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じゃあ、作ったばかりのこのスキルをあげるわね

よろしくお願いします!

 この世界では5歳になると神様からスキルを貰う事が出来る――


 どうして5歳なのかについては色々な説がある。


 例えば、昔は医療技術が発達してなくて5歳まで生きることが出来ない子どもが多かった。だから5歳になってようやく一つと命として認められるからという説。他にも、神様が5という数字が好きだったから。最初にスキルを与えた時がたまたま5歳だったから。5という数字に人間の知らない特別な意味が込められているからなどなど。

 

 まあこうして色々話したけど、そこら辺に関しては特に興味もないのよね。何故5歳なのかという所よりも、どのようにスキルが与えられるのかの方が興味がある。

 急にこんな事を思い出したのは単純にあたしが今日、5歳になってスキルを授かるからだ。


 街の教会に行くと、いつもの優しそうな顔のお爺さん神父様が出迎えてくれる。両親からお布施を受け取ると、あたし達を神様の像の前まで案内してくれた。


「では、ここで神に祈りをささげてください」


 神様の像とあたしの間に立った神父様も一緒にお祈りするように目を瞑る。あたしはその前に跪き胸の前で両手を組む。両親はその様子を後ろで見守っている。スキルを貰う時には近くに他に人がいちゃいけないんだそうだ。もちろん神父様は例外だけれどね。


 ……さて、祈れなんて言われても何を祈ればいいんだろう。


 別に神様を信じていない訳じゃない。ただ、神頼みするような事に今まで出会ったことが無いだけ。

 あ、前に一度胸だけはお母様に似ませんようにって祈ったかもしれない。それは本当によろしくお願いします。あとお母様はごめんなさい。


 さすがにこんなお祈りじゃ駄目だと思うからちゃんと考えよう。


 ……そうだな。


 「(じゃあ、これからの人生を退屈しないで済みますように)」


 ――その願い聞き届けましたよ


「……!?」


 お母さんでも、教会のシスターさんの声でもない、聞き覚えの無い女の人の声が聞こえた。そして次の瞬間、あたしの身体が光に包まれた。


「おめでとう、無事に祝福が与えらえたようだね。ステータスと唱えてごらん。自分のスキルを確認することが出来るようになっているよ」


「はい……『ステータス』」


 目の前に手鏡よりもちょっと大きめぐらいのサイズの透明な板が現れた。

――――――――――――――――――――

名前:クレハ・カートゥーン

年齢:5


スキル:ガチャガチャ

称号:男爵家の三女 天才

――――――――――――――――――――


「はて……<ガチャガチャ>ですか。こんなスキルは初めて見ましたね」


「そうなんですか?」


「長いこと神父をして祝福に携わってきましたが、聞き覚えの無いスキルです。どうしますか、教会の本部に連絡をして過去の資料を調べてもらう事も出来ますが?」


「……いえ、自分で色々試してみてからにします。折角の珍しいスキルなので」


「そうですか。それもよいでしょう」


 そういう事で5歳のスキルを貰う為の儀式、祝福の儀は終わった。 

 その後お父様とお母様にもスキルの話をしたけど、やっぱり見当もつかないらしかった。何に使えるのかよく分からないスキルを貰ってしまったけど、二人ともそんなこと気にしてもいなかった。むしろこれから家に帰ってやるあたしの5歳の誕生日パーティーが楽しみらしい。


 あたしはこんなよく分からないスキルを貰って、どうしようかって感じなのよねえ。


 あの時聞こえてきた声はもしかしたら本当に神様の声だったのか?


 もしそうだったとしたら、あたしのお願いを聞いてくれたって事になるのかしらね。退()()()()()()()()なんて願い事を本当に聞いてくれたんだとしたら、このスキルはあたしにとって面白い存在になるかもしれない。

 

 ……正直なところ、不安よりも期待感が上回っているのが分かる。今からその時が楽しみだ。





 誕生パーティーが終わり、自分の部屋に戻ってきた。疲れた体をベットに投げる。


「ふぅ……」


 体に籠っていた熱と共に深く息を吐きだす。今日は本当に色々あった。パーティーでは両親だけでなく、お祝いの為に王都から帰って来ていた姉二人に散々可愛がられてしまった。屋敷に仕えている者達も口々にお祝いの言葉をくれて、祝われ疲れた。


 もちろん嬉しかったんだけどね?


 今日のことを振り返って一息ついてから、自分のステータスを開く。

 相も変わらずスキルの欄には<ガチャガチャ>の文字が書かれている。スキルというのは基本的に使いたいと思えば発動するとは姉から聞いたことだ。疲れてはいるが、すぐに眠気が来るほどでもない。むしろスキルの事を考えたら興奮して眠気なんて吹き飛んだぐらいだ。


 早速スキルを使うと念じてみる。


『スキル<ガチャガチャ>の発動を確認しました。現在回すことの出来るガチャガチャは以下の種類になります』


 そんな声が聞こえて、ステータスが表示されているのとは別に板が出現する。


――――――――――――――――――――

スキル:ガチャガチャ

使用可能ガチャガチャ

 ・初回特典10連無料ガチャガチャ

 ・魔石ガチャガチャ

 ・毎日一回無料ガチャガチャ

――――――――――――――――――――


「ふむ……無料と魔石の二種類があるのね。無料の二つは限定みたいだし、普通に使うには魔石が必要ってことなのね」


 つまりこのガチャガチャというスキルは魔石を必要とするスキルだという事だ。消耗品なのか繰り返し使うことが出来るのかは実際にやってみないと分からないところね。

 スキルの中には魔石を対価にするものもあるって聞いた事があったけど、まさか自分のスキルがそのタイプだとは思いもしなかった。

 

 なにせかなり珍しいタイプなのだ。


 ……面白くなってきたわ


「そうと決まればやってみましょう。まずは……そうね。『毎日一回無料ガチャガチャ』がいいかしら。今日の分を回さないと勿体ないものね」


 ということになったので、早速ガチャガチャとやらを回してみることにする。


「……回すって、どうすればいいのかしら?」


 ガチャガチャなんてものはもちろん聞いたことも無いから使い方も分からないのだ。

 取り合えず「回したい」と念じてみたけど、何の反応もしない。


 そもそも回すって何を回すのかしら?


 取り合えずその場で一回転してみる……何の反応も無い。


 自分でやっておいてなんだけど、恥ずかしくなってきたわ……


 だったらと思い、使用可能ガチャガチャの所に触れてみる。すると正解だったみたいで、さっきと同じように無感情な声が聞こえてくる。


『毎日一回無料ガチャガチャが選択されました。

……

毎日一回無料ガチャガチャ!それは文字通り一日に一回だけ無料で回すことの出来るガチャガチャです!現在はアイテム類、特に生活に役立つアイテムをピックアップ中となっています!さらになんと!初心者応援キャンペーンにつき、レア度の高いアイテムの出る確率が、な、な、なんと通常の2倍で提供中!この期間に毎日回して貴重なアイテムをゲットしよう!

なお初心者応援キャンペーンはあと7日です!

……

ガチャガチャを出現させます』


「……!?」


 目の前に光の塊が現れて、何かの形を作っていく。光はだんだんと弱くなっていき、完全に消えると中にあったものが見えてきた。出てきたのはあたしの身長と同じぐらいの高さの箱だった。ただの箱ではなく、側面が透明で中が見えるようになっている不思議な箱だ。中にはこれまた半分だけが透明な球体が沢山入っているのが見えた。もう半分は様々な色があって、緑色が多い気がする。


「これがガチャガチャなの?どうやって使えばいいのかしら……?」


 周りをぐるりと回って観察すると、箱の側面は何処も同じような形をしていた。ただ一面だけ、ちょうどあたしの正面にきた面だけに取っ手のようなものがついていた。取っ手のようなものと言ったのは、これも見たことのない形状だったからだ。何となくの推測である。


「あら、これ回るのね。という事はこれを回せばいいのかしら」


 取っ手のようなところを回してみる。回すたびにギギギと妙な音がするし、かなり重い手応えが返ってくる。まあスキルで出てきたものだし、そう簡単には壊れないだろうと頑張って回してみる。


 ガラコンッ


 そんな音と共に、取っ手部分の下から中に入っていた球体が出てくる。


「なるほど、そう仕組みだったのね。単純な構造だけど、割と面白いかも」


 出てきた銀色の球体を手に取る。透明だからガラスで出来ていると思ったけれど、ガラスにしてはびっくりするぐらい軽い。まるで羽でも持っているかのような軽さで、中身の重みすら感じられなかった。

 

「つまりガチャガチャというのは、これを回してアイテムを手に入れる仕組みのことを言うってことかしら。アイテムを得るには……この球体を開ければいいのね」


 球体の真ん中の辺りに切れ目が入っていたのを見てそう判断した。回転させるようにして左右に捻ると、簡単に開けることが出来た。中に入っていたのは、くの字に曲がった金属と一枚の紙だった。


「どれどれ……」


――――――――――――――――――――

アイテム名:どこでも蛇口 レア度:☆☆☆☆☆

水は生活に欠かせないもの。もし水を得ることが出来なくて困ったときは、これを使えばすぐ解決!設置することで、いつでもどこでも水を得ることが出来ます!一度取り外してからの再度の設置も可能!さらに硬水、軟水も自由自在な事に加え出てくる水の温度も調整可能!さらにさらに、ただの水だけではなく炭酸水、浄化水、海水も出すことが出来るように!もちろん出す量に制限もありません!多種多様なお水で生活に潤いを!

――――――――――――――――――――


 思った以上に凄いアイテムだった……


 説明文からするに、色々な種類の水を無限に得ることが出来るって解釈でいいのかしら?

 もし本当にそうなんだとしたら、とんでもないアイテムという事になる。しかも設置場所については特に制限も掛かれていない。もし砂漠のある地域だったらこれを求めて戦争が起こるレベルだ。

 さらに紙の裏側にも文字が見えたので読んでみると、そこには『カプセルの中身を使いたい場合は実体化と言いましょう』と書かれていた。


「実体化と言いましょう――って、大きくなったわ」


 文章を読み上げると、実体化という言葉を口にした途端にくの字型の金属はあたしの掌サイズにまで大きくなった。


「ちょっと使ってみたいわね。確かそこにカップがあったと思うんだけど」


 自室でティータイムをするようにあたしの部屋にはいくつかのティーセットを常設してある。そこの棚からカップをあるだけ持ってくる。設置するのは何処でもいいようなので、壁につけてみることにした。 

 ただそこで問題が起きる。設置の仕方が分からないのだ。さっきの紙を読んでも、使い方は何処にも書かれていない。


「まったく、変な所で不親切ね!まあでも形状的にここを壁側に持ってくるんだと思うんだけど……」


 くの字の金属の一方は真っ平らな金属が付けられていて、反対側は穴が開いている。そしてその平らな金属が付いている側に取っ手みたいなのが付いている形状だ。 

 たぶん穴の開いている方から水が出てくると思うから、平らな面を壁につけてみる。


 すると手を離してもびくともしなくなり、壁に完全にくっついてしまったみたいだった。それと同時に取っ手の上にステータスのと同じ見た目の半透明の板が現れる。


「ここで出す水の設定をするのね。ええと、水の種類はまずは普通の水がいいから『水』よね。温度は、冷たくしてみようかしらね。ここを押すと数字が下がるから、いっそ限界まで下げてみましょう『0』と。単位は『℃』って書いてあるけど、見たこと無いわね。とりあえず後で調べてみましょう。それから軟水と硬水って、よく分からないから標準設定にしましょうか……これで設定は終わりよね」


 後は恐らくこの取っ手を捻れば水が出てくるはず。そう思って取っ手を回してみると、思った通り水が出てきた。下にカップを置いて受け止めるが、カップに入った傍から水が凍っていくのである。


「ちょっ、なんで凍るのよ!?ああ、カップから零れる!いったん止めなきゃ!?」


 取っ手を捻って水を止める。しかし時すでに遅く、カップの中とその周りには氷が小山の様に積まれていた。さらに今は夏で家の中でもそれなりの熱い。なので、次々と氷が解けて辺りが水びだしになっていく。


「……明日どうにかしましょう。今はそれよりもこっちの検証が先よ」


 あとの処理は明日の自分に任せることにして、蛇口を取り外して場所を隣に移す。ちなみに取り外すときは外そうと思って引っ張れば、案外簡単に外すことが出来た。


「失敗失敗、さっきのは温度が低すぎたのね。じゃあ温度を、『5』ぐらいまで上げてみましょう。その他の設定はさっきと同じにして……というか取り外すと設定もリセットされるのね」


 設定を調整してから下にカップを構え、取っ手を捻る。すると水は出てきたが、カップで受け止めてもさっきと同じように凍ることは無かった。カップが一杯になるギリギリで水を止める。

 手から伝わってくるカップの温度がどんどん冷えていく。という事は確かに冷たい水が出てきているようだ。


「それにしてもこれ、飲めるのかしら……何事もチャレンジよね!」


 少し考えてから飲んでみることにした。


 ……ちゃんと考えたわよ?


 念の為棚からポーションを手元に持ってきておく。これは前に家の倉庫から貰って来たものだ。下級だけど、お腹を壊したぐらいならこれで十分なはず。


「いざっ……――あ、美味しい」


 まさかとは思ったけど再度飲んでみるが、やっぱり普段飲んでいる水よりも遥かに美味しいのだ。夏の暑い夜に冷たい水を飲んでいる事も影響しているのかもしれない。比べてみようと思い今度は温度を『常温』の設定にしてもう一度飲んでみる。


「やっぱり美味しいわ。凄いわね、これ!」


 興味が爆発したあたしは、どこでも蛇口で色々な設定を試してみた。主に弄ったのは水の種類と硬水・軟水の設定だ。


「なるほど『炭酸水』はパチパチする水で『海水』はしょっぱい水ってことね。海の水は塩の味がするって本に書いてあったけど、あれって本当だったのね!それに硬水と軟水は水の舌触りとか、味に直結する感じなのね。あたしが普段飲んでるのは種類的には軟水にあたる、と。硬水はあまり飲みなれないけど、これはこれで面白いわね!」


 まさか正体不明のスキルからこんな素敵なものを手に入れることが出来るなんて!


「確か無料で10連っていうのがまだ残っていたわよね!」


 自分のステータスを開きガチャガチャを起動する。そして、初回特典10連無料ガチャガチャに触れる。するとさっきと同じように声が聞こえてきた。


『初回特典10連無料ガチャガチャが選択されました。

……

初回特典大サービス!ガチャガチャを10回無料で回すことが出来ます!出現するものは完全にランダム!何が出るかは回してみてからのお楽しみ!

え?10回だけじゃ足りないって?そんなあなたに朗報です!初心者応援キャンペーンの期間中なら、な、な、なんと毎日一回無料10連ガチャガチャを回すことが出来ます!この期間に沢山ガチャガチャを回してライバルに差をつけろ!

なお初心者応援キャンペーンはあと7日です!

……

ガチャガチャを出現させます』


「やったあぁ!!――はっ、あたしの体内時計が正しければあと少しで日付が変わる!迷っている暇は無い!回すしかない!」


 元々迷うつもりもなかったけれど!


 出てきた箱の取っ手をすぐに回す。さっきは一回回すと取っ手が動かなくなったけど、今回はまだ回せる感触がある。これは10回やれってことよね。


 ガラコンッ ガラコンッ ガラコンッ ガラコンッ ガラコンッ

 ガラコンッ ガラコンッ ガラコンッ ガラコンッ ガラコンッ


 10個のカプセルを得ることが出来た。色の割合は、緑が1つ、赤が1つ、青が2つ、銀色が3つ、金色が1つ、カラフルな虹色が1つ、そして全体が真っ黒なのが1つだ。 

 とりあえずさっき凄いアイテムの出てきた銀色と、それより凄そうな金色と虹色、そして何とも怪しい黒いカプセルは残しておく。特に黒いのは開けるのを躊躇してしまうぐらいには怪しい。


 それじゃあ赤、緑、青のカプセルからどんどん開けていこう!!


いかがでしたでしょうか?

面白い、続いて欲しい、先を読みたい

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[一言] すっげー変な口調 男が無理して女の口調で話してるかのような違和感があるなっ
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