パタつかせてプロレスごっこ
「ソラ、あそぶ!!」
ショッキングな食後、唐突なジョニーの一言に俺は遊ぶことになった。
ママ鳥一家の兄となるひよこのジョニーだがどうやら純この世界産らしく、また産まれたばかりであるのか知的な部分はまだ見られない。そういった意味では俺やメアリーが特殊なだけではあるんだが……
「いつでもどうぞ!」
「クキューッ!!」
その歳の子供?には珍しく受け身のジョニーへとペンギン音声では非常に愛らしく叫ぶ俺だが、実情としては『シャァコラッ!!』である。
気合い一閃。逆水平チョップがジョニーの鳩胸気味なひよこ胸に当たる。
ぱふっ。
「ソラ、もっと!! もっと!!」
「ちぇ、全然効かないとか……」
初めの内は適当にあしらうつもりだったのだが、実はこの兄ひよこ、力がハンパなく強いのだ。体当たりで吹っ飛ばされた俺が仕返しに逆水平チョップをお見舞いしたのが発端となり今に至る。
「そう、ジョニーのふわっ毛ボディは拳法殺しと言われているのさ」
「愛らしい姿の割にえげつねぇな。だけど俺のふわっ毛逆水平チョップだって負けてない筈だ」
「何を張り合ってるんだい?」
少し離れた場所では解説役らしいメアリーが俺達を観察している。ママ鳥はまたどこか飛んでいってしまった。もしかして育児放棄なの? それとメアリーはまたそのキャラでいくの? いくのか。
「ソラ、もっと!!」
リクエストにお応えすべく、俺は再び逆水平チョップを繰り出す。初めの何回は転んでしまったが、比較的平坦な場所なら転ばなくなってきた。
「シャァコラッ!!」
ぽふっ。
「ソラ、たのしい!!」
その言葉通りにジョニーはテンションが上がってきたらしい。諸手を上げ……両羽を多少上げるだけだが、その身体ごと俺へと突撃して――
どぼふっ!!
「げぶらっ……」
いくら羽毛が柔らかくても、チョップより遥かに体重の乗る体当たりを食らって俺ははね飛ばされる。これが普通に痛い。鈍い衝撃が身体を突き抜けるんだもの。
「ソラ、ばふっ!!」
ジョニー の おいうち !!
未だに倒されたら起き上がれない俺の上にキャッキャとはしゃぐジョニーの豊満ボディがのしかかる。うぐっ!? 普通に重い!?
身体的構造上、仰向けの俺の手はジョニーを押しのける事ができなかった。やべぇモフられて死ぬのか。
「ジョニー!? こらっ、危ないよ!!」
「メアも、あそぶ?」
真っ黄色な視界の外で焦ったメアリーの声が聞こえる。どうやら俺の危機を察知してくれたらしい。
ピヨピヨと、うんしょうんしょと黄色い視界が晴れていく。いや、メアリーも黄色いからあまり視界は変わらない。もふもふふわふわ。あれ、なんだか眠くなってきたぞ?
「ほら、起きて」
「ぐかっ!?」
ずびしっ!! と、クチバシで額をつつかれ、思わず飛び起きた。一応助けてくれたから文句は言わないけどさぁ……
「あっ、仰向けからは起きれるようだね」
「え? マジで!?」
「うん。ほら」
驚愕に値する事実を検証させるつもりなのか、メアリーは俺の胸に向かって頭を振りかぶって――
「ちょっ」
どむっ。
ウゥワ、ウゥワ……
「いってぇ!! 何なのお前ら姉弟揃って頭突きとか体当たりとか!?」
両手をバタバタさせて俺は抗議するが、俺は俺で逆水平チョップをしている辺り、もしかして武闘派の血筋か何かなのかと思ってしまう。
「あー、すまないね。でも、ほら。起き上がれるだろう?」
「…………」
この厨二姉ひよこ、必死に両手をパタつかせてるのが見えてないのか? 無理だっつぅの。でも、さっきはどうやって起きたんだろうか。
「……可愛い」
そんな俺の様子を見て、コレである。確かにほっこりするだろうけど。酷い姉である。
「もうヤダ。寝る」
「ふふっ、ふて寝するペンギン……はぁはぁ」
……本当にヤダ。こいつら。
「って、あれ? ジョニーは?」
「そこで寝てるよ」
クチバシで指し示す先へと、ごろりと転がると、そこには黄色い饅頭があった。うほっ、かわいい。
「寝てれば可愛いもんだな」
「今夜からはキミの寝顔も見られると思うとワクワクで眠れないよ」
「お願いですから俺に安らぎをください」
寝るときくらいは普通に寝かせてほしい。無理ですかね?
ここまでお読みいただきありがとうございますぺんぺん。