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異世界ガチャガチャ~天才男爵令嬢はガチャガチャアイテムに今日も狂喜乱舞する~  作者: 風紀いいん
4章

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 あたしがゴーレム開発を始めてから二日後、何とか原型を作ることに成功した。


 かなり急ピッチで仕上げたし、詰め込みたいものをとにかく詰め込んだから滅茶苦茶な部分はある。

 特に武装面に関しては思いつく限り色々と想定して詰め込んでしまったから、まだまだ整理する必要もある。

 けれど、何とかゴーレムという形にすることは出来た。試作段階としては、それなりの出来になっていると自負している。


 ちょうど完成した日。その日は、朝からゴーレム試作一号機の完成であたしはテンションが上がりまくっていた。


「よーーし!! あとは性能テストをするわよ!!」


 恐らく前日に徹夜をしたのがいけなかったのね。


 その所為もあり、朝食を終えるとすぐにあたしは準備に取り掛かった。

 朝食の席では、軽く化粧をして目の下の隈は誤魔化しておいた。これまで何とかサーラの目を誤魔化そうと努力してきた成果ね。お父様もお母様にも特に何か言われることもなく朝食を終える事が出来たわ。

 お母様はちょっと怪しんでいた様子だったけれど、大丈夫だったわよね……?


 ともかく、部屋に戻ったあたしは早速ゴーレムを起動させる為の材料を用意し始めた。


 ゴーレムの身体は当初、手軽に且つ大量に手に入る水でテストをしようと考えていたのだけど――直前でその予定を変更した。

 というのも、水のような液体ではなく実際に本番で使うだろう土や岩などの固体で試しておきたかったからだ。


 そう考えて実体化スケッチブックを使い、()()()()()を部屋の中に出す。

 

 ちなみにここで土や岩にしなかった理由は、重量によるゴーレムの機動力の変化を調べたかったから。

 土や岩よりも、金属の方が同じ体積でも重量は重くなる。ゴーレムの身体は基本的にどの材料を使っても同じ形になるように設定しているから、そういった部分での違いも観察してみたかったのだ。

 もちろんこの実験を終えたら、ちゃんと土や岩などで身体を作った場合も検証するつもりだ。


 さて、準備は整ったわね。それじゃあ――


「ゴーレム試作一号……起動!!」


 鉄の塊の中にゴーレム核を置き、起動させる。後はゴーレム核が勝手に周辺にある物質を取り込んで、自動で自分の身体を作ってくれる。

 ここで取り込む材料の選別とかには指定が必要だけど、逆に言えばそれだけしかすることは無いのだ。


 うん、我ながら使い勝手よく作れたわね! 苦労した甲斐があったわ!


 ちなみにここでゴーレム核を管理統制しているのは、正確に言うとあたしじゃない。

 手元にあるガチャガチャアイテムの一つ、『多機能タブレット』を使ってゴーレムや核の状態を常に確認している。


 これについては、最初はあたしが全部を管理統制しようと思っていたのよ?

 でも一体だけならまだしも、何十体と増えて行ったときにとても一人じゃ管理しきれないと思ったの。


 そこで思い出したのが、タウロから教えてもらった異世界の知識よ。

 何だっけ? いんたーふぇーす? おーえす? とかいうものでロボットを制御とかしているって言ってたのを思い返して、それを参考にさせてもらったわ。

 

 どうもこの『多機能タブレット』は、タウロの元いた異世界の道具に似ているらしかった。

 タウロ本人にも確認をとってみたら――『うわ、マジかよ……本当にタブレットじゃん。しかも裏にあの齧られた林檎のマークまであるし……』と言っていたから間違いない。

 それにしても、齧られたりんごのマークって何なのかしらね? 確かに多機能タブレットの裏面には一部が齧られたように欠けた果物の絵が描かれているけど?


 まあそれはともかくとして、それならばこれを使えば話に聞いたようなゴーレムの制御ぐらい出来るんじゃないかと考えたのだ。

 その結果は、御覧の通り大成功だった。ちょっとだけ追加機能が欲しくて、海の神様にお祈りしてお願いしたりもしたけど――概ね無事に何とかなった。ちょっとだけ向こうのお願いも聞くことになっちゃったけど、これも必要な事だから仕方ない。それにそんな無茶な要求でもなかったから、あたしとしては全然構わないレベルのお願いだった。


 そしてこれが使い始めてみると、便利の一言に尽きた。

 これのお陰もあってゴーレム開発がこんなに早く進んだという経緯もあるぐらいには便利過ぎた。


 まあ()()した多機能タブレットの機能についてはまたじっくりと語るとして、ゴーレム核は順調に動作している。


 周りにある鉄塊を液体のように纏わりつかせて、身体を形作っていく。

 ものの数秒で体の構築が終了し、そこには完成したゴーレムが出現していた。


 残念ながらあたしには絵だけじゃなく、造形に関するセンスも無かったようで随分とずんぐりむっくりした形になってしまった。

 高さは大人一人と半分ぐらいで、手足胴のどこを取っても太く全体的に横に大きな印象がある。


 ……仕方ないのよ。どんな形にすればいいか分からなかったから、取り合えず記憶にあった魔物のゴーレムの形を再現してみようと思ったのよ。

 そうしたら、記憶自体ははっきりしているはずなのにどうしても形がかけ離れていってしまって……気が付いたらこんな造形になっていたの。


 これで完璧に分かったわ。あたしは芸術方面の才能が死んでるのよ。


 もう絶対に何かのデザインとかには関わらないわ。量産型ゴーレムを作るときは、ミランダかもしくはお母様辺りにデザインを頼みましょう。


 うん、それがいいわ……


「さて、取り合えず身体の構成には成功ね。後はちゃんと動くかだけど――」


 多機能タブレットを使い、ゴーレムに簡単な命令を送る。

 するとゴーレムはあたしが出した命令に従い手足を動かしたり、簡単な動作をきちんとこなしてみせた。


「ふむ、まだまだこの辺の動作は問題無いみたいね。まあここら辺で躓かれるとさすがに困るから良かったのだけれど……じゃあここからは本格的な性能テストね。まずは燃料を補給しなくちゃ」


 あたしは無限ポシェットの中から、樽を一個取り出す。

 そしてその樽の中身をゴーレムに飲み干すように指示を送る。そうすればゴーレムは樽を口に持っていき、中に入っている液体を身体の中に収めていった。

 全て飲み干したのを確認して、手元のタブレットで燃料が補給されたことを確かめる。


「それにしても()()をこんなところで使うことになるとわね。最初は持て余していたけれど、こうして使い道が見つかってよかったわ! しかも燃料としてはこの上ないぐらい上質なエネルギー量を誇ってるし言う事なしね!」


 そう、今回ゴーレムの燃料として採用したのは、王都でも活躍したあのアイテム――

 

 『神水溢れる黄金の盃』からあふれ出る特殊な水――『神水』だった。


 この神水、今回の事で調べてみて分かったのだけどただの水の中に凄まじいエネルギーを内包しているのだ。

 魔力とも違うそれ以上の何か……きっと神水と名が付くくらいなのだから、神に由来する力か何かなのだろうと思う。

 それは魔力を燃料として用いた場合の何倍もの効率でゴーレムを動かす事が出来るような代物だった。 


 確かに、元々神水は水の精霊様の格を上げてしまえる程の力を持ったもはや水なのかと問いたくなるような液体だ。

 であれば、本来の用途とは少し離れるかもしれないけれど燃料として使わない手は無かった。

 むしろ積極的に採用したわ。


 ただし、もちろんそのまま使える訳じゃなかった。ある程度量を調整しないと、逆にゴーレムの方がパンクして使い物にならなくなってしまうから注意が必要なのだ。

 さっきゴーレムが飲み干したのだって、純粋な神水ではなく普通の水と混ぜてかなり薄くした状態の神水だった。

 たしか、ざっと百倍ぐらいには薄めていたと思う。かなり手を加えまくった試作一号でさえこれ以上は耐えられない程なのだ。

 量産型ゴーレムに使うときは、千分の一とか万分の一ぐらいでちょうどいいかもしれないわね。


「まずは反重力術式起動っと……成功ね。それから移動用の風魔法の術式も起動して――」


 このゴーレムは3mを超えるような巨体を誇っている。それに身体はずんぐりむっくりで、土や岩から出来ているような超重量級の身体だ。

 普通に歩いて移動させようとしたらトンデモなくゆっくりになってしまうので、反重力術式の登場だ。

 これで体重を軽くして移動速度を上げようという思惑である。それと加えて風魔法による移動の補助を加えれば、理論上は馬と同じぐらい早く動ける想定なのだけど……


「このまま部屋の中だとテスト出来ないわね……そうよね!! 仕方ないから外に行きましょう!!」


 何度も言うけれど、この時のあたしは寝不足とかゴーレム完成とかで色々ハイになっていた。


 そうしてあたしは、ゴーレムの肩に乗り窓から外に飛び出した。


 反重力術式を最大出力にして、屋敷の屋根よりも高く飛んだ状態のまま広くて走り回れそうな場所を探す。

 すると、遠目に見覚えのある姿が見えた気がした。


 というか、ここら一帯でメイド服で歩く人物なんて相当限られてくるからほぼ間違いなかったけれど。

 確認の為に近づいていってみれば、やっぱりそこにはサーラがいた。

 

 しかも何やら、さっきまで戦っていたグレイウルフの死体を処理しようとしているようだった。


 だから、折角の機会だしゴーレムに搭載した武装がちゃんと魔物に通じるのか確かめようと思ってその死体の処理を任せてもらったのだ。

 使ったのは、作った武装の中でも上から数えた方が威力が高い火魔法を発射する術式だった。


 家にあった魔法の本の中にのっていた、炎を圧縮して閃光のように放つ魔法を少しだけアレンジした術式を用いた攻撃手段。

 アレンジした部分は消費する魔力を神水由来のエネルギーに置き換えること。それから射程を伸ばす代わりに威力を下げることだった。


 威力については消費するエネルギーの関係で、どうしても落とさざるを得なかったのが残念な部分ね。

 それでもさっき補給したばかりなのにここに来る分と合わせて四分の一も消費してるのはいただけないわね。

 もっとエネルギー効率を考えないと二、三発撃ってそれでお終いじゃ使い物にならないわ。


 はぁ……もう一度各部の見直しをしないとね。


 ああ、それよりも――


「それより、サーラの方はちゃんと例の素材は集まったんでしょうね? まああなたのことだから心配はしていないけれど」


「もちろん、きちんと全て集めて参りました。ついでに少し珍しい魔物もいましたので、そちらの素材もお嬢様へのお土産として持ち帰って来てますよ。後でお見せしますね」


「本当!? ありがとうサーラ! それじゃあ一緒に帰りましょう!」


 さっすが、サーラね!! あたしのことをよく分かってるわ!!

 

 珍しい魔物の素材ってどんなものかしら? きっとこの辺では見ない魔物の素材よね!?


 帰ったらお母様に怒られるのは確定としても、その後にお土産が待っていると思えばそんなの苦じゃないわ! 

 さあ、早く帰ってお説教を終わらせましょう! お土産の時間が待ってるわ!


 ……


「クレハっ!! あなたは何度言ったら自分の行動を反省するのですか!! こうなったら暫くは自室で謹慎にします!! もちろんその間にスキルを使うことも、あのゴーレム? に手を付けることも禁止です!! 反省して大人しくしていなさい!!」


「お、お母様!!? それはあんまりよ!! せめて理論部分の検証だけでも――!!」


「……あらあら、全然反省していないみたいね?」


「……はっ!? 今のは違うのよ!? 本当に反省してるから「いいえ、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れました」――と、というと……?」


「貴女には向こう一週間研究開発を禁止します。ミランダさんと進めている話については構いませんが、それ以外で新しく何かをすることを禁じます」


「そ、そんな!?」


「それに加えて、私達の執務の手伝いをするように。一緒にいれば傍で監視できますからね」


「お、お母様――」


「い い で す ね?」


「……はい」


 本気で起こったお母様は本当に怖いのよ……


 その後、何とかゴーレムの必要性を訴えてサーラ監督の元なら開発を許して貰えた。


 本当に、寝不足とか良いこと無いわ……

知恵の神「えっ、クレハちゃんに手を貸しちゃたの?」

海の神「ちょっとあの機械に手を加えてだけですよ。それに主導したのは創造神ですし」

創造神「アップデート内容で悩んでいたので~、折角ならユーザーの希望に応えようと~」

知恵の神「でも、あれっはアップデートていうかもう――」

創造神「ああでも~、掲示板の存在についても伝えたのでこれからは話がし易くなるかも~?」

知恵の神「ナイスだよ、創造神。僕はちょっと用事が出来たから戻るね」

海の神「私も同じく」


創造神「……まあでも教えたのは、私個人の板なんですけどね~? 私だってあの子と色々話たいですから~。暫くは黙っておきましょう♪」

運命の神「……」

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょいとお母さん厳し過ぎかな?と思わなくもないけど、貴族令嬢の母としてはまだまだ甘いですねー
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