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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第一章 ペン里の道も一歩から
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パタつかせてパタつく

 


 ぺーん、どす。


[アクションによるアンロック、【ビークスキルツリー】派生、【ペンギニックダイヴ】を取得しました]


 ぺーん、ぺぺん。


[アクションによるアンロック、【逆水平チョップスキルツリー】1st派生、【ペン翼爆落殺】を取得しました』


 ぺーん、ぺんっ!!


[アクションによるアンロック、スキル【受け身】を取得しました]



 メアリーとジョニーによる、打ち上げペンギンを十数回。少なくとも軽く意識がなくなりそうだった。


 端から見たらペンギン虐待にしか見えないが、俺は何故どうしてこんな事をやってるのか。あ、もう次ですか? ぼろ雑巾みたいになってませんか?



 ぺーん……ぼと。



[条件をアンロック。アビリティ【タフネス】を取得しました]



「ソラ!! たのしい!! もっと!!」


「ジ、ジョニー……そろそろ止めてあげようか」



 ぐぅの音も、ぺんの音も出ず、倒れるままの俺の耳にようやく実験終了の言葉が届いた。



 ◇ ◇



「ソラ……えっとその、どうだった?」


「飛行の飛の字も出なかったよ。見て解るだろ? なんの収穫もないわけじゃなかったがな」



 満身創痍の俺に、メアリーも流石にやり過ぎた感が否めなかったのだろう。ぱたぱたと羽根で(あお)いでくれている。ママ鳥みたいに癒やしの力はないけど、ありがたく痛みに火照る身体を涼ませてもらうとしよう。



「やはり、か。私も途中から、もしかすると飛ぶというより投げられているから上手くいかないのだろうか? と思っていてな」


「思っていたら止めてくれませんかねぇ……!!」



「で、でも最後の方には上手く受け身が取れてたじゃないか?」


「あれだけやれば出来るようになったわ」



 道理で途中からジョニーばっかりペン投げしてると思ったら、薄情者め。


 まぁ、飛行ではなくても色々とスキルとかアビリティが取れたから御の字ではあるんだけどさ。



「ソラ、もういい? もっとあそぼ?」


「ジョニー。今日はもう終わりだ。オッケー?」


「おっけー? おっけーってなに?」



 ぴよぴよと首を傾げるジョニー。意味が通じていないのか。まぁ、コイツは天然物で純粋無垢なひよこだしな。転生厨二ひよこと同じ感覚で接しても駄目か。



「オッケーってのは、解った。って意味だ、オッケー?」


「おっけー……うん、おっけー!!」



 新しい言葉を覚えて嬉しいらしい、ぴよぴよと跳ねて回るジョニーは愛らしい。でもやはり身体が急成長しているのか、どすんどすんと鈍い音がする。てか兄者、どっちかといえば太った?



「かぁぁ、しっかし飛ぶ、かぁ……」


 次の案を考えながら、ごろりとうつ伏せに寝転がって翼をパタつかせる。イメージとして空を飛んだ時の動きを想定してみる練習だ。ぱたぱた。当機は安定飛行に移りまーす。



「な、なんだか可愛い動きだな……」


「真面目に考えてるんだ。変な目で見るのは止めていただきたい」



 ふんすっと微かに鼻息が荒くなるメアリーに言われて自分の姿を想像する。うつ伏せで翼をぱたぱたさせる赤ちゃんペンギン……確かにいいね!!


「ソラ、なにしてるのー? あそんでるの?」


 と、話を全く聞いてなかったのか理解出来なかったのか。ジョニーがその豊満な身体で俺の背中にむっぎゅーと乗っかる。もふもふだけど重い!! 普通に重い!!



「ジョニー。ソラは空を飛ぶ練習をしているんだ」


「ソラがソラをとぶ? わかんない……」


「それよか、息が苦しいんで……そろそろ、どいて、くれないか?」


「おっけー!! おっけー!!」



 ふぅ、危うく押し花ならぬ押しペンギンになる所だったぜ。


「ソラでとぶ。どうするの?」


「なんかよく解ってないみたいだけど、それを今から考えるんだよ。こう、翼をぱたぱたーとやって飛びたいんだが……」



 立ち上がり、直立姿勢で翼をパタつかせると、それがジョニーの琴線に触れたらしく真似をしてくる。



「おっけー!! おっけー!!」



 力いっぱいに黄色い羽根をばさばさと振るジョニーから風が吹き始める。ふぃー、こりゃ涼しくていいや。



「とぶのできた?」


「いや、少しも飛んではいないのだが……ほら、お母さんが空を飛んでるだろう? びゅーんって、あんな感じだよ」


「おっけー!! じゃあジョニー、とぶね!!」



 メアリーの説明に納得したらしい。今度はぴょんぴょんと跳びながら羽根を動かして回り始める。若いもんは元気だなぁ。



「純真ってヤツかね。あの調子じゃ、ホントに俺より先に飛ぶんじゃないか?」


「そう、だな……まぁ、言っては悪いが私達の場合は成長過程とも呼べるわけだが」



 笑いながらメアリーに声をかけるが、何やら彼女は彼女でどこかソワソワと落ち着かない様子が見て取れた。あぁ、もしかして、メアリーさんってば……



「メアリーもやらないのか? 小さな身体をいっぱいに使って、重力の檻から解き放たれる練習とか」


「そんなべ、別に、私は……」



 しっかりとジョニーの姿を見ながら、メアリーはそう応えた。明らかに無理をしているようにしか見えない。よぅし……



「そうだよなー。ちっちゃい羽根をばたばたと振り乱して楽しむだなんて、ジョニーみたいな子どもがやるのはいいけど。中身が成熟した大人がやるようなことじゃないよなー」



「うぅ、ソラは意地悪だ。キミだけ置き去りにしてしまうのは悪いかとも少しは思ってたのに……」


「それは普通に悪かったよ。俺は俺で気長にやるつもりではあるから行ってくるといい?」



 少しだけ心がささくれてしまっていたらしい。素直に反省を込めて謝りそう返すと、少しの逡巡の後にいよいよ我慢が出来なくなったらしい。ぴょんぴょんばさばさとその場で飛ぶ練習を始めてしまった。



 まったく、どのみちあいつもまだ子どもなんだから素直になれよな。大人に気を使うんじゃないってのまったく……



「メア!! メアも飛ぶ!? おっけー!?」


「おうとも、私はお姉さんだからな。面子くらい保たせてもらうぞ!!」



 気がつけば、提案者をそっちのけで遊ぶふたりの姿に……前世では未成年で逝去したらしい少女の姿に、俺は小さく溜め息を吐いたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


スキル関係修正によりステータスは後日。


ストック溜まるまではこの時間帯の更新となりますので御容赦ください。

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