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22 仮の夫【クリス視点】

 『ウソつき』と呟いたアルデラは今にも泣きそうな顔をしていた。


 かまれた指がドクドクと脈打ち熱を持っている。


「か、まれた?」


 何が起こったのか、とっさに理解できなかった。


 まず初めに、アルデラに『ブレスレットを直接つけたい』と言われて、動揺してしまった。アクセサリーをつけ合うのは仲の良い夫婦間では良くあることだが、アルデラとそれをしていいのか迷ってしまった。


 迷っている間にアルデラが近づいてきた。気がつけば、綺麗な黒髪や神秘的な黒い瞳に見とれていた。


 ブレスレットをつけてもらいながら、少しうつむくアルデラを見て『まつ毛まで黒いのか』と、ぼんやりそんなことを思ったことを覚えている。


(綺麗だ)


 そう思ったとたんに激しい罪悪感に襲われた。最愛の妻を亡くした自分が別の女性を美しいと思ってしまった。


(これは妻への裏切りだ。冒涜だ)


 アルデラが顔を上げた。とても嬉しそうに「できましたよ、お兄様」と言われたとたんに、どうしようもなく腹が立った。


 すると、なぜかバチッと激しい音がしてブレスレットが弾け飛んだ。床に落ちたブレスレットを見て、気がついてはいけないことに気がついてしまった。


(私は……アルデラに兄と思われたくないのか?)


 では、どう思われたいのか?


 その先は決して考えてはいけない。答えを出してはいけない。だから、部屋から出て行く泣きそうな顔をしたアルデラを呼び止めなかった。


 クリスは立ち上がると床に落ちたブレスレットを拾った。


「アルデラ」


 そっと名を呼ぶと噛まれた指がジクジクと痛んだ。

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