえてんの?」


「――」


「え? ええええっっ!?」


(まさかまさか? 昔お母さんから教えてもらったり女友達から男の子のそういう話を聞いたことがあったけれど……

 何で!? ジーノのくせに…… あああああたしの裸を見てそうなったの!?)


「――あわわわわわ」


「俺、やっぱあっちで水浴びするわ……」


「そそそそうか、わかった。あははは……」


 ジーノは両手で股間を押さえながらビーチェから離れて行きました。

 二人ともこれがきっかけでようやくお互いを意識し始めたということですね。うふふふ

 さて、その頃バルは変わらず木陰で寝転がっており、そこから二人の様子を(うかが)っていました。


「何やってんだあいつら? 様子が変だな……」


(うーむ…… 二人とも年頃なのに平気で裸でいられるのも考えてみればおかしいよな。

 ――それにしてもビーチェのおっぱいはデカくなったなあ。

 ま、俺はガキに興味ないけれどあいつの母親のナリさんは別格で俺の女神様だ。

 あの柔らかそうなおっぱい…… 触ってみたいなあ。うへへ)


 さて次回は、前述の通りこの物語の登場人物や街の各種詳細を書いておきましたので是非読んで下さいね。


 2025.4.23 冒頭を大幅に修正しました。

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