①もどかしい15分間
【乗車から0分】
観覧車に乗り込んで、座席に最近仲良くなった女友達と向かい合わせで座って間もなく、女友達がキス顔で構え出して、どうしていいのか分からなくなり言葉を失い固まってしまった。
【乗車から2分】
女友達のキス顔がまだ続いていて、女友達は言葉を発することなく、目を開けることなく、前よりも少し唇が突き出たのではと思うくらいのキス顔をしていて、本気が冗談かは未だに分からない。
【乗車から4分】
元々顔が可愛い女友達だからキス顔をするとさらに可愛く感じるのだが、女友達としてずっと接していたいしキスをしてしまった後にどんな悲劇が待っているか分からないので、とりあえず観覧車に関する話題を振ることにする。
【乗車から7分】
立て続けに質問をしても、女友達はそれに答えようともせずにずっと目を閉じていて、冗談であって欲しいと思ったが冗談であったとしても冗談は冗談で怖いので、はやくこの状況を脱却したい。
【乗車から10分】
はやくキスをしてしまった方が残りの観覧車ライフを有意義に過ごせるのではないかと思ったが、顔を近付けると「んー」というキスがしたい時に発するような甘えた声を小さく発していて思いとどまった。
【乗車から13分】
どうすることも出来ず、外の景色を眺めるということに逃げて、大好きだがキスはするべきではないと思っている女友達に背を向けていたのだが、気配を感じて振り返ると女友達は薄目を開けて迫ってきていた。
【乗車から15分】
観覧車から降りると、今までの密室での出来事が嘘のように女友達が15分前までのどこにでもいる女性に戻っていて、15分振りに見る女友達の普通の顔と唇に残る余韻に怖いほどの新鮮さを感じた。