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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第三章 泣きっ面にペン
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パタつかせてあわわ

ストックが出来たよ。やったね(ry



 満天の星空の下、まさかのベッドメイキングが始まりを告げる。シーツの張り替えじゃないぞ、ベッドを一から作るんだ。アホかと思うだろ? 俺もそう思う。



「こんな遅くに……あ、あの……わ、私も何か手伝い――」


「すまぬがこれもこやつの修行でな。即席で悪いがこれに掛けて待っておるといい。背もたれは付けておらんが、丁度良かろう」



 流石に時間帯の認識は同じだったらしいクリムさんの言葉を遮って、ジョルト師匠がそれを掲げて見せる。



 おい、いつの間に丸椅子なんて作ったんだよ。少なくとも不貞寝する前はなかったぞ。枝を組むとか匠かよ。



「流石に枝の上で座るのも落ち着かんだろうが慣れるでの。まぁ、星でも見ておるといい。極樹の上で見る星はまた格別じゃぞ?」


「え、あ……」



 師匠から棟梁になったジョルト氏の言葉にクリムさんも納得する所があったらしい。成る程、ここの星空は他より絶景なのか。確かに前世とは比較にならなかったけど。


 促されるまま丸椅子に座って空を見上げるクリムさん。あぁ、背もたれがないのは翼の邪魔になるからか、そこまで気配りが出来てるのにどうして俺への配慮がないのな。



「……私は、メアリーを看ているわね」


「うむ、まぁなんだ、気負うなよ。フェニス」


「あ、マザー」


 蚊帳の外になったママ鳥を思わず呼び止めたはいいのだが、なんというべきか。でも、なんだか声をかけずにはいられなかったのだが……



「ごめんなさいね、ソラ。明日には、ちゃんと元通りに……いえ、もっとちゃんといいお母さんになるから……」



 超 気 ま ず い 。



「えっとマザー。本当にごめんね? おやすみなさい」


「えぇ、それと――」



 自分の子供にはメンタル弱過ぎ疑惑が浮上したママ鳥は、気まずげに視線を俺から外し――



「貴女も、悪かったわね」


「わぁ、本当に星がきれい……」


「ちょっ、クリムさん」


「ふぇ!? 私でしたか!? あっ、はい、こちっ、こちらこそ申し訳ありませんでした!!」



 ……天然かよ。マジで天体観測してたよこの人。


「……フ○ック。やっぱり好きになれないわ」


 ペッ、と唾を吐き捨ててママ鳥はメアリー達の下へと歩いていった。うん、今のは、まぁ……仕方ないよね。でも口が悪いな、子供が真似したらどうするんだよ。



「あわわ……ま、またやってしまいましたか?」


「あぁ、いや気にしないでいいよ」


「ほれ、ソラ。さっさと済ますぞ」


「へいへい。ったく、多分一人で作れるだろうにさ……」



 白銀の翼ごと身体をぷるぷるさせるクリムさんへ適当なフォローを送り、俺はぼやきながら材料集めに離れていく棟梁師匠の下へと歩いていく。あー、やだなー。



 ひゅん、すぺん。



 ファ○ク!! 走ればいいんだろ!! 走れば!!



 ◇ ◇




「……それで、要件はなんですかね?」


 あからさまに皆から離れた場所で枝拾いを始めるジョルト師匠に、俺は思い切ってそんな問いを投げかけた。



「……不自然、じゃったか?」


「やけに事を急いてるなぁ、程度には」



 少なくともクリムの事は、ママ鳥が見ていられないほど苛立っていた事もあるが、ひとまずは解決に向かいかけた流れではある。ジョルト師匠から駄目押しに確認する事もあるまい。


ベッドを作るにしても、だ。特段地べたが硬い訳でもない。むしろうちの素は通気性はもとより多少のクッション性も兼ね備えている。クリムには悪いが一晩くらいは我慢して貰っても構わないだろう、急に来たのはあちらであるわけだしな。


つまり、他の誰かに聞かれたくない話があるくらいには想像が着く。



「ほほっ、流石は愛弟子。流れを読めてきておるの、その調子じゃ」


「その愛弟子に不貞寝させるくらいには浮気性なのは判ってます」


「むぅ、根に持つの。まぁ、儂が若い頃もそんな風だったのかの……」


 ひょいと一際大きな枝を拾い上げながら、ジョルト師匠は感慨深げな声を漏らす。遠回しは嫌いと言いながらこの前置き、余程のことか。



「……メアリーの事、ですか?」



 思い当たる節はそこだ。俺の知らないところでメアリーに何かあったらしいのだが……



「まぁ、違わないこともない……が、今のところお主が気にかけるような話ではない、かも知れんの」


「うーん、ちょっとなんの話か……分かりませんね」


「まぁの。ふむ、この辺りかの。どうじゃ」



 珍しく言葉を濁す師匠が見せてきたのは真っ直ぐに伸びる枝。ベッドのフレームに使えそうかといえば……



「あぁ、外枠にするならそのくらいの長さがいいですかね。でも、あの子は仰向けに寝るのんですか?」


「さてのぉ、男児たるものベストを尽くすべしとは思うが……なるほど仰向けか」


「おや、もしかして好き者です? 師匠も」


「嫌いな男がおるか?」


「ははっ、その質問は不粋ですよ。その辺りも弟子入りさせてくださいよ」


「ふ、馬鹿な奴め。いいだろう」


ちょっとまだ話す気がないのか。取り留めもない会話(じゅんびうんどう)を交わしながら俺たちは傍目から見て和気あいあいとしてるのだろう。


でもこの人、さっきから目が笑ってないんだよ。多分日頃からよく見てなければ分からないくらいに。おかげでこっちも内心ドギマギしてしまう。


「あぁ、師匠、そことその辺りの太い枝なんてどうです? もう二本あれば支柱に使えそうですし、ミルキーワームも縛る分あったかなぁ。羽毛は売るほどあるとして――」


「…………」


「そうか布があれば羽毛布団も作れそうだな。ミルキーワームを編めばマットになりそうですけど、その辺りは後々にでも……となればバネになりそうな物も欲しくなるなぁ」



 いざ動けば思考はノリ気になってくる。まぁ、こういうのも初めてだし楽しいかな。でも、本題はまだと言ったところか――



「ソラよ。正直に答えてくれんか?」


「随分と唐突ですね。いいですよ? なんですか?」



 きっかけがなんだったのか。それでも予想はしていた。早いか遅いかだけ。さて、師匠はいったいどんな話を俺にするのか。



「どうして生まれてさほど年をとっておらん上に鳥のお主が人間のベッドの作り方を知っておる?」


「え? あ、あぁ……」



 まぁ、流石におかしいか。うん、流石におかしいよな。黙ってる必要もないし、そろそろその辺の話をしても――



「お主とメアリーは、この世界の外から来たのではないか?」



 からん。と、小脇に抱えた枝がゆっくりと落ちる。



だが、その言葉よりも、何よりも、俺の心が悲鳴をあげるモノがそこにあった。




 ◇ ◇




 その反応は儂にとって、微かな望みを断つに充分じゃった。目に見えぬ不幸が儂に嘲笑う幻聴さえ聞こえる程に。



「沈黙は、肯定と受け取るぞ」


「っ!? あ、いや。そうなんですが、他にも俺達みたいな奴がいるんですか? いや、確かに二人も送り込んでるなら、可能性は……」



 交わす視線から逃げ出すように顔を背けて半ば独白(いいわけ)地味た告白に、思わず枝を握る手に力が入り、メキリと軋む。


予想はしていた筈であったろうに、この(ザマ)とは。神がいるならば余程、儂のことが憎いらしい。向けるべきモノがない激情の(うね)りに呼吸が浅くなる。



「もう一度問う。お前達は、転生者なのだな?」


「……黙っていた事は申し訳ないですが……でも、信じる以前にその概念があるとは」



 ソラの白く小さき毛玉のような愛らしさが、一瞬だけ不気味に見えそうになる自身に喝を入れ、やり過ごす事が出来た。



「仰る通り、俺は……産まれる以前の記憶、それもこことは別の世界の人間だった記憶があります」


「っ、やはり、そうか……」



 稚児の癖に賢しいと思い、蓋を開ければ人間だったとはな。それも別の世界の。忌まわしき破壊者達の世界から来た侵略者……



「メアリーも、そうなのだな」


「それは、俺の口からは……いや、ここまで言えば普通は判りますか。すいません、ホントちょっと予想外過ぎて色々焦ってるようで、ただなんと言いますか――」



 珍しくどこか早口にまくし立てるような言葉と共に、散々逃げ回っていたソラの目が儂の目を見た。


それはこれまで幾度か見た事のある世界を狂わせた者達の目……ではなく。








「あいつにだけは、"そんな目"をしないでくださいね?」







 儂は、その時のソラの顔を先の短き生涯であれ、忘れる事はないだろう。


 いっそ、星明かりなど無ければ良かった。傷をつけたはずの弱き儂が傷付けられた女子供のような悲鳴を心で叫ぶ。



 いっそ、暴かねば良かった。暴かねばならぬ理由など、目の前でさせてしまった顔の前では霞よりも薄いというのに。



 悟られたのだ。



 己が内にのみ一瞬で過ぎたであろう筈の怖気を、嫌悪を、忌避感を、憎悪を。



 一生の不覚と言っていい。



 心を、全身を、後悔という冷たい波が浚っていく。



 知っておったというのに。ソラが家族を思い、諭す者だと。今し方も家族の為に母を諭す程に、厳しく、そして優しいと。




「……すまぬは言えぬ。忘れろとも言えぬ」




 転生者が皆、人類に仇を為した存在ではないというのに。人類も魔族も、全ての生き物が善も悪もを持つというのに。




「儂が愚かだった。ただ、愚かだった」




 ひとつ、ひとつと零れる雫の前に膝を着く。



「だから、どうか。泣かないで欲しい、ソラよ」



「え? あ……泣いて、なんか……でも、でもさ――」



 堰を切ったように溢れ出す涙が、儂の胸を締め付けた。これは誰の血飛沫なのか。



「ししょぉが、ししょおまで!! お、俺に、俺をそんな目で、それだけ、なの、に……なんか、すごく……いや、で……!!」



 身を裂かれる想いだった。いっそ裂けて果てても構わなかった。愚か過ぎて、これではどうにかなってしまいそうだった。



「ちょっと、待って、見な、いで、タイム。落ち着くから……ちくしょうが、止まれよ……」


「すまない。本当に、全面的に儂が悪かった」


「それは、いいから。ふぅ……それなら先にベッド作って、クリムさんに……もってったげて……ふぅ……」


「だ、だが……」


「いいから。気にしてないし、別に。大丈夫だし」


近寄れば離れ、閉ざされる。閉ざしたのは儂であるのに、どうしたらいいか……



「……すまぬ」


「うっさい、はよ行け!!」



 結局はそれしか言えぬ儂を頑なに近づけんと追い払うソラに、儂は肩を落としてベッドを作り始めた。



 ◇ ◇



「あ、あの……どうかしましたか?」


「儂も頭を冷やす。簡単ですまぬが今宵はそれで良いだろうか」


「え、あ、はい……ありがとうございます……」



 フェニスや、今そちらに仲間が行くぞい……

2023/3/3修正


泣き虫ソラくん回でしt(すぺん


そして夜は更けて……



まだ、明けません。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

次話は18時に公開します。

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