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恋落ちのシルバーアッシュ  作者: ハルカ カズラ
5/7

5.埃一つも逃さずに


「お嬢様、ダージリンをお淹れしました」


「ありがとう、ヴィリエ」


 茶会の催しから数日が経った後、ご当主からなぜかわたくしに従僕を与えられてしまったのですが、彼の正体は未だに掴めておりません。しばらくは様子見といったところでしょうか。


「ヴィリエ様、貴女の袖に埃が付いております。じっとしていてください」


「埃……?」


 ラーティクはわたくしに触れようとしてきている? 何か企んでいるというのですか?


「ラーティク。わたくしにそのような振る舞いは無用。貴方はあなたのことをしなさい」


「……申し訳ございません。では、隣室を磨いて参ります」


 分からないですね。何故、わたくしに近付こうとするのか。お嬢様にはまるで見向きもしていないように感じます。本当にただの従僕とでも?


「ヴィリエ、彼はあなたに献身的なのね。憧れを持ってしまうわ。うふふっ、いいことね!」


「リュドミラ様……わたくしには何のことなのか分かりかねます。何故、あの男はわたくしに近付くというのでしょう?」


「ふふっ。ヴィリエはラーティクのすることが気になるのね?」


「ええ。お嬢様には指一本、触れさせません。従僕である以上、本来はお嬢様のお傍にすら近づけない立場なのです。それが許されているのはわたくしの従僕だからに過ぎないのです。しかし、袖の埃を気にすることなど理解出来ません。彼の目的は何だと言うのでしょう」


「そ、そうではないのよ。き、きっとね、彼はあなたのことが気になるの。立場に関係なく、あなたの近くにいたいんじゃないかしらね。ヴィリエは綺麗ですもの。いつもわたしだけがヴィリエを独り占めしていては、進展も叶わないんじゃないかしら」


「わたくしもお嬢様をずっと、独り占め……お傍に――」


「――失礼致します。ヴィリエ様、お客様が見えられております」


 客? あぁ、また懲りもせずにおいでになられたのでしょうか? 何故お嬢様を執拗に狙うのか、わたくしには理解出来ませんね。今日はどんな形でお出迎えを致すとしましょうか。


「ではお嬢様、わたくしは客人をもてなしに行ってまいります」


「ヴィリエ。無理をしてはダメよ」


「有難きお言葉にございます」


 さて、本日はどのような方々が見えられているのでしょうね。どんな形であれ、お嬢様には近づけさせません。


 いつものようにわたくしは外に出て、客人をもてなすつもりだった……それがどういうことなのでしょうか。わたくしが対する前に、すでに客人たちが地面に寝転がっておいでではないか。


「……あそこにいるのはラーティク? まさか……」


「ヴィリエ様。あなたに危険を及ぼす客人でしたので、私が片付けておきました。褒美を頂けませんか?」


「この方々……あなたが?」


「はい」


「ラーティク……貴方は何者なのです? 害をなす者としてわたくしに仕えましたか?」


 地面に転がっている客人はいつもの顔ばかり。しかも大人数……とても従僕であるラーティクがしたとは思えません。それともやはり偽りの姿とでも?


「俺はヴィリエ様。いや、ヴィリエを守る為に傍に仕える従僕さ。当主様にはそう言われただけだ。あんた、その髪色……綺麗な銀色をしている。惚れてしまう位にな。だが、危険だ。だから俺があんたの傍にいる。それだけのことさ」


「……なるほど。では、ご当主様はラーティク。あなたの力をお認めになられてわたくしに仕えさせたのですか。お嬢様には目もくれず、わたくしを守る為の存在ということですか」


 従僕とは偽り。強さのほどは目で追うことが叶いませんでしたが、この男……油断なりませんね。何故、わたくしにこのような男を付けられたのですか、当主様。……わたくしに何かご不満でもおありなのでしょうか。


「守る……あぁ、そうだ。俺はあんたを守る為だけの存在だ。そういうわけだから、今後もよろしく頼むぜ。ただし、リュドミラ様には内緒にしてくれるとありがたい。あなたなら分かるはずだ。それが賢明だということをな! じゃあ、よろしく頼みます俺のあるじ、ヴィリエ様」


「……くっ」


 どういうおつもりなのだ本当に。わたくしは乱されてはいけないのだ……この心は我が主、リュドミラ様にお捧げするためだけにあるのですから――

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