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異世界ガチャガチャ~天才男爵令嬢はガチャガチャアイテムに今日も狂喜乱舞する~  作者: 風紀いいん
4章

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部下のせいであの子にヤバい知識が……

お待たせしました!

更新します!

 お父様の話を聞いてからずっと考えていた――


 果たして大移動している魔物の群れが全てこのカートゥーン領に押し寄せてきたとして、現状でどれだけ領地を守り切ることが出来るだろうか、と。


 確かにミランダに依頼している結界を張る魔道具や、従魔の召喚によって防衛を固めようと試みてきた。

 しかし、根本的な問題として戦力、それも人手が圧倒的に足りていないのは相も変わらず。


 攻めてくる魔物達に対して、守っているだけで本当にいいのか……いや、攻め手が無ければ魔物を退けることは難しいだろう。いずれ物資が尽きて蹂躙される可能性の方が高い。籠城戦とはそれだけのリスクがあるのだ。

 籠城戦だとジリ貧となれば、やはりどうにかこちら側から打って出るしかない。

 しかしそれとて、中途半端な戦力では上手くいく保証が無い。お父様とお母様が領地に帰って来てから忙しくしているのも、戦力集めが理由だろう。


 ひょっとすると、既に王宮に援軍要請もしているのかもしれない。

 それならそれでいい。それであたしの準備が無駄になる分には別に構わない。

 

 けれど、必要な時に準備を怠ったせいで何も出来ませんでした……なんてことには絶対にしたくない。


 つまり何が言いたいのかというと、どうにか現状の人手不足と戦力不足の解決を手伝いたい。


 それをずっと考え続けていた。

 そんな時に思い出したのが、王都での出来事――優秀な魔道具職人であるミランダを巡った一連の事件だった。


 あの時、あたしはミランダの身代わりとして『実体化スケッチブック』を使った本物に極めて近い人形を利用した。実体化スケッチブックは描いたモノを現実に出現させることが出来るガチャガチャから出てきたトンでもアイテムの一つだ。

 ミランダの身代わりとして作ったのは中身の伴わないただの人形だった。

 ではそこに自立意思を持たせれば十分に人手不足を補う手段として使う事が出来るのではないだろうか?


 そこまで考えていれば、普段のあたしなら即実行に移していただろう。

 だけど、今回はそう簡単には決めることは出来ない。


 なにせ『自立思考が出来る』ということは、それはもはや一つの生物と何が違うのかとなってしまうからだ。

 今回の魔物の侵攻が終わった後はどうするのか? 管理は? 生物として扱うのか? 物として扱うのか?

 などなど、後の処理が面倒臭いことになるのは火を見るよりも明らかだ。


「……早速、頼ってみようかしら」


 そうして悩んだ結果あたしは、ついさっき契約した頼もしい従魔に頼ることにした。


「――『タウロ、聞こえるかしら?』」


 あたしは、手の甲に光るタウロとの契約の証を意識しながら心の中で話しかける。

 すると返事はすぐに返ってきた。


『――おお、早速だな! どうしたクレハちゃん、何か困り事か?』


「―――『そうね、困っているというか悩んでるというか。もしよければ少し相談に乗ってくれない?』」


『もちろんだ! 契約者であるクレハちゃんの頼みとあればお安い御用だぜ!』


 快く相談を引き受けてくれたタウロに、あたしは今の自分達の領地の現状とさっきまで考えていたことについて話す。


「――『それでタウロなら良い知恵を出してくれないかと思って。長生きだし、異世界の知識とかも持ってるし』」


『なるほどな~……確かにクレハちゃんに召喚されたとき、周辺に魔物の気配が多いなって思ってたんだ。まさかそんな事になってるとはな』


「――『魔物が多いって――そ、それってかなり数が多かった!? 百とか千とか!?』」


『ああ! そんなに多くなかったよ!……ただ魔物の群れってあんまり大きくはなり難いから、それでちょっと多いなって思ったぐらいなんだ』


「――『そう……』」


 魔物の群れは、周辺に住む人間にとって大きな脅威となる。

 だからこそ、領地の騎士団や冒険者ギルドが協力して魔物の群れは早い内に潰される。その為、魔物が一定以上の大きさの群れになることは余程ない。

 あるとすればその地方が魔物の駆除をサボったか、駆除以上のスピードで繁殖しているかのどちらかである。

 

 確かにタウロが変に思っても不思議ではないか……


 でも、領地周辺で魔物が増えているというのは確からしい。

 やっぱりあんまり時間は残っていないと思った方がいいわね……そういえばサーラは大丈夫かしら? 

 魔物の群れに遭遇とかしてないといいんだけど……


『しかし神連中もトンデモないアイテムを地上の人間に渡したもんだなあ。もし悪人の手に渡ったら大混乱必至だぞ……』


「――『それに関しては完全に同意ね。でもそのお陰で色々助かってるから文句なんて言えないんだけれどね? タウロを召喚した召喚石だって<ガチャガチャ>から出てきたアイテムだし』」


『はっはははっ、確かにその通りだな! それなら俺も文句は言えないぜ! そのスキルを渡す相手も選んだみたいだし、クレハちゃんを選んだっていう点では大成功だな!』


「――『そこら辺の本心は分からないけれどね。それよりも――』」


『ああ、本題は戦力と人手の拡充だったな……まあ確かにすぐに思いつくのが幾つかあるけど――』


「――『是非聞かせてちょうだい!!』」


 さすがは冥界の宰相ねっ!

 召喚したときの印象はあんなに残念だったのに、こうしていざという時には頼りになるわ!


『それじゃあまず一つ目は、俺が冥界の軍勢を引き連れて魔物共を殲滅「――『馬鹿じゃないの!? 却下に決まってるでしょ!?』――ま、そうだよな。これは駄目って言われるだろうなって思ってた』


 だったら最初から言わないで欲しかったわ。

 もし次同じようなことを言い出したら今度からコイツはナノと同じ扱いでいいわね。


『ちょ、ちょっとした冗談だって! 次はもっと堅実な案だぞ?』


「――『何かしら……?』」


『クレハちゃんが最初に考えたいた案を少し修正する感じだけど、そのスケッチブックを使ってロボットーーゴーレムを大量に作るのはどうかな?』


「――『ゴーレム……』」


『ゴーレムだったら生物でもないし、ただの動く無機物だろ? それに基本はゴーレムの核になる部分を作って、後はその辺の土でも岩でも水でもを集めて身体を作るようにすれば、スペースの節約にもなる上に持ち運びにも便利の一石二鳥だ!』


「――『なるほど、ゴーレムね。確かにそれは盲点だったわ……』」


 なんで気付かなかったのかしら。

 別に生物としての形にしなくたって魔物にいるような石像のようなゴーレムだっていいじゃない!

 それにタウロの言ったように核だけを作って身体は現地調達にしておけば様々な面で便利に使うことが出来る可能性が高い!


「――『凄いわタウロ! ちょっと見直したわよ!』」


『あ、ちょっとなんですね……』

 

 ええ、ちょっとよ。その前のふざけた提案のマイナスが大きかったわね。


 でも、そんなことより――


「――『ねえタウロ……ところでさっきゴーレムの話をするときに何か別の名前を出さなかったかしら? 確か()()()()とかなんとか』」


『……っ!!』


 言葉は返ってこないけど、タウロから動揺するような反応があった。

 てことはあたしの想像通りなのかしら。


「――『……あるんでしょ? 異世界にもゴーレムに似たような何かが? その知識をあたしに教えなさい!』」


 

 この時、タウロには直感があった。

 この子に地球のロボットに関することを教えたら何か()()()()()になると。取返しがつかないぐらいヤバいことになるとっ……!

 しかし、タウロとて地球出身の男子だ。ロボットという言葉に心が躍ってしまうのも無理ないことだった。

 それに契約者であるクレハは、まだたった五歳の少女だ。例え自分が知っているロボット知識の再現を試みたとしても出来る訳がない。


 まあ折を見て、ゴーレムの話に軌道修正してやればいいかと判断してしまった。

 その結果がどうなるのかを想像も出来ずに。


 そしてクレハがこの世界において最上の頭脳を持つと認められた『天才』の称号を持つ少女であることも知らずに……



『よしっ! 俺の前にいた異世界に存在した男のロマン、ロボットについて教えてやろう! これで最強のゴーレムを作って魔物共を蹴散らしてやろうぜ!』


「――『男のロマンとかはよく分かんないけど、分かったわ!』」


 そうして、誰にも止めることが出来ない天才少女クレハと、異世界出身のタウロの秘密の会議が始まった。

 始まってしまった……





 タウロからの情報収集を終えたあたしは、口元のにやけが収まらなくなっていた。


「ふふ、ふふふっ……空飛ぶ巨大な鉄人、鋼鉄すら焼き切る高熱の光、弓よりも射程が長く威力も高い兵装……ふふふ……」


 凄かったわ……タウロのいた異世界にはそんなものが存在していたなんて……


 あたしのいるこの世界とは全然文明が違うわ。それも向こうの方が工作や技術などではずっと進んでいる。


「よし、一先ずは原型となるゴーレムを作ってみましょう。色々な武装や改造を施すのはそれからにしましょう」


 まず作るのは、ゴーレムの核となる部分だ。

 取り合えずそういったものがスケッチブックで作れるかの確認を行う。


「でも実験を行うなら身体に使える素材が何か欲しいわね……ああっ、アレがあったわ」


 無限ポシェットを漁って、それを取り出す。


「土とか岩だと部屋が汚れるから、水でいいわよね」


 取り出したのは『どこでも蛇口』だった。最近は王都に行ったりしていたせいで、あまり使う機会が無かったこのアイテム。

 これの解析も進めていかないといけないんだけど、結局後回しになってしまっていたわ。


「これの解析は……やっぱり後回しね。今回の件が片付いたら真っ先に解析しましょう」


 やっぱり、魔力の消費も何も無しに無限に水を出せるというのはとても魅力的だ。

 領地のあれこれで使えそうだし、解析の優先度を上げておくことにして早速準備を進める。


 実体化スケッチブックに絵を描くのには、もちろん同じくガチャガチャアイテムの『自在筆』を使う。

 いい加減自分の絵心の無さは分かっているので、今更自分の力だけで描こうとは思ってないからいいんだけど……使う度にこの組み合わせは凶悪だと思い知らされる。


 どちらか片方だけでも、あたしにとっては意味を為さないアイテムだっただろう。

 でも組み合わさることで、絵に描けるものなら大体のものを出す事が出来る凶悪アイテムに早変わりする。


「……これってどこまで細かく作り込めるのかしら?」


 これまで何度か使っているけれど、その度にあたしが思い描いた通りに出来上がっていた。

 例えばそれを構成している素材だったりは指定したことがあるけど、それが持つ機能まではほとんど考えたことは無かった。

 

 では今回作るゴーレムの核に必要な機能は、まずもちろんゴーレムを動かす動力兼頭脳としての機能。

 それに加えて、周辺にある水や土を自動で取り込んで身体を構築する機能も欲しい。


 そこら辺をイメージだけで補うのってちょっと難しいかも……


「う~ん……いくつかのパーツに分けて、それぞれに機能を持たせてみる、とか?」


 今考えた機能をパーツ毎に分けて最終的にそれを組み上げるように出来れば上手く作れる気がする。


「そうすると、それぞれの機能が相互に干渉しないように作らなくちゃいけないわね。それに発動する順も重要だし――やっぱりそこら辺は術式で補うしかないかしら?」


 この時点で量産とは遠い所にいる気がするけど、今回作るのはあくまで試作品だ。

 そこから量産に向けて改良を加えていけばいいのだから、現時点ではこれでいいわ。

  

 とにかく作ってみないことには、改良云々も出来ないのだからまずは作ってみてからね。


 こうして、魔物の侵攻に向けたあたしのゴーレム開発が始まった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 持たせちゃいけない娘にロボット関連の知識を与えちゃってるw
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