9 相棒を助け出せ
オルテッドとフェイクは、魔導具の保管された部屋へと向かうと、扉の鍵を脆弱の付与魔法を使い、中へと侵入した。
幸いにも部屋にはワルイドの部下はおらず、部屋の隅にオルテッド達の魔導具と小さなハープが乱雑に置かれていた。
オルテッドは自身のボウガン型魔導具を腕に装着した。
(大事な師匠の形見だ。もう奪われないようにしないとな)
これでまともに魔法を使える、とオルテッドは安堵した。
一方のフェイクも自身の魔導具とハープが無事な事に喜んでいた。
「良かった…。何もなくて」
フェイクは自身の腕輪型魔導具を装着し、ハープに傷が入っていないか確認していた。
オルテッドはフェイクに尋ねる。
「そのハープ、大事なものなのか」
「えぇ。ある人からもらったの。これは私の命よりも大事だわ」
フェイクはをまるで子猫を抱えるかのように、ぎゅっと腕で抱いた。
初対面の自信たっぷりな時と違う彼女の仕草が印象的だった。
「よし。魔導具を取り返したし、シルヴィを助けに行くぞ」
「待って。部屋の奥に誰かいる。それも複数」
フェイクの言う通り、部屋の奥にはぐったりとした様子の男たちが大勢いた。
おそらく、ワルイドによって連れてこられたハンター達だろう。
みんな虚ろな目をしており、明らかに異常だという事がわかった。
オルテッドはその中に比較的意識ぐはっきりしている男に話しかけた。
「おい、しっかりしろ。大丈夫か」
「うぅ……。あんたは誰だ」
「オルテッドだ。敵じゃない、何があった」
男は朦朧としながらも答えた。
「ここにいる連中はみんな、薬の実験のためにあいつらに拐われたんだ」
「薬って、どういったものだ?」
「超力剤っていう特殊な薬さ。それを使用した者は魔力の増大、身体能力が大幅に向上するが、その反面、思考能力の大幅な低下を起こし、言う事を聞くだけの道具になっちまうのさ」
「……ひどいわね。この有り様は」
フェイクはハンター達の酷い姿を見て、顔をしかめた。
これで、ワルイドの目的がわかった。
ハンター達を拐っていたのも、自身に都合のいい手駒をつくるためだったのだ。
「フェイク、ここの連中を逃してやってくれないか。俺はシルヴィを助けに行く」
「ひとりで行く気? 無茶よ」
「時間がないんだ。頼む」
「……わかった。私もこの人達を逃したら、私もシルヴィを助けに行くわ」
フェイクは瞼閉じてを指をパチンと鳴らした。
先程使った位置が分かる魔法だろう。
「シルヴィは、2階の階段を駆け上がった先の部屋にいるわ」
「すまない」
オルテッドはフェイクに後を任せると、シルヴィの元へ向かった。
階段を駆け上がると、シルヴィがいるはずの部屋が見える、部屋の前には見張りがいる様子はなかった。
オルテッドはしゅういを警戒しながら、部屋の扉のドアノブを付与魔法で破壊した。
部屋に入ると、両手を椅子に手錠で縛られたシルヴィをいた。
動きを封じられているものの無事な様子に、胸を撫で下ろす。
「オル……」
「シルヴィ、大丈夫か。助けにきたぞ!」
オルテッドの姿を見たシルヴィは、安堵からか笑いかけるも、何かを見て声を張り上げた。
「オル、後ろ!」
シルヴィが叫んだ直後、何かがオルテッドの左肩に命中し赤い血が噴き出した。
「がぁっ……」
「よぅ、元気そうだな。オルテッド」
オルテッドが振りむくと、その意外な人物に目を見開いた。
そこにいたのは、かつてオルテッドを殺そうとしたクロークだった。