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恋落ちのシルバーアッシュ  作者: ハルカ カズラ
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3.確固たるガーディアン:後編

「確固たるガーディアン(守護者):後編」


 さて、ある程度の予想はしておりましたが、スノディール家が関与していたのは意外でした。この国において、我が当主様には随分と恩を頂いているはずですが、お嬢様を呼び出す姑息な輩に味方するとは正直、落胆致しました。


 いずれにせよ、お嬢様の身の安全を確保せねばなりませんね。数にして10、20程度の輩が入り込んでいるとなれば、外の方が安全でしょうし。


「女、覚悟は出来たか? それとも不安過ぎて独り言が過ぎたのか?」


「いえ、問題ありません。ところで、そこの方。こちらへ来て頂けないでしょうか?」


 余程腕が立つ方なのか存じませんが、わたくしのすぐ前で構えを見せている大柄な男性。この方に、お嬢様を保護してもらうとしましょう。


「何をほざいている!! 女の言うことなど聞くか」


 大柄な男は勢いよく右の拳で風圧が起こるほどのパンチを繰り出した。


 やれやれ、血の気が荒い御方ですね。無駄と申しましょう。あなたの拳は鋼の様に硬いかと思われますがその分、空を切る時間が余っているようですね。これではいけません。


 大柄な男の周りだけ時が止まっているかのような空間が形成され、ヴィリエの右手は殴りかかって来ている男の腕に軽く手を当てて、男の身体は動きを止めた。


「なっ!? な、何をした女……ソイツをどうするつもりだ?」


「そうですね、彼にはこのままお嬢様を保護していただくとしましょう。彼の身体は鋼のごとし、一切の攻撃を受け付けない術を施しました。彼自身の意識はすでにありません。あるのは、お嬢様をここからお連れして待機していただく意識だけ、ですね」


 男の傍で指をパチンを鳴らすと、彼は操り人形のようにお嬢様を丁重に抱きかかえ、護るように外へと足を向けた。


「ふ、ふざけるなっ! このまま外に出すとでも思ったか? 捕らえろ!!」


「無駄ですよ」


 大柄な男の体は襲い掛かる他の男たちを寄せ付けず、手にしている武器を跳ね返している。そのまま、問題なく、玄関口より外へ出て行った。


「では、続きといきましょうか。我が当主のお嬢様をどうするおつもりで、催しを起こしたかお聞かせ願えますか? その返答如何では、皆さまはしばらく自由の利かない体にして差し上げることも厭わないのですが」


「ひ、1人で何が出来る! 一斉にかかれ!! この女さえいなければこの国を我が当主様に……」


「あぁ、そういうことですか。分かりました……それでは――」


 剣や、木刀を手にした男たちが一斉にヴィリエに襲い掛かる。対して、彼女の足元では陣の様な術が発動し、光を放っている。その上に男たちが足を踏み入れると同時に自由の利かない状態となった。体はおろか、口を動かすことも出来ずにただ、武器を構えたままで動きが止まっている。


「みなさん休憩中のようですが、あなたはどうされますか?」


「女、貴様……何をした?」


「先ほど、お嬢様を抱えて外へ出られた大柄な方。彼が出口へ向かうとみなさんは襲い掛かりましたよね。その時から術は掛けられていたのです。彼の空間には自由縛りの術が発動していました。分かりやすく言えば金縛りのようなものです。これは魔術ではなく、催眠術と申しましょうか。足元の陣に関しましては、錬成を多少、施しておきました」


「くそっ!! な、なんなんだお前は……何故あの小娘を守る? 貴様に何の得があって――」


「損などありません。わたくしはお嬢様を……可憐でお美しいリュドミラ様のお傍にお仕えすることこそが生き甲斐であり、至高の喜びなのです」


「お、覚えてろーーーー!!!」


「この方たちを置いて、逃げ帰ってしまわれるとはしょうのない御方なのですね……。では、わたくしも外へと参りましょうか」


 この方たちはその内に術も解けて、意識を取り戻すことでしょう。その時は、何をしていたのか覚えていないでしょうけど。


 ※ ※ ※


「ご苦労様でした」


 大柄な彼はお嬢様を抱えながら、外で待っていました。風に揺られることなく、体は微動だにしていないまま、保護をしてくれていたようですね。


 お嬢様をわたくしの元へ引き渡し、彼もまた無意識下のまま来た道を歩いて戻って行く。


「ん……んん。あ、あれ? ヴィリエ? ど、どうして外にいるの?」


「お早うございます、お嬢様。いえ、あまりに寝顔が可愛らしかったものですから、外でずっとお傍にいさせて頂いておりました。とても幸せでございました」


「まぁ……そうだったのね。じゃあお茶会はすでにお開きに?」


「左様でございます。そろそろわたくしたちも、お屋敷に戻りましょうか」


「そうね。あら? ヴィリエの髪が跳ねているわ」


「あ、ありがとうございます……恐らく、風に吹かれて乱れたのでしょう。恐れ入ります」


 お嬢様に頭を撫でられているなんて……これは最高のご褒美でしょうか。それにしても、此度の事は捨て置けませんね。ご当主様のお耳に入れておくとしましょうか。


「ヴィリエ。あなたが傍にいてさえくれればわたし、何も望まないわ。あなたはわたしの守護者ですもの」


「有難きお言葉……」


 あのような場を知られることなく過ごされて欲しいものですね。これからもお傍でお守り致します――

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