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⑩悩みの15分間

【乗車から0分】

幼稚園の頃から仲がいい幼馴染みの大親友の今年から女子高生になった娘さんと二人きりで観覧車という狭い閉ざされた空間へと乗り込むと、その娘さんは僕に、私は恵まれてない、悪いことしか起こらない、という内容の悩みを打ち明けてきた。


【乗車から2分】

観覧車はずっと低いところにいるわけではなく必ず高いところへも行く、今はまだ観覧車に乗ったばかりで低いところを動いているが、段々と高いところへと進んで行っている、人生も同じで低いところもあれば必ず高いところもある、と僕は彼女に向かって優しく言った。


【乗車から4分】

この観覧車はゆっくりと静かに動いているが着実に上へと上がっていっている、だからこの観覧車みたいに急がずに焦らずにゆっくりとゆっくりと時間をかけてあなたも上がっていけばいい、と僕は彼女に向かって笑顔で言った。


【乗車から8分】

観覧車の僕たち二人が乗っているゴンドラが頂上に達してどのゴンドラよりも上になったとき僕は彼女に向かって、僕たちが今は周りの人々の中で一番高い、そう思うだけでも幸せな気持ちになるだろう?何事もポジティブに考えなくちゃね、と優しく言った。


【乗車から10分】

ゴンドラの位置が下がり、彼女に対する親しみが上がってきた観覧車内で僕は彼女に向かって、観覧車は観覧するだけのものではない、人と人をより親密にしてくれたりもする、笑わせて和ませてくれたりもする、恐怖を煽ってくれたりもする、全てのことを幅広く考えてみなくちゃね、と言葉を投げ掛けた。


【乗車から13分】

観覧車のゴンドラはすべて一定の速度で進んでいる、少し早く進むゴンドラも少し遅れてしまうゴンドラもなく全く同じスピードで進んでいる、人々もみんな同じ速度で進んでいて、みんな進んだ分だけのたくさんの悩みを抱えて生きている、みんな同じように様々なことで悩んでいる、だからあなたもみんなと同じってことだ、と僕は彼女に笑いかける。


【乗車から15分】

観覧車にいる時間がもうすぐ終わり、彼女と二人だけの時間ももうすぐ終わりを告げるというときに彼女は僕に突然の熱い抱擁をし、降りた直後からは僕の手を握ってきて、端から見たら親子と思えるほどで、気分も親子へと変わっていき、今まで彼女に言った言葉が彼女だけでなく恋に臆病な自分にもズシンと響き続けていた。

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