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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第一章 ペン里の道も一歩から
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パタつかせて教育

 


 メアリーにしこたま怒られた俺は、反省の意も込めてジョニーとふたりで巣の掃除を始めた。故意ではないとしても流石にやり過ぎたしね。



「しかし、改めてみると酷いな」



 あまり掃除なんてしてないのか、野晒(ざら)しの鳥の巣グランドは所々で凹凸(でこぼこ)があり、たまに鋭い枝が突き出ていて危なかったりする。まぁ、鳥の巣だしな。仕方ない部分はあるだろう。



「ソラ、なにするの?」


「そうだなぁ、俺が突き出た枝を取るからジョニーは整地を頼む」


「せーち?」



 流石にひよこのジョニーには解らなかったらしい。無理もないか、ひよこだし。


「こうやって足で出っ張りの部分を踏んづけて平らにしたり、へこんでる部分を他の枝で埋めるんだ」



 体重の軽い俺には出っ張りを直す事は難しいけど、何となくニュアンスは伝わったらしい。どすどすとジョニーが足で巣を踏み固めていく。さて、俺も枝払いするかな。



「せーち!! せーち!!」


「いいぞ、その調子だ」


「…………」



 まだご機嫌ななめであるメアリーも、ジョニーと俺の作業を無言で見ていた。しかし、時折様子を盗み見ると彼女の眼差しが少し寂しげに見えるのは……仲間外れにされているように感じているからだろうか? でもさっきの件もあるから手伝いをお願いするというのも抵抗がある。



「ソラ!! なにか"ヘんなこえ"がきこえた!!」


 謎の板挟みにあう俺へ、声を上げるジョニーに視線を戻す。変な声とはなにか、少なくとも俺には聞こえなかったけど。もしかして何かしらのスキルやアビリティを取れたのか?



「"取得しました"って言ってたか?」



 いってたぴよーっ!! と遠くから謎の身振り手振りを加えて声が返ってくる。いや、語尾は言ってないが。



「ジョ、ジョニー!! スキル取得については秘密にしないといけないんだぞ!?」


 耳敏(ざと)くジョニーの言葉を聞きつけたメアリーがお姉さんらしくジョニーへ注意を飛ばす。まぁ、整地のスキルを欲しがるヤツがいるかはさて置くとして……



 あまりよろしくない言い方だな。何というか、正しいだけの言葉って感じで。いーけないんだーいけないんだーみたいな。



「ひみつ?」


「言ってはいけないって事だ」


「なんで?」


「なんでって……」



 こてんと小首を傾げながら繰り返すさまにメアリーもタジタジのご様子。


あぁ、ジョニーもそういう年頃になったか。なんでなんで期というか、前世でも甥っ子が連発してたなぁ……面倒臭かったなぁ……


 前世の郷愁に胸を痛めていると、どうやらメアリーが俺に視線で訴えかけてきた。もう降参か、言い出しっぺがだらしねぇな。



「ジョニー、スキルを取る事は悪いことじゃないんだ」



 まず、誤解しないようにと俺はジョニーを諭す。前提からきちんと正しておかないとジョニーの成長にも悪いからな。



「わるいことじゃないのにどうしてひみつなの?」



 よく口の回るひよこになったものだ。その口を縫い合わせてやろうか? おっと、いけない。辛抱強くいこう。



「ジョニーのスキルを欲しがる悪いヤツがいて、ジョニーをどこか遠くに連れて行っちゃうんだ。みんなと会えなくなっちゃうんだぞ?」


「そんなのヤダ!! それならすきるいらない!!」


「でもスキルを取らないと大きくなれないぞぉ?」


「あえないくらいならそっちがいい!!」



 ほら、面倒くさい事になった。どうすんだよメアリー、お前のせいだからな。ちょっと恨みがましくメアリー見ると彼女もややこしい事になったと萎縮していた。



「じゃあこうしよう。ジョニーがスキルを取ったら俺たちには言ってくれ、でもそれ以外の奴には駄目だ。悪い奴だからな」


「でも、すきるをもってたら、つれてかれる……」



しゅんと視線を落とす姿は純粋に胸が痛い。痛いのだが、切り口は見つかった。



「大丈夫、その時は俺達がジョニーを守ってやる。助けてやる」


「……ぜったい?」


「あぁ、約束だ」



 攻略の糸口さえ見つかれば、結構簡単ではある。お疲れ様、俺。



「やくそく? ママがいってた!! やくそくやぶっちゃダメ!!」


「おぉ、よく覚えてたな。偉いぞ? だけど、もしも俺やメアリーが悪い奴に連れてかれそうになったら、ジョニー、お前が俺達を助けるんだぞ? ジョニーは俺のお兄ちゃんなんだからな」


「おにいちゃん?」



 うんうんぴよぴよと首を縦横に振るジョニーに、ちょっとまだ早い話だったかなと思うが後の祭りだ。何でもかんでもやってみたい年頃よろしくその目は希望に満ち溢れてるようだしな。



「あぁ、そうだ。おにいちゃんは家族を守るんだ。強いからな」



「おにいちゃん……!! ジョニー、おにいちゃん!!」



 俺の言葉がどれだけの効果があったのか。瞑らな目をいっそう爛々(らんらん)と光らせて、翼を広げて甲高い声を上げるジョニーの御機嫌は見ての通り。疑問のひとつも残らないを、どうやら俺は成功したらしい。



「あっ、またきこえた!!」


「「え?」」


「でも、なんかよくわかんない……もっとゆっくりいってほしい」



 いったい何を取ったのか。ジョニーの成長は早さに俺達は、ぱちぱち目を見合わせた。


遅ればせながら活動報告にて感想ありがとうございました!!


重ねて皆さんのしおり、拝読感謝です!!

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