3話
俺はぐったりとして部屋で倒れ込んでいた。あの後謎の儀式は続き、最終的に四畳半ほどの部屋いっぱいに少女が押し寄せ、潮が引くように帰って行ってしまった。三十分ほどの出来事だったかもしれないが永遠に感じる苦行であった。
いつまでも寝転んでいるわけにもいかないので扉からこっそり外に出る。そこは長い廊下だった。扉の外には少女が立っていた。ついさっきまでの光景を思い出してびくっと体が反応した。
少女はまた俺に触覚を押し付けてきたのでもういいよと内心呆れ果てて触覚を触ってやる。すると少女は俺の服の裾を引っ張ってきた。なにごとだろうか。ついて来いということだろうか。
白いタイルで覆われた廊下を進む。廊下にはたくさんの扉や、階段、件の少女たちが大勢往来していた。みんなせっせと働いている。荷物を運んだり、掃除をしたり、扉から扉へと忙しそうにしている。その光景に圧倒されていると後ろから別の少女に急かされる。
連れてこられたのは大きな机のある部屋だった。四畳半ほどの部屋の真ん中に円卓があり囲むように椅子がある。
その一つに座らせられた。俺が座ると、どこからともなく少女たちがゾロゾロと現れあっという間に円卓は満席になった。次にナイフやフォーク、鉛筆、スプーン、ペンチなどが小物類が雑多に並べられ、最後に料理が運ばれてきた。ここで初めて食事会であることに気づいた。
キノコである。どんと白い皿の上に手の平サイズの大きなキノコが乗っている。焼いてもいないし煮てもいない。周囲を見回すと少女たちはジッとこちらを見つめている。俺は仕方なく。ナイフとフォークを手に取る。
すると彼女たちもナイフとフォークを手に取る。よく見ると間違えてフォークとスプーンやナイフとナイフを持っている奴もいる。注意したくなったが黙っていることにした。
キノコを一口サイズに切って口に放り込む。はまあ食えないこともない。しかし味は最悪に近い。キノコとは思えないほど脂っこく無味。繊維質で香りはおが屑のような木の香りがする。なみなみと注がれたコップの水で無理やりそれを飲み込む。
彼女たちは食器類に悪戦苦闘している。キノコが皿から転げ落ちたり、コップをひっくり返したり、ナイフに刺さったキノコにかぶりついてるのはいい方で、ほとんどはあきらめて食器を使わず手で直接掴んでもぐもぐ頬張っている。
残すのも失礼と思ってそれを無理やり食べきった。彼女たちは終始じっと無言でその食事風景を眺めていた。