4話
食事後、逃げるように食事部屋を抜け出した。そしてこの空間から抜け出すために歩き回った。扉を開けたり階段を登ったりしかし一向に出口は見当たらない。
俺は廊下にへたり込んだ。ぼんやりと往来する少女たちを眺める。少女たちは俺をちらりと横目で見ても足は止めない。俺はどのくらい寝ていた?俺はやっぱりまだ夢を見ていて本当は崖の下でまだ転がっているのではないだろうか。何時間?何日?世間は俺を探しているだろうか?冷静になるといろいろなことを考えてしまう。
しばらく少女たちを観察しているといろいろと発見がある。
触覚を押し付けるのは彼女たちの挨拶らしい。彼女たちは廊下ですれ違い様に触覚同士を触れ合う。恐らく挨拶やそもそも言語のようなものかもしれない。最初彼女たちに取り囲まれたのも部外者の俺に挨拶をしに来たのだとしたら納得である。
彼女たちは俺の真似を好んですること。ここで座っているとたまに俺の真似をして彼女たちも隣や向かいに座ってみたりする。すぐどこかに行ってしまうがさっきの食事会のこと思い出すと積極的に真似をして何か学習しようとしているのかもしれない。
彼女たちは遊び好きなこと。両脚を廊下に投げ出していると、一人の少女が俺の足を跨いだ。右脚を一歩、左脚を一歩合計二歩で。彼女は何を思ったのかくるりと進行方向の反対を向き、今度は左脚から一歩右脚を一歩。また二歩で超えた。今度は右脚左足まとめて一歩で超えようとした。少しジャンプする形で跳び越えると、また反対から跳び越えた。数回繰り返すと飽きたのかどこかへ行ってしまった。
どうやら俺の足を飛び越える行為が何か彼女の琴線に触れたらしい。
急なことで俺は驚いた。てっきり彼女たちは機械でプログラムのようなものに従って動いているのだと思っていた。しかし彼女たちは何かを面白がったり、興味を持ったりする様子はまさに生き物のようだ。俺の真似っ子も遊びの一環なのかもしれない。
◇
しばらく廊下でぼんやりしていると、少女たちに連れられてまた最初の独房のような部屋に戻された。どうやらここが俺の定位置らしい。
俺は部屋の真ん中で胡坐をかき、とりあえず今すぐ解決すべき問題について考えた。
「トイレどうしよう」