俺と甘党とわんわんお
シリアス…になってるといいなぁ…
文体が怖い…優しい目で読んでください…!
今日も今日とて相変わらず、甘原少女のデスクは機能性と趣味が入り混じって、無秩序だ。
上質な万年筆の横にはじゃがりこが当然の顔をして並んでおり、書きなぐりまみれのメモ片の奥には、トランプタワーのような要領でポッキーでタワーが築かれている。
そしてたった今、そのポッキータワーは建築主の手により崩れるか崩れないかギリギリの所まで引き抜かれ食べられていた。
その机のどこか不安定な所は、そのままその主を表しているようで、時折不安になる。
本日の朝食イングリッシュマフィンプレートを下げていると、けたたましく黒電話が鳴り出した。
ここに来て早々の頃は、黒電話の呼び出し音に逐一驚いていたものだが、慣れとは恐ろしいもので、今では他の電話の呼び出し音が小さく思える始末だ。
黒電話の受話器を取って応答する。
すっかり慣れたもので、相手の要件をするすると聞き出すことができた。
「千里、依頼は家で連続して起きる謎の不幸についてだそうで…」
「うげっ」
露骨に嫌そうな顔をする。
現場に着くどころか、大まかな依頼内容を聞いただけでこんな反応をするのは初めてだ。
「どうしたんですか?」
「どーしたもこーしたも…って、ああ。そっか、知らないのか…」
1人でなにか言いかけて1人で得心いったようで、甘原少女はブレザーに着替え始めた。
慌てて後ろを向いた俺に、甘原少女はいつもより少し低い声でこう言った。
「“この手”のはよくあるからね。社会勉強みたいな気持ちでついて来て」
依頼主の家の近くまで来たところで、甘原少女はようやく今回の妖怪について話し出した。
「今回のは要件だけで分かる。狗神だよ」
「狗神…たしか呪いの神でしたよね?」
「うん。狗神に憑かれてる家系は憑き物筋って言って、祖母から母、母から娘…と女から女へと受け継がれる」
「成る程、偶然狗神に憑かれたせいでこんな不幸が…」
「偶然じゃない」
俺の推察を甘原少女は食い気味に否定する。
「偶然じゃない…じゃあ誰かに憑けられた?」
「それも違う」
もう一つ、有り得るであろう選択肢を挙げても、甘原少女は否定した。
偶然でも、他人から憑けられた訳でもない。
受け継いだものなら、原因は分かっているのだから、【謎】の不幸などと言わずにストレートに【狗神】と指摘して依頼してくるはず。
完全に思考がドツボにハマった俺を一瞥して全てを察し、甘原少女はアッサリと正解を言った。
「自分らで憑けたんだよ」
「…はぁ?」
しれっと告げられた予想外の解答に、俺は数秒頭がフリーズする。
結局正解を導き出せず、甘原少女に正解を求めた。
「…なんでですか?」
「…人の行動原理は単純なものならば比較的絞れる。私怨と愛情と…」
「利益、ですかね?」
「That’ light」
「いやいや、でも!利益になんてならないんじゃ…」
「なるんだよ」
甘原少女は俺の方を向いてニッコリと作り笑顔を貼り付けてから解説を始める。
「狗神の力が弱くて制御下に置けているうちは、狗神の力で幸福を得られる。
まあこれは自分の代わりに他人が不幸になるんだけど」
甘原少女の笑顔は揺らがない。
まるで本のシナリオを読み上げるナレーターのように、不要な感情の一切を切り捨てて解説する。
「力の弱い狗神…?それに、自分達で憑ける…って、どうやって…」
「ああそうだ、言ってなかったね?狗神は、【人が造れる神様】なの」
振り向きざまに放たれた言葉に動揺する。人に、造れる。その言葉が頭の中を逡巡した。
「作り方は比較的簡単。
何か…犬をひたすら虐めて虐めて虐めて…虐め抜いた果てに無残に殺すか、真っ直ぐに愛し愛されて生きてきた犬の首を切り落として人通りの多いところに埋めてたくさんの人に踏ませるか……ね。
そしたらあとは簡単。女がそこに立ってれば、勝手に憑いてくれる」
「そ、ん、な…そん、なの」
「そうね、酷すぎる。でも大事なのはそれ。【酷い】ってゆう感情。その犬の死体の中でその『酷い』ってゆう感情や、つらみ痛み、怨み…そんなのがドロドロに煮詰まって凝り固まって狗神になる」
頭の中に浮かんだあまりにも凄惨な想像の光景に、吐き気が起こる。
利益のために一つの命を踏みにじり続ける行為。
酷い、なんて言葉で済まされていいものではない。
「で、ここからがmade in 一般人の狗神の困ったちゃんな所」
(いやそんなmade in Japanみたいなノリで言われましても)
「狗神の成長って止まらないのよね。ほら特に、2番目の方法とか死体は狗神になってもずっと踏まれてる訳だし」
「え、待って、それじゃあ制御が」
「そ、制御できなくなるの」
踊るように軽やかなステップで俺の数歩前まで出てから、甘原少女は軽やかなターンでこちらを見つめる。
しかし行動と裏腹に、彼女の瞳は苛烈なほど煌々と光っている。
「制御できなくなれば勿論不幸が降りかかってくる。素人だから狗神退治の方法も知らない。だから日常的に裏探偵に“こーゆー依頼”が来るの」
ぴたりと甘原少女の足が止まる。
彼女の言いたい事はなんとなくわかる。
今回は妖怪…いや、神ができる段階から人の手が、欲望が絡んでいる。
しかも神は等価交換、協力体制などではない。虐げられ、利用されてきた。
多分今回は、最悪の場合、死ぬ可能性が高い、という事だろう。
「行きましょう」
一言そう言った。
戻るつもりはないという意思表示。
甘原少女は困った目をしつつ少しだけ口端を上げて、依頼主の家へと歩き出した。
依頼主の家に着き、甘原少女がインターホンを鳴らす。
ピンポン♪ピンポーン♪と軽快なチャイムが数回鳴ったところで、家の中からドタドタと重く激しい足音が忙しなくして、勢い良く玄関のドアが開かれた。
そのあまりのドアの勢いに対応しきれず、珍しく甘原少女が鼻にドアを激突させて悶絶している。
「まあまあまあ!よくぞ!いらして下さいました!どうぞ!中へ!!」
依頼主であろう女性が甘原少女に気づきもせず俺の手を取り、ぐいぐいと中へ引っ張る。慌てて甘原少女を回収し、どうにか2人で家の中に入った。
「よく来てくれました!首を亀のようにながーーーーくして待ってました!!」
やたらと語調の強い、人より少し…多少…かなり。かなぁぁりふくよかな依頼主の女性は、俺の手を取って激しくブンブンと上下に振りまくる。
その横で甘原少女は少しふくれっ面になりながら、黙々とオロナインを赤くなった鼻に塗っている。
依頼主はもう完全に俺を探偵だと思っているらしく、甘原少女見て不思議そうな顔をした。
「あの…なんでこんな鈍臭そうな子供を連れてきて…ああ!助手か雑用ですよね!」
(依頼主さん、その鈍臭そうな子供が貴方が首をながーーーーくして待っていた探偵です…)
ちらっと何気なく甘原少女の方に目をやると、絵文字で笑顔を作るか広辞苑で笑顔を引くとこうなるんだろうな、というレベルで綺麗な笑顔を貼り付けていた。
しかし、後ろのオーラが切々と怒りを訴えてきている。
(怖あああ…)
「今日は。“私が”依頼された探偵、こちらは探偵見習いです。改めて、ご用件をお聞きしてよろしいでしょうか?」
(めっちゃ“私が”を強調した…)
それでも営業スマイルが剥げていないのは流石である。
面の皮が厚いのもここまで徹底すると技術の一環だ。
「まあ!そうでしたか!!」
そして依頼主は軽く謝罪を述べてまた本題へと戻る。
この人の鋼の精神も相当なものだ。
もしくは単に鈍いのか。
依頼主の口からもたらされた情報は、電話で話されたものとまるで同じだった。
本当に理由や心当たりがまるで無いのだろうか。
《おかしい》
(うわなんだこれ!?)
甘原少女の声が頭の中に直接響く。
《ちょっとだけ君に声を直接届けてるだけ。気にしないで》
(気になりますよ!!)
《そんなことより》
(そんなことぉ!?)
《良いから!依頼主を見る!》
バシンと背中を乱暴に叩かれると、妖怪関連のものも『見』えるようになる。
そして声を出しかけた瞬間、甘原少女に右足を踏み抜かれた。
「〜〜〜ッ!!」
痛みと驚愕の同時攻撃に顔をしかめる。
依頼主の体のあちこちに、狗神の呪いが纏わりついていた。
黒い霧か靄か…そんな感じの狗神の呪いが、依頼主の真珠のネックレスやべっ甲のバレッタに纏わり付いている。
《おかしいと思わない?》
甘原少女がそう問いかける。
(何がですか?)
《依頼主が綺麗すぎる。呪いがほとんど纏わり付いてない》
(え?がっつり纏わり付いてませんか?)
またもや右足を踏み抜かれ、さらにはローファーのかかとでグリグリと追い討ちをかけられる。
《それは装飾品に付いてるだけ。依頼主本人には付いてないでしょ?》
(え?…あ、本当だ)
《それに、狗神が憑いてるならもっと呪いが纏わり付いてるはずよ。
あと切り傷も付いてるはず。狗神憑きにしては綺麗すぎるのよ》
甘原少女が露骨な程苛ついている。
口調が乱雑になりつつあった。
そして、長時間黙り込んでいる俺たちを見かねて、依頼主が恐る恐る声を掛けてくる。
「あの…どうしました?」
俺は思考の海に沈んだ甘原少女の代わりに、推理をしているだけという旨を伝えてから、自分も思考を逡巡し始める。
甘原少女とは出来るだけ違う視点、違う思考回路を心がけて。
玄人と素人。経験豊富と経験皆無。
俺ににある長所といえば柔軟さ。
【こちら】側の常識もセオリーも知らない俺。
逆を言えば、先入観も思い込みもない。
全てに全神経を傾けて注意深く見なければ追いつけないから、予想外の発見と着眼点を持つという事。
最初は嫌がらせか何かかと思っていた、甘原少女の『必要最低限のことしか教えない』というスタンスは、俺の長所を殺さないための行為だと最近になって気づいた。
(王道なら甘原少女に任せればいい。
……俺はそれ以外に特化する!)
思考を再開する。
甘原少女の説明をもう一度頭の中で再生し現状とすり合わせる。
人の造る神。弱い時はもたらされる幸福。祖母から母、母から娘へと受け継がれる厄災。
受け継ぐ。この依頼主は狗神に憑かれたにしては綺麗すぎる。
まるで恩恵のみ受けたかのように、装飾品にだけ呪いが纏わり付いている。
家を見渡せば、そこら中に黒い靄が漂っている。
狗神憑きがこの家にいることは確実。
受け継ぎ。
祖母から母。母から娘。
けど、依頼主は狗神に憑かれていない。
祖母から母。母から娘。女から女。
受け継ぎ……母から娘………娘?
何か引っかかる。
「この家に、娘さんはいますか?」
「?ええ、いますけれど…」
俺の突拍子もない質問に、依頼主は戸惑いながらも答えた。
その答えを聞いた瞬間、俺の中で何かのピースがはまった。
「……そうか…!」
小声でそう呟くと甘原少女が反応した。
《どうしたの?》
また直接頭に語りかけてくる。
これは好都合と、俺は口にして音に変えるよりも遥かに速い速度でまくしたてた。
(娘さんに憑いてるんだ!)
《どういうこと?依頼主には狗神は憑いた事がない。受け継がれる筈がない》
(受け継いでないんだよ!)
《は?…まさか!》
(そう!受け継いでない、つまり娘さんが初代なんだ。それなら母親を介さず娘に憑いてもおかしくない!)
《成る程ね…その発想はなかったわ…》
甘原少女が勢い良く立ち上がる。
「娘さんに会わせていただいて構いませんか?」
依頼主は快諾、娘の部屋の前まで俺たちを案内した。
部屋の前に立ち、数回ノックをして確認するが、応答がない。
如何したものかと思った瞬間に、背後から声がした。
「あなたたち、だあれ?」
蚊の鳴くような声、をそのまま表したらこうなるのだろうと納得する程細い声だった。
甘原少女が間髪入れずに俺の背を叩き、俺がその声の方向を向く頃には『見』ることは出来なくなっていた。
(どうして…?)
疑問に思ったが、今はそれどころではない。声の方を向くと、幼い女の子が立っていた。
「あなたたち…遊びに来てくれたのね?」
そう言うやいなや、女の子は俺と甘原少女を半ば強引に自分の部屋に引きずり込んだ。
◇◇◇
目の前の光景に久し振りに不快感を覚える。
もう何回も見てきた光景だが、狗神憑きはやはり見ていて気持ちの良いものではない。
依頼主の娘。
それを取り巻くように、飲み込むように、黒い靄が絶えず発生していて、視界はほぼ真っ黒。
依頼主の娘と自分、そして田中しかまともに見えない。
そして、その靄の中心に浮かぶのは犬の生首。狗神の本体。
ほぼ反射で視界補助を切ったが、切って正解だろう。
きっと彼にこの光景は耐えられない。
私には引っかかりがあった。
それがこの娘を見て全て解けた。
事前情報でこの血筋は特殊な家系でも無ければ、家の誰かが力に目覚めたわけでも専門の知識もないことは分かっていた。
もし狗神を憑けたとしても、制御できるのは多分最初の数ヶ月。
すぐに家系全体に命に関わるほどの厄災が降りかかるはず。
なのに、依頼主はピンピンしているし、命の危険も感じていないようだった。
目の前の少女、身体中に切り傷があるし、栄養失調のようにガリガリだ。
これを見て理解した。
この少女は、自ら狗神がもたらす厄災の全てを請け負い、恩恵だけを母に差し出していたのだろう。
そうしても狗神の厄災が抑えきれなくなってようやく母親に影響が及び始め、私達が呼ばれたのだろう。
「単刀直入に言うわ。狗神を手放しなさい」
「…え?」
少女が固まる。
そしてわなわなと震えだした。
「嫌。不幸だけ取り除いて…!」
「無理よ。不幸を取り除きたいなら、狗神ごとじゃないと不可能よ」
「嫌…嫌!嫌!!嫌!!!」
凄まじい勢いで靄が生産され、視界の大半が無効化される。
(やっぱりね…)
これが、裏探偵がこの手の依頼を嫌がる理由。
人は一度楽をして幸せを手に入れてしまうと手放すことを拒否する。
味をしめてしまうのだ。まるで麻薬。
狗神を残し、不幸のみを取り除くのは不可能。だって狗神そのものが呪いの神、呪いそのものだから。
泥沼化してしまうのだ。
「不幸が嫌なら狗神を捨てなさい」
「嫌!嫌ぁ!ポチは離さない!」
そして少女は急に笑い出した。
「ふふ…ふふふ…お姉ちゃん達なんか居なくなれ…ポチ!見ててね!ポチの力で追い払うから!!」
「!!」
黒い靄が刃物のように鋭くなって私達に襲いかかる。
「チっ!必殺☆ちーちゃん特製札!!【防壁】!」
田中を乱暴に引き寄せて、ちーちゃんお手製の札を儀式用の短剣で刺して固定し防壁を展開する。
靄でできた刃が防壁にぶつかって弾けた。
制御できないはずなのに狗神の力を行使している。
そんな異常事態に一瞬ついていけなかった。
まるで狗神が少女の願いに応じたかのように。
「ポチ……?」
そう呟いた田中が起き上がる。
「起き上がるな!首が飛ぶよ!」
「べぶらっ!?」
足払いをかけて強引に姿勢を崩し低くする。
奇声の後、床と鼻が激しく衝突する音がした。
しかし今は構っていられない。
予想以上に狗神が育っている。
展開した防壁を削り刃が頬をかすめ、生温かいものが頬を滑る。
「千里、千里!」
「何!今余裕無いんだけど!?」
「狗神を元の犬に戻せないかな!?」
「何アホ言ってんの!?無理に決まってるでしょ!?
術的には可能だけど、術の予備動作の時にすっぱり胴体と泣き別れになるわ!」
「そこをどうにか!」
「…どうしてそんなこと言い出したの」
「さっきの台詞。【ポチ】って…あの子の狗神、その前の姿…生前の犬の名前じゃないかと思って」
「だから…何?」
「あの子、狗神を手放したくないわけじゃなくて、家族と離れたくないだけなんじゃないかって」
その一言で、急激に頭がクールダウンする。
「欲しいのは、狗神じゃなく、家族…」
駄目だ。今回私は余裕がなさすぎてまともに物事を見れていなかった。
そうだ、狗神を作る方法の一つ。愛し愛されて生きてきた犬の首の切断、そして埋める。
この狗神がその方法でできたとしたなら、さっきの少女の言動、何故か行使できた狗神の力、全て説明がつく。
(狗神も、憑かれた本人も、離れたくないのか。お互いから)
「けど、出来る出来ないは別。さっきも言ったけど、術の予備動作してるときに泣き別れになる」
「なら、俺が、彼女を止めてみせます。その間に!」
「意思は固い…か。良し。その博打乗ってあげる」
「はい!」
「良いこと教えてあげる。茶色のしば犬、首に鈴付きの赤いリボン」
「…はい」
「さあ。大博打といきましょうか?」
「あははははははは!いなくなれ!!」
娘さんの大絶叫に意を介さず、甘原少女は障壁を消去して床に何かを書き殴り始める。
いくつもの刃が体を掠めるが、甘原少女は無心に書きなぐり続け手を止めない。
俺は娘さんに近づき始める。
娘さんは未だに狂ったように笑い続けている。
「茶色のしば犬、首に鈴付きのリボン」
そう言うと、ピタリと笑い声が止んだ。
「リボン、色は…?」
「色は、赤。そうでしょ?」
そう言うと、少し刃が勢いを無くす。
犬、いや、家族の特徴を言い当てられて反応している。
「見えてるの…?ポチが」
「ううん、俺は見えてない。けど、そこのお姉さんは見える。元にも戻せる」
娘さんは明らかに狼狽した。
嘘か真か、測りかねているのだろう。
「信じない…信じるもんか…!ポチとは離れたくないんだ…っ!」
そう叫んだ娘さんに走り寄って抱きしめる。
「大丈夫。必ず戻してみせる」
安心させるように言い切ると、娘さんの体から力が抜けた。
その瞬間、俺の後ろで術の成功を示す光が爆発した。
その後、狗神は元のしば犬の姿となり、その代わり狗神によってもたらされた全ての恩恵、影響が消え去った。
狗神に変わると言う事実を捻じ曲げた代償らしい。記憶はそのままだが。
その旨を依頼主に説明、甘原少女はかなり逆ギレされていたが、淡々と狗神とは何か、それによってもたらされる恩恵以上の厄災についてを説明。
青くなった依頼主を完全スルーし、娘さんに詫びていた。
「ごめんね…何も知らないまま酷いこと言って」
「私も…殺そうとしてごめんなさい」
(会話が物騒だな。つかやっぱり追い払うんじゃなくて殺そうとしてたのね)
そう思ったが本人に言うのは怖いので墓場まで持っていこうと思う。
帰路について歩きながら俺はこう言った。
「少しは成長しましたかね?」
「成長したね。それにカッコよかったよ?鼻ティッシュさえしてなければ」
「酷っ!?つか鼻ティッシュは千里のせい…」
「あーあー聞こえなーい」
「デザート3週間抜きますよ」
「圧倒的謝罪!誠に申し訳ありませんでした!!」
「迷いなく土下座しないで下さい!」
距離がさらに縮まった気がします。
「投稿が遅れた言い訳をどうぞ?」
『任○堂がわるい』
「なんという責任転嫁」
『あんな神ゲームを生み出した任○堂が悪い』
「それ褒めてるのディスってるの?まあいい処刑の時間だ」
『必殺☆バケツプリン出現の術!』
「ああ!本能的に食べてしまう!」
『はーはっはっは!さらばだ!』