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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第三章 泣きっ面にペン
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パタつかせて腹話術

 

 属性のお話もそこそこに俺は翼を打ち鳴らして昼食の提案、一時保留である。棚上げともいう。


 そんなこんなでようやくの昼食である。早い段階で運良くミルキーワームを掘り出せた俺の隣では、未だに巣を掘るクリムがいた。


「今朝は直ぐに見つかったのに……」



 白い肌に浮かぶ汗を拭う姿はなかなかどうして絵になる。それを肴にミルキーワームを食べる……というのもな。


 気が付けば、ぽっくりご臨終なされたミルキーワームを脇に置いている自分に苦笑し、クェーっとクチバシを天に向ける。



「……ソラ様?」



 願わくば、格好良く一発で決めたい。まぁ、無理かもな。


 ぐさりと巣に突き立つクチバシ。あぐあぐと、ほじくり返せば何かの感触。採取は簡単なんだよな、っと。


 引っ張り上げれば、うねうねと動く赤い奴。まさかのマゼンダワームであった。そして直後にクチバシに巻き付いて……死んだ。



[経験値が上昇しました]



 あ、これは俺が殺ったという判定なの? 圧死? ショック死? まぁ、ラッキーか。赤ミミズにとっては不幸だったがな。


 クリムから向けられる怪訝な視線が何だか気恥ずかしくて――



『……ふたりで探した方が早く見つかるだろ?』



 赤ミミズでクチバシを縛られて喋る事の出来ない俺の代わりと言わんばかりに、その言葉が発せられた。誰か? そんなのはひとり、いや一羽しかいない。


 おい、メアリー。それは俺の声真似のつもりか? 俺はもっとイケメンボイスだぞ。



「そ、それはそうですが。どうか私の方はお気になさらず、ソラ様は先に召し上がってください」



 俺が顔を逸らしたせいか、それともメアリーの声真似が似てたせいか、はたまたクリムがポンコツなだけなのか。まさかの会話続行に、俺が冷えた目で見つめる先にいるメアリーも目を丸くしていた。



 ――どうしよう?



 メアリーの揺れる目が俺に助けを求める。困るなら何故やったのか。そして、赤ミミズがなかなかどうして剥がれない。



『ごほん。そ、そんな事より、なんだ? クリムと一緒に食べた痛っ!!』



 続行すんな。そしてどれだけアドリブ下手だよ。蹴り上げた枝をぺん!と翼で打ち出す。このくらいは出来るようになってるんだぞ。



「わ、わた、私と一緒にだなんて!! そんな、とんでもない……」


「…………」


 今の一部始終を見て尚も気が付かないアホ天使に俺もメアリーも言葉を無くした。


「リム、ごはんとれた!!」

 

「え? あ、ジョニー様、これは……」


 どったどったと賑やかな足音と共に現れたジョニーが、果実の実った枝をクリムの足元に置いた。枝ごと掘ったのか、掘れるものだったかという疑問は最早無意味か。


「ごはん!! そんでもって、おれ、かんがえた!!」


 そんでもって、って。誰だよ変な言葉教えたの。やけに上機嫌なジョニーに俺達はその言葉の続きを待つしかない。



「おれ、おれやめる!!」



 …………?



「ソラ、解読頼む」


「ぷはっ、やっと取れた……なんで俺だよ」


「あ、あのジョニー様? それってどういう事でしょう?」


 一同が疑問符を浮かべる内容に、ジョニーは、うんとうんとと首を捻る、かわいい。



「ジョニー、おれさまになる!!」



 ……あー、なるほど。


 言わんとする事がなんとなく解ったのは、どうやら俺だけだったらしい。メアリー辺りは解るはずなんだが。


「ソ、ソラさん。ジョニーがグレました……!!」


「落ち着けメアリー、素が出てる。それとグレたわけじゃないよ」


「はわっ、そ、そうなのか……!?」


「ソラ様。何か解りましたか?」


「まぁ、なんとなくだけどな……」



 恐らく、俺という一人称が最強を目指す男の子という認識であり、様付けが偉いという認識であるから足してみた。


強いと偉いの足し算というやつだろう。こればかりは、まぁ時間が解決する、だろう……多分。


 という説明をジョニーに聞かれない程度の声量でふたりに話すと、クリムは終始首を傾げていたのに対し、メアリーは納得したように頻りに頷いていた。


 流石は先輩だな。厨二病の。



「おれさま。かっこいい?」


「あぁ、凄くいいと思うぞ。ならば、私がジョニーの二つ名を考えてやろう」



 そうと判ればとメアリー先輩による手解きが始まってしまった。これが彼の黒歴史にならんことを願うばかりだ。


「え、っと……」


「俺達は飯にしようか」


「はい。あ、ジョニー様。有り難くご馳走になりますねー」


「おまかいなくー。あれ? あっ、おかまいなくー。そんでもってメア、かっこいいやつがいい!!」



 まったく、どんどん成長していくな兄者は……

気をつけていかないと。


「まったく、誰から聞いて覚えたのか。迂闊な事は言えんのぅ」


「師匠。何してたんですか?」


 俺の思考とまったく同じ事を呟き、隣に座るジョルト師匠に目を向ければ、若干頬に朱が混じっている。まさか、まだ酒を呑んでたのか。



「うむ。昨夜はベッドしか作れなかったからの――」


 酒精にやられたのは頬だけのようで、しっかりとした目線は俺をロックオン。やばい予感しかしない。


「ソラよ。飯が終わったら屋根を組むぞ」


「……午後から空手の稽古があるの、付き合えないわ」


 通じる筈もないネタで僅かな抵抗を試みる俺に対して、ジョルト師匠は一度だけを目を瞬かせ、言った。



「今日は休め」



 まじか、通じたよ。というか、昼から休めって言ってた癖に働かせるのかよ。まぁ、拒否権もないけど。

なかなか更新出来ずに申し訳ないです。


あ、それと公募落ちました。慣れました。


気を取り直して次頑張ります。

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