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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第三章 泣きっ面にペン
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パタつかせて威圧的なアイツ

 


「あ、いえ。私の思い違いであれば、いいん……ですが……その……」



 はっきり物を言えない子だとは、もう分かり切っているが、空腹時にこれはキツい。なんの罰ゲームなのか。精神修行の一貫ですか。


 同時に彼女が何について言及しようとしているのは、その言葉にすらならない断片から察する事も出来るし、俺にも心当たりがある。


 今朝から露骨に避けてた。クリムはその理由を知りたいのだろうか。まさか自分から訊いてくるとは思わなかったけど。


 考える間にも、あのそのと迷子のように質問の目的地に辿り着けないクリムに俺は思わず溜め息を漏らす。



「キシャッ!!」



 あ、はい。ちゃんと聞いてますよ。だから威圧しないで貰えませんかね。


 というか、なんだこれ。ペットを飼うような感覚でいたキィルに脅される飼い主(おれ)というこの図。


その実、コイツは先ほど俺に勝利したメアリーと、更にメアリーに勝利したジョニーより強いという。本当になんだこれ。



「なぁ、クリム。ひとまず飯を食いながらでも――」



 プシッとキィル……キィルさんの口から絹糸が俺の足元に勢いよく撃ち出される。そんな芸等も出来るんですね。



 ……静聴させて頂きます。


ですのでそういった脅すような真似は……あっ。吊るすんですね。無抵抗なのに吊るすんですね?



 キィルさんの行いに何を思ったのか。あのその密度を上げるコミュ障(クリム)を前に、俺は切なげな音で鳴くお腹を撫ですさった。



 ◇ ◇



「も、申し訳ありません。お昼ご飯のお手伝いする筈が、お時間ばかり取らせてしまったようで……」


「あぁ、まぁ……気にするなよ」


 結局、ママ鳥とジョルト師匠が昼食を用意し、俺は念願の飯にありつけることとなった。


 とはいえ、精神的に大人だけどもまだメアリーと一緒に飯を食べるには、なんとなくばつの悪い俺はママ鳥を挟む形で昼食を取ることにした。勿論、ようやく話の半分まで言葉に出来たクリムと変わらず俺を威圧するキィルが一緒なのだが。


「えっと、ですね……」


「つまり、俺がクリムに冷たいと……」



 死にたてぴちぴちのミミズを前に、流石に痺れを切らして俺から要点を纏めた言葉を投げかける。おい、数秒で纏まったぞ。どれだけあのそのえっとで引き延ばしたんだよ。


「あ、いえ。そんな事……」


「キシャッ」


「いや、キィルは力強く頷いてるぞ?」


 完全に第三者でしかないキィルを介し、両手で果実をいじいじしながら怖じ気づくクリムを封殺する。


会話の節目とキィルの目を盗むようにミミズを一口、ばつんと力強い弾力を噛み締めれば微かに甘いクリーミーな味わいが口内に広がり胃袋が歓喜の声を上げた。


「……やっぱり――」


 ミミズうめぇしてる俺を余所に、クリムは両手に持つ果実へ視線を落とし、微かな……本当に微かな声を漏らす。



「私が……天魔だから、なのでしょうか」



 その表情こそ俯いてて見られない。ただ力が籠もっているのか、一層に白さを増す指先と震える声がやけに印象的に見えた。


 天魔? と思わぬ言葉が出て来て、いったい何を差す言葉なのかと首を傾げて、思い出す。



 天魔。



 確か、記憶違いでなければクリムのステータスにあった種族名だったか。



 いや、違うけど?



 そう言い出したくなるけれど、シリアスな雰囲気を前に、精神的大人な俺は聞くだけ聞くことにした。避けてた負い目もあるし……



「この忌まわしい翼が、理由なのでしょうか」



 いや、違うけど?



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