⑦おどおどする15分間
【乗車から0分】
観覧車に彼女と二人で乗ったのだが、絶叫系も高いところも苦手でメリーゴーラウンドさえも乗ることを躊躇うくらい怖がりな彼女が、観覧車に無理して乗ったせいで乗車直後に気絶してしまい今、足元にいる。
【乗車から2分】
彼女はたぶん気絶しているだけで、体調のどこを探しても悪い部分なんて見つからないと思うから特に何かをしてあげなくちゃとかは思ってないが、残りの時間の有効な使い方が分からないし、観覧車で横たわるのが世の中で一番怖いかもと思ってしまっていてもどうすることも出来ない。
【乗車から4分】
彼氏と一緒に観覧車に乗って何気ない話をするのが今の一番の夢だって彼女が何度も僕に言っていたが、一緒には乗ったもののずっと気絶したままでまだ一言も喋れていないので、高いところが嫌いだったら無理に乗らなくてもよかったのではと思ってしまった。
【乗車から7分】
彼女を揺すっても彼女の名前を呼んでも全然起きる気配がないので、死んでいないか再度確認したけど彼女は確かに息をしていて、重病ではないことは明らかで、よく彼女の顔を見てみると彼女はとても幸せそうに気絶していた。
【乗車から10分】
足元には彼女がずっと横たわっているので足は座席の上に置くしかなく、少し窮屈な体制でずっといるが彼女よりは全然キツくなんかなくて、非常ボタンはあるけどそんなに非常でもないし、監視カメラとか付いてるのかな?と見回してみたが、もし付いていたとしても係の人には女性がただ床で寝てると思われると思うので特にそのようなことは気にしないでおく。
【乗車から13分】
観覧車に乗ってから僕が見たものは、ほぼ床で横たわっている彼女だけで、外の景色なんて全然見てなくて、窓から顔が出てるのは僕だけなので外から見たら一人で観覧車に乗っている寂しい人だと思う人もいるかもしれないのだが、今は彼女を抱えて素早く降りないともう一周になるかもしれないので何か方法を考えるしかない。
【乗車から15分】
僕たちは無事二周目に突入することなく観覧車を降り、下に着く直前で彼女が目を覚まして80キロの彼女をお姫様だっこして降りなくて済んだのでホッとしていて、彼女は乗ってすぐに気絶したのであまり怖い思いをすることなく観覧車での記憶も全くなかったが、彼氏と一緒に観覧車に乗るという夢を叶えられたことをとてもとても喜んでいた。