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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第一章 ペン里の道も一歩から
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あふたーえぴそーど 行くもペンギン帰るもひよこ

 


[経験を取得しました。レベルが上がります]


 その声は、待ちに待っていたその声は、憎き赤いヤツを倒した時、俺の頭に響き渡った。



「え……なにいまの?」



 奥義によってふたつに分断された赤ミミズを前に、俺は半ば呆然とその言葉を反芻(はんすう)する。


 レベルが上がった? 誰の?


 きょろきょろと辺りを見回すが、大きなマザーバードと厨二の姉ひよこ、素直かわいい兄ひよこが俺を見ているだけ。誰が話しかけたような様子はない。


なんて言ってたかな?


 レベルが上がったそうなんですが、誰のレベルが上がったんですか?



 俺ですか? あっ、はい。



 ……マジ?



「おぉっ!! マザー、メアリー、ジョニー!! 聞いてくれよ!! ようやくレベルが――」


「その前に腕を出しなさい、ソラ」


「あっ、はい」



 有無を言わせないママ鳥の言葉に、俺の爆発しそうな喜びは遮られた。相変わらず奥義の使用によって右翼はズタズタボロボロだ。痛くないのかって? 超痛いに決まってんじゃんか。ぺーん、ままー、痛いよー。



 ◇ ◇



「アンロック ステータス オープン」


 翼の治療が済むと、俺は改めて自分のステータスを確認する事にした。


 なんというかあれだ。給与明細を見たけど預金残高を見ないと実感出来ない、みたいな。例え方に夢が無さ過ぎるわ。



 名前:ソラ

 種族:ミニペンギー

 レベル:2

心 B

技 E

体 F-

魔 F-


 アビリティ

 【ふわふわボディ】

 【格闘の心得】

 【種】

 【タフネス】

 【滑空】


 スキル

 【逆水平チョップ<T 2nd>】

 【ビーク<T>】


 称号

 【神*呪%>◎℃】

 【神の悪戯】

 【凶極鳥の寵愛】

 【ペテンペンギン】

 【チョッパーロード】

 【無謀なペンギン】



「うへへ、レベル2。レベル2だってよ俺……」


 ごろごろと転がりながら、何度も確認しては、うへうへと笑む。やべぇ、超嬉しい。心なしか強くなった気がする。


「初めはミルキーワームさえ倒せなかった子だったのに、こんな日が来るなんてね……」


「おめでとうソラ。だが、これからまだまだ強くなって貰わないと――」


「ソラもれべるあっぷ? おめでとー!!」


 ママ鳥、メアリー、ジョニーはそんな端から見ると頭のイカれたペンギンの俺に愛のある言葉をくれた。



「さて、ソラ。せっかく初めてのレベルアップなんだから、明日一日何かしたいことはあるかしら?」


「え、いいの? そんな――」



 まるで誕生日みたいなお祝いイベントに発展するとは思わず、少し遠慮する俺を、ママ鳥は金縛りの視線で止めた。止め方に愛があるかはさておき、金縛りさせられたのも久しぶりな気がする。



「メアリーも、ジョニーも最初のレベルアップはお祝いしたの。貴方だけしないなんてダメよ、絶対」


「……解ったよ。ありがとう」


「ちなみに、私はお母さんとジョニーと遊覧飛行したぞ? あれは良かった。本当に良かった…」』


「ジョニーは、みんなでごはん!! おいしかった!!」



 感謝の意を伝えると、姉兄達は自身の時の事を列挙していく。参考にさせてもらいつつも、少しだけ疎外感を覚えてしまう自分に苦笑してしまう。俺が産まれる前の話だから仕方ないんだけどさ。



 しかし、成る程。



 ふたりともに共通している事柄を見つけて、俺の初レベルアップ祝いを何にしようか、決まった。



「マザー、それじゃお願いがあるんだけど――」



 緊張しながら、俺はママ鳥にそう切り出した。



 ◇ ◇



「方向良し、角度良し、風良し」


 天気は快晴、どこまでも青く晴れ渡っております。


「危ないと思ったら直ぐに私を呼ぶ事、良いわね?」


「オッケーマザー。それじゃ、いつでもいいよ」



 背中に食い込むミルキーワームゴムの感触に、一瞬だけあの日の恐怖が顔を覗かせるが、ママ鳥がいる。それだけで安心する。


 そう、俺は今ミルキーバリスタで発射されようとしている。一度は反対したママ鳥だが、これもお願いの一環だと渋々了承してくれた。



「ぴにくっくー!!」


「違うジョニー、ピクニックだ」


「ぴににっくー!!」


「まったく、兄弟そろって話を聞かないんだから……」



 ママ鳥の背中から聞こえる声は楽しげで、それだけで俺も提案した甲斐があったってものだ。



「それじゃ、"あっち"でね?」



 その言葉を皮切りに、ミルキーバリスタを発射するママ鳥。身体に走る衝撃と流れる景色の加速感に、否が応でも弛緩していた気持ちが引き締まった。



 巣から青い大空へと撃ち出された俺の行く先は、森の中にある湖だ。



 凶極鳥一家の遠足(ピクニック)はこうして始まりを告げた。



続きます。


ここまでお読みいただきありがとう御座います。


スマホが直り次第、今回のステータスのような形に話を修正させて頂きますので御容赦ください。修正完了次第に報告させて頂きます。



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