閑話休題 動き出す歯車
激しくお待たせしました。フルボリュームです。
「今、なんて言っ……仰りました?」
全てが黒に染め上げられた城。人類が魔王城と畏怖するその場所の中でも中枢とされる王の間、厳格と静謐のみが赦される場所とは似付かわしくない間の抜けた声が静かに木霊する。
その声の主は室内と同じ黒に染まる兜のなかで、声とは正反対に鋭い視線を前方へと送っていた。微かに赤みを帯びた黒いカーペットの伸びる先の薄く透けたカーテンの向こう側であろうと、その先に垣間見える一際大きな椅子、玉座に付く存在へと向けるにはあまりにも不敬な眼差しである。
しかし、その視線とともに王の発言を軽んじ、聞き損じたと思われてもおかしくはない質問を声に出して咎める者はおらず、王は問いかけられた声と視線をゆっくりと咀嚼するように聞き、頭のなかでその味を確かめて、答えを改めて口にする。
全く同じ響きのなかで、全く同じ言葉が再び返されても尚、黒き兜の者は疑心の籠もる視線を止めない。頭のなかで聞いた言葉が全く同じだったとしても、実は全く違う意味ではないだろうかと思考を必死に回転させる。
だが結果として、どうあっても間違いへと結び付ける事はどうしても出来なかった。無駄と知りつつも霞のような希望にすがり、現実から目を背けていただけでしかなかったと黒い兜から小さな溜め息が零れた。
「よいな、プルート。魔王様の言葉は――」
「御意に。それでは俺はこれにて失礼させてもらう。会議を中断させているのでな」
カーテンの手前側に立ち、嫌悪を込めた言葉を投げかける王の家臣に対し、プルートと呼ばれた黒き兜の者はその言葉を遮って立ち上がる。
静寂を蹴散らすように、兜と同じ黒に染まった騎士甲冑をわざとらしくガチャガチャと鳴らしながらプルートは堂々と室内を後にする。その姿は王の間とされる場所に対しての敬意などなく、あまりにも無遠慮で無防備だった。
「プルートよ。世話をかけるな」
しかし、度重なる不敬な背中へ向けられたのは誅する言葉ではなく、感謝。王からかけられたその言葉に家臣は困惑し、プルートは豪奢な装飾が施された黒き扉の前で立ち止まる。
「…………上からのご命令をこなすってのは部下として、道理だぜ?」
間を置いて呟くように零れた言葉と共にプルートは今度こそその場を後にする。兜の奥、そこにあった表情を見ることができたのは、黒き扉だけだった。
◇ ◇
「あぁ、煙草吸いてぇよぉ……」
蒼白い篝火に照らされる廊下で、プルートは弱音のような言葉と一緒に深く長い溜め息を吐いた。息も詰まるほど堅苦しい中からようやく出て来れたのに、戻る場所は面倒事が犇めくであろう中庭の会議場である。
いっその事このままエスケープしてしまいたいが、悲しい事にプルートの心の奥の奥の底、思い出す事も稀になった遠い記憶から微かにこびり付いてしまった何かが心中に声をかけるのだ。
しごと から は にげられない と。
「企業戦士達に栄光あれ、ってね」
これはもう一種の呪いだとぼやきながら、プルートは廊下を歩く。一歩、二歩――
「相変わらず不敬が鎧を付けて歩いているような存在ね。プルート」
「それでこそ、ではあるがね」
過酷な労働環境へと向かう企業戦士の歩みは三歩を待たずとして、両サイドから響く声に止められた。
プルートは思う。というより、再び遠い過去の記憶を思い出した。
「いつからここは砂漠のピラミッドになったんだ? 金ピカのツメを取った覚えもねぇんだがね」
実際のところ遭遇したのはミイラではなく、むしろプルートの方がアンデットなわけであるが。
道理じゃねぇ、と足を止めた原因にプルートは向き合う。
「時折貴方の言っている事が理解出来ないのだけど。まぁ、残念ながら理解したいと思いもしないわ。本当、残念ね」
口元を豪奢な扇で隠しつつも、高圧的な態度を欠片も隠さないその女性は、透き通った鮮血のような髪を白く長い指で払いながら壁についた背を離す。
「それでこそ、ではあるがね」
一方、片手に持つ本から視線を外す事なく、やる気の欠片もない言葉と共に青年はゆっくりと本のページを捲る。微かに開いた窓から吹いた風が彼の長い銀髪を揺らし、それを嫌ってか浅黒い指で髪を直す。
一見して容姿の全く似ていない二人の美男美女。これがミイラであれば適当に蹴散らして進む所だが、生憎そうもいかない現実を前にプルートは、当の昔に朽ち果てた筈の胃袋がキリキリと悲鳴を上げる音を聞いた。
「なに、独り言だ。これからもそうでありたいと思う所存だが……何のようで?」
肩を竦め、隠しきれない面倒臭さをいっそのこと前面を通り越して全面に出しながら、彼は二人に問いかける。
「あの話、聞いたのでしょう? それなら私達の用事も察するのではなくて? 高貴なる者の考えを推測するような慇懃無礼は貴方の得意とするとこ――」
「プラーヴィ"王女"の尊き御言葉は浅慮で野蛮なるこの黒に穢れし駄骸には些か難しいようです。ヴァルタリア"王子"、僭越ながらどうぞその意味を御示しくださる慈悲を卑しき私めに御教授ください」
「ぶふっ、プルート。どうしてくれるんだい。本が汚れてしまったよ。だが、それでこそだよ」
「おや、これは失礼」
「プルートっ!! 御兄様っ!! もうっ!!」
白く端正な顔を髪と同じ赤に染め上げ、プラヴィリアと呼ばれた女性は声を上げて憤慨する。
しかしながら、足を強く踏みしめた所で些か城周辺が揺れた程度で、身にまとう黒いドレスの開かれた胸元周辺は欠片も揺らぐ事はなかった。残念だ、非常に、とプルートは思う。
「プラ姫ちゃん。大きくなったのに色々と成長しないな。毎日見てる身としてそこんとこどうよ? ヴァル殿下」
「全く、王族たる者としてその件に関しては同意せざるを得ない。あと私はまだ殿下ではないよ。プルート」
「プラプリ言うな馬鹿プルート!!御兄様もどちらの味方なの!?」
「ほら、プラヴィ。そういう所だよ。それでこそ、ではあるがね」
「知ってるか? ポーションを騙し売るなら器から、だぜ?」
「~~ッ!!」
果たして本当に自分の質問の意味は届いたのだろうか。そんな疑問は一瞬を待たずに投げ捨てて、プルートは揺れる城の耐震設計を心配する事にした。
「さて、私もプラヴィで遊んでる場合でもないんだ。魔王軍、軍団長プルートに話がある」
「道理だね。聞くだけで済ませるだろうが、構わないか?」
「あぁ、それでこそだよ。廊下で済ませる世間話程度、中庭に行く道すがら聞くだけで構わない」
一向に揺れと甲高い怒声は収まらないが、ヴァルタリアとプルートの会話は続く。
ただ、少なくともそのままでいいと思っているかといえばそうでもなかった。
「なんでアンタ達は――」
「プラヴィ。豚は好きか? 今ならお前を養豚場に御招待出来る権限が俺にはある。解るな?」
「……そ、そのくらいで私が怯むと――」
「プラヴィ。その豚達はメスを見るとどんな事をしてでも孕ませたくなるそうだ。魔王の血に家畜の血が混ざるくらいなら……そうだな、私はその穢れた苗床が愛しい妹を世界ごと滅ぼしても構わない訳だが――」
「静かにしてます」
病的に顔を青白くさせて跪くプラヴィリアに二人は溜め息を吐き――
「それでこそ、だよ」
「道理だね」
同じような言葉で笑いかけたのだった。
◇ ◇
「まったく、昔っからあいつらは面倒かけさせやがって……」
去り行く二人の背中を見送り、プルートは再び会議場の中庭を目指す。悪態づく言葉とは裏腹にその足取りが些か軽くなっている事は本人も気付いてはいないが――
「貴様等!! 俺様は豪を極めしオーク族の長だぞ!?」
その軽やかな足取りも、十歩で終わった。
「もう有給、取ろうかな。取れるかな、取れねぇだろうなぁ……って、うん?」
廊下を歩けばまだまだ先の中庭から聞こえるぶぅぶぅと豚らしい怒声にプルートは溜め息を吐きこぼし、そして小首を傾げる。
どうして、豚が鳴いているのか。
畜殺係りは、何をしているのか。
「あの鳥、まさか……!!」
朽ち果てた胸に過ぎる予感にプルートは、周辺地域を物理的に揺るがしたプラヴィの地団駄ですら傷付かなかった床を削る勢いで廊下を駆け抜ける。勿論、外れやすい頭は両手でしっかりとホールドする事は忘れない。
その際、『場内で殺さない、走らない、食べない、可能な限り壊さない。魔王軍生活指導係プルート』という遠い昔に貼ったポスターが、風に揺られて壁から剥がれ落ちた。
◇ ◇
「遅かった、か……」
長く中庭を空けていたプルートは、目の前の惨状に小さく声を漏らした。
何か判らない液体に塗れた円卓は無惨にも真っ二つになり、巨大な犬は寝息を立てて、幾つかあった立派なオーク族の氷蔵も粉々になり、植木も、壁も至る所が傷付けられていたのだ。いや、巨大な犬は平常運行だが。
「プ、プルート、様……これは……」
中庭に姿を現したプルートに気がついたのか魚に手足が生えたような生き物、魚人族代表が口をパクパクさせながら震えた声で現状を説明しようとする。
残っている幹部達で"無事な"者達はその声に気付き、一様に困惑していた。
「……解ってるが、一応訊くぞ」
微かに震える声でプルートは、視線をそれに向ける。
「究極にして頂点である我がスキル【金剛力】に適う敵無しっ!! つまり、オーク族であるこの俺様こそ魔王軍における頂点であり――」
そこには、背後のプルートには気付かないのだろう。巨大な戦斧をその目の前にある肉塊に何度も何度も振り下ろす丸々と太った豚がいた。
「あれは、あの肉は? 豚じゃない方な」
「だ、大蛇族と大猿族の、て、手の者です」
口と体をパクパクプルプルと震わせながら魚人族代表は答えると、プルートは二匹かぁ、と兜に手を当てて声を漏らした。
「……馬鹿鳥と阿呆精霊は?」
「…………お、お二人は――」
再びのプルートからの問いかけに、魚人族代表は丸い目を泳がせて震える。そして同じく震える指先で、尚も叫びながら戦斧を振り回す豚の近くにあった大きな赤い肉塊を指差して――
「し、しばらく、い、育児休暇とやらを、と、取るとお帰りになりました」
肉塊を通過した指先が遙か彼方、もはや点にしか見えないフェニスであろう鳥を指した。
「誰だよあの馬鹿に余計な入れ知恵したのはっ!!」
嫌な予感は的中したが、的中して尚も遥かに上回る内容だった。
「ヌゥ、これはデュラハン殿。おっと、噂に聴く現軍団長ですかな。遅刻をしてしまい申し訳ありませんね」
プルートの声にようやくその存在に気がついたらしい豚が、額に掻いた汗を拭いながら控えめにいって醜い笑みを浮かべる。
「プ、プルート様。育児休暇とは、な、なんでしょう?」
「ピスケス殿。育児休暇についてはさて置いて、先に魔王様からの御言葉を頂いたから発表するぞー。お前らも席に付け、って席ねぇな。死んだ奴の所は隣の領地の奴……猿の所は蛇も死んだから先生が行くとするか。とりあえず座れー」
「は、はい。プルートさ……プルートせ、先生。私は呼び捨てでけ、結構ですと以前に――」
「ウワァ、マタ蛇ニ噛マレル。イヤダナァ」
「アイツ、コノ前ニ金貸シタノニ、死ニ逃ゲカヨ」
醜いどや顔をする豚を放置し、生き残りである幹部、各族長がわいのわいのとプルートの前に座っていく。
少なくとも、そこには暴虐の限りを尽くしたであろう豚に対する恐怖も、同僚の死を悲しむ者など欠片もいなかった。
「お前ら、この俺様を馬鹿にして――」
「豚、お前は遅刻してきたから後で掃除するように。えーっと今回はちょっと重大な話がある」
「プルート先生、ま、前もそうい、言った」
「ハハッ、ほらほら。馬鹿な鳥がいないからって調子に乗って羽根広げ過ぎだろ、まったく鳥じゃないんだぞー? ……おい、笑えよ」
「ふ、ふざけるなよぉお前らぁっ!!」
そんな怒声と共にズドン、と鈍重な足音が響き渡る。プルートは深く、ただ深く溜め息を吐いて――
自らへと振り下ろされた戦斧の刃を受け止め、取り上げるとそのまま"握り潰した"。紙を丸めてクシャクシャにするように、手軽く。
「げぇっ!?」
「はい、お話の前に多数決を取りまーす」
ポイと捨てられた戦斧だった物を見下ろしている豚を再び放置し、プルートは戦斧を握り潰した両手をぷらぷらと振って間の抜けた声を上げる。
「豚さん、要らない子。手を挙げてー。うん、犬爺は寝てるから賛成、つまり満場一致だね」
うんうんと頷いて、初めて豚と向き合うプルートに、豚は喉の奥からヒクッと音を鳴らした。
ちなみに、中庭にいた幹部、各族長は誰一人として手を上げたり、賛成の声を上げたりはしなかった。わざわざ意見する意味がなかったのだ。そういった意味では満場一致だ。
「名も知らぬオーク族よ。ひとまずは訊こうか、俺は優しいからな」
「っ、何を……」
プルートはただひたすら無感情に言葉を並べる。そこには場を乱した者への怒りも、場を制した者の優越感もない。
「訊くことは二つ。そこのオーク族の氷蔵はお前達の族長だったわけだが、それについて何かあるか?」
「……族長? 弱き者は統べるべからず、虐げる物である。それが俺の掟だ。そこにいたのは父と兄であったが、家族であろうと思うところは欠片もない」
豚はこの時、過ちを犯していた。
目の前の黒い騎士甲冑から全く覇気が感じない事に、恐らく先ほどの行動に全ての力を使い果たしたのだろうと思ってしまった。それほどまでに現実味のない光景と自身の力は絶対と過信する傲慢さが故の過ちだった。
ならば、これは時間稼ぎの回復か。オーク族の中でも力は勿論、周囲からは知恵が回るとされる自身の推察に思わずヨダレ混じりの笑みが零れる。
「家族への情は無しね。それじゃ、次はお前の"夢"だ。夢はあるか?」
淡々と進むプルートの問いかけに、豚は首を傾げる。質問の意図がまったく意味が判らない事に、推測は確信へと笑みを深くする傍らで腕に力を込める。
「夢ぇ? まぁ、世界のメスを喰いながら、魔王一の部下としてやってく事かねぇ……この、金剛力でなっ!!」
無防備に立つプルートへと振り下ろす不意打ち。武器など使わぬ自身の右腕による打撃。力を込めれば込める程、力を増すというスキル【金剛力】による一撃は――
「豚は下衆、はっきり判んだね。道理かよ」
豚以外の者達の予想通りになった。
振り下ろされた右腕を軽く手で払い落とし、プルートは盛大に溜め息を吐きこぼす。ついつい払い落とす力が有り余ってしまったせいか、払い落とした拍子に豚の右腕はその身体からオサラバしたわけだが。
「オォォォォッ!? お、俺の腕がァァァァ!!」
「おいおい。お前、腕取れた事ないのかよ。その程度の痛みで泣き叫ぶだなんて、頭張ってたんだろ?そんな世間知らずみたいな、まるで……ん?」
左手で右肘を抑えながら転がる豚に、プルートは呆れ、不意に何かを思い出すようにカシャンと両手を打ちつける。
「なぁ、オークの……なんて名前だっけ? 教えてくれよ、大切な事なんだ」
「お、お前ぇ、こんな事して……ぐぇ」
血と涙と鼻水に塗れた豚の大きな鼻をプルートは右手でギリギリと握り締めて顔を近付ける。
そこで豚は初めて見た。
プルートの兜の奥。
薄闇に浮かぶように自身を見つめる2つの暗い光を。
朽ち果てる事を忘れたように残された二つの眼を。
そこにある得体の知れない感情を。
「バ、バル、バルドア――」
今更になってガタガタと震える身体が、問いかけられた質問を必死に答えようとするが、鼻に走る激痛がそれを許さなかった。
「"そっちの名前じゃねぇよ"」
兜の奥から熱い腐敗臭を漂わせて告げられた言葉に、豚は今度こそ目を剥いて驚きを見せた。
――どうして、コイツが知っている。俺がオークとして生まれ変わ――
答えに言葉は必要なかった。
豚が最後に見たモノ。
それは笑う闇の眼と、自身の顔面へと向かって来る黒、それだけだった。
パンッ。
どこまでも、どこまでも軽く響き渡った音を、頭部を消失させられた豚が聞くことはなかった。
「さぁて、と……『牢獄の嘆き』」
べちゃりと、右手に握った肉片を放り投げ、プルートは自身へと跪いたような格好で温い赤の噴水を浴びせ続けるしかない亡骸へと呟く。
変化は直後に訪れる。
止めどなく吹き出るしかなかった鮮血は蛇口を閉めたようにその勢いを急に止めた。首の下にある肉体には未だに血肉の蓄えられた肉体が時折痙攣に震えるのみで――
「起きよ。"下僕"」
血の巡りがおかしくなったのか、それとも別の何かのせいか。青黒く肌の色を変えた首のないオークはプルートの声に従い、身体を立ち上がらせた。頭部を失って尚の命のあるような動きに誰も驚くことはない。ただ、静寂があった。
「魔王様から賜った言葉だ。ありがたく聞くように」
気分の高まりを抑えるようにプルートは静かに、重く、声を響かせる。
「魔王選抜を始める。それにより候補者を各領地から募集すると同時、王族からの候補を各領地へと派遣する」
プルートの言葉は、彼等をざわつかせるに充分過ぎる言葉だった。
「尚、犬爺もといフェンリウス老が治める……治めているつもりの魔狼の山と、オーク族が詰め込まれている豚の国は派遣対象外だ」
「フェンリウス様はわ、解りますが、オーク族のふ、憤怒の山がた、対象外なのは、ど、どうしてです?」
腑に落ちないという魚人族の問いに幹部、各族長は同じく声を上げる。
そのどれもが、王族からの候補を受け入れたくないという意味合いからくる苦情だ。同時に次期魔王になる候補者なんて王族以外からは出ないだろうと――
「豚の国はこれより"監査"が入る」
その言葉が持つ意味に、周囲は再び水を打ったように静かになった。
「先のオーク族代表が"技術力転生者"を匿っている疑いがある。故に、場合によっては――」
プルートは言葉を紡ぎながら、身体が打ち震える程の熱を感じた。これほどの冷たい喜びを感じたのはいつ以来か。
「オーク族を、この世から消す事も辞さない。全ては魔王様の為に」
たった今し方聞こえたのだ。本当に、本当に久しく聞いていなかった声だ。
――転生者の魂を取得。
――スキル、アビリティを略奪しました。略奪したスキル、アビリティが所持スキル、アビリティの下位性能の為、破棄します。
情報が混在した世界で、もう手掛かりはない。プルートはそう思っていた。
――神の座まで、あと3。
黒き兜のなか、その眼は静かに。
だが、確かに笑っていた。
一方、その頃。
『フェニス。トブノ ツカレタ』
『背中に乗ったら冷たいから駄目よ。やめ、ちょっ!!』
『フェニス。アッタカイ、シヌトイイ』
『嫌よっ!! なんであなたのために死なないといけないのよ!!』
『フェニス。ツメタイ、ソレデイイ。ソレガイイ』
育児休暇組はそんなやり取りをしてたそうな。
◇ ◇
ここまでお読み頂きありがとう御座います!!
魔王選抜、略して王選!! いや、流石にその略し方はネタ的に不味い。
いよいよ第三章!!
お楽しみに!!
でも次はプロフィールリスト予定なのでした。
あと少しで総合評価100……!!
皆様の応援感謝!!ぺんぺぺん!!




