オタゲーマーに転生しました。 第三話
早川さつきは不貞腐れていた。この男、かなりしっかりとしている。要するに、部屋の整理がしっかりとしている。漁る場所がない。大量のぬいぐるみが置かれていること以外は特になんの変哲もない部屋だ。
(マジでなんもないなー、てかこいつ結構自炊してるみたいだけどご飯どうしよっか。凝った料理なんて作れないから、こんなに調理器具沢山あっても使いきれんつーの)
そんなことを考えていると、
「怪魚さん?いますか?」
女性の声がして、突然扉が開けられた。
(誰?こいつに彼女とか?いやこいつちゃんとしてるから彼女とか作らなさそうだけど)
そんな失礼なことを考えていると、声の主が顔を出した。
「どちら様でしょうか?」
言ってから気がついた。これ、まずくないか?こっちからすると初対面だがあちらからすると結構付き合いがあるだろう。こう言ってしまうと自分の中身が入れ替わっていることがバレてしまう。その場合、自分は事情を説明できるだろうか。
女性は一瞬眉を顰めだが、すぐに微笑んだ。
「どちら様でしょうか?」
まさか返されるとは。にこにこしている女性を前に、さつきは頭を抱えた。
さつきと女性──垂水わらびは向かい合って正座していた。あたりには静寂が満ちている。わらびはにこにこしながら口を開いた。
「つまり......さつきさんが怪魚さんと入れ替わったわけは、さつきさんにもよくわからないと?」
「あ、はい」
なんとか事情は説明できたが、かなり要領悪く話してしまった。仕方がない。全く経験のない出来事なのだから。説明するのもかなり難しいのだ。
「うちも電車の中でただ寝てただけなんで。何も分からないというか」
そう答えるさつきに、わらびはつぶやいた。
「ふむ、しかしこれはある意味ではチャンスなのかもしれませんね......」
「?」
なんのことだろう。かなり嫌な雰囲気だ。心なしか、部屋の気温が下がった気がする。
「あの、チャンスってなんのこt」
「そういや、聞き忘れてました。まあ、これが怪魚さんの悪戯である可能性もありますし...」
わらびはさつきの話を遮り、コホンと咳払いをして言った。
「怪魚さん、好きなモンスターの系統は?」
「いきなりそんなこと言われても......!?」
「怪魚さん」と呼ばれたことに違和感をら感じつつさつきが答えようとした時、イメージが頭にながれこむ、そんな感覚があった。思わずそのイメージを掴む。
それは、一言でいうと「竜」のイメージであった。鱗に覆われ、無駄のないしなやかな身体つき。「かっこよさ」はあるが「可愛い」とはさつきには思えない。そんなイメージだった。
「......分からないっすね。うちには」
なんだったのだろう、今のは。さっきの妙な「竜」は明らかに自分のものではないイメージだった。この身体の持ち主のものだろうか。
(もしかすると、持ち主の魂は今でもここにいて、眠っているだけとか?)
状況からすると十分にあり得る。この状況が既に荒唐無稽なものであることには違いないが。
しかし魂が入れ替わっているのではないとすれば、自分の体はいまどうなっているのだろうか。
(死体扱いされて葬儀とか嫌だなあ)
この時はまだ、さつきはお気楽に考えていた。
3/5 加筆修正