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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第一章 ペン里の道も一歩から
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パタつかせて決意表明

お詫び更新三回目 以降は明日以降のストックにします

 


[経験を取得しました]



「腕が、腕がぁぁぁぁっ!!」



 ごろんごろんと痛みに転げ回る俺。助けてママ鳥!! 早く冷たいアレをプリーズ!!


「ソラ、今日はもう終わりにしましょう」


「……そうするわ」



 どこか呆れながらママ鳥は、文字通りのクールタイムが終わると俺にそう言ってきた。


 太陽も真っ青な空を飛ぶのに疲れたのか、そろそろ山の向こうへ就寝しようとする時刻だ。確かに切り上げるのには丁度良いか。



 20戦2勝18死。


 奥義を覚えた俺は、ミルキーワーム相手に完死されなくなった。勝率一割だぜ、ドヤァッ。



 ……ファ○キンッ!!



 全っ然っ、奥義出ねぇ!! 集中発動時って何!? そもそも集中ってどうやるんだ!? なんでミミズすぐ死んでまうん!? それミミズやない、ミルキーワームや。ってか通算三回勝ったのにレベル上がらないしっ!! なんで!? どれだけ最弱認定されてんのミルキーワーム!! そして奥義使わないと勝てない俺って何!? 可愛いペンギンだよ馬鹿野郎!!



「お母さんっ!! またレベル上がったよ!!」


「ままっ、れべるあっぷ!!」


「あらあら、良かったわね。ふたりとも」


「…………」



俺の心情を知らずにひよこ姉弟はピヨピヨとママ鳥へと喜びの報告をしていた。



 ふ ざ け ろ 。



 ペン忍袋の緒が切れますわ。おかしいだろこの仕様。


 本日は修行パートだったのか、確かにふたりは食事でもないのにキラーマンティスやらジャイアントキャタピラー相手に戦ってたけど!! 戦闘数で言えば圧倒的に俺の方が多いのに……!!



「そもそも、そもそもだ……!!」



 行き場のない怒りに俺は頭を振りかぶってクチバシを巣へと突き立てる。



「てめぇら簡単に死んでるんじゃねぇぇぇぇっ!!」


 クィッキュクキュキューッ!! と巣の中に俺の魂の叫びが木霊する。王様の耳はロバの耳もかくやである。


「荒れてるわね」

「荒れてるね」

「ソラ、うるさい」


 異口同音な三者三様の呟きを耳に、俺は治まらない怒りにクチバシをザックザックと巣に突き立て――



[アクションによるアンロック スキル【ビーク】を取得しました]


 これは……!!


「マザー!! スキル出た!! これでラスト!!」


「あら、そうなの?それじゃ最後よ?」



 そうか!! 俺にはチョップ以外に武器があったじゃないか!? 鋭利と言うには少し頼りないクチバシだって立派な武器だろう!!


 ママ鳥によって掘り出されるミルキーワームは、なんと夕陽に染まってるせいか、その肢体を赤っぽく染め上げているようで、更に心なしか今までのより大きく見えた。


 いいね、赤いの!! ちょっと強そうに見える辺り、サクッと殺っちまってレベル上げてやる!! 脱レベ1地獄!!


「あ、あれって……」

「ソラ!! ちょっと待ちなさ――」



「食らいやがれっ!!」



 メアリーの呟き、ママ鳥の言葉を耳にしながら、俺は赤いミルキーワームへと頭を振りかぶって新技を繰り出す……!!


 名付けて――



 ばいんっ!!



[条件のアンロックにより、アクションスキルツリー【ビーク】を取得しました]


[アクションによるアンロック、【ビークルスキルツリー】派生、【跳ね返しやがった、だと……!?】を取得しました]



「ちょっ、待って違――」



 攻撃と命名のダブル失敗というまさかの展開に慌てる俺の首へと、何かが巻き付いた。


 は……?


 視界の片隅に映るのは、赤いミルキーワームの両端。それが俺の首もとに器用に伸びていて……



 キュッとされた。



 あぁ、綺麗に決まったな。


 痛みもない。優しい包容。


 安らかに落ちる意識のなかで俺は思う。


 反撃するなんて聞いてないよ。



 あまりにも情けない思考と末路であった。


ソラ先生の来世にご期待ください。がくっ。



 ◇ ◇



 マゼンダワーム。


 ミルキーワームの亜種であり、その気性は凶暴らしい。らしいというのもこの赤いミミズ、他のミルキーワームとは違い、何かに巻き付く習性があるのだ。ただし、生命力はミルキーワームと変わらず、大体巻き付いて死ぬ。巻き付く力は一瞬強いが、死んだ後に弛緩するので一説では凶暴なのではなく甘えん坊なのでは? という意見もある。



「ミミズに負けた……ミミズに……」



 意識を取り戻し、一命を取り留めた俺は泣いた。泣いてからこうして膝を抱え、抱えられないから腰を落として塞ぎ込む事にした。おかしいだろ。俺、ペンギンなんだぜ?


「ソラ……」

「ソラ、げんきない?」

「今はそっとしてあげましょう? ほら、もう眠りなさい、ふたりとも」



 下手な同情は不要。ちょっと欲しいけど、今は放っておいてほしい。ちょっとは構っていいんだよ? でも繊細に取り扱って欲しいの。



「ソラ、明日は勝つのよ? おやすみ」


「……うん、おやすみなさい」



 ママ鳥も、もう寝るらしい。なんというか、好戦的な励まし方だったな。リベンジ上等だけどさ。



 寝ようと思って眠れる心境でもなく、俺は寝静まる三人から少し離れて仰向けに夜空を眺めることにした。



 まだ二日しか経っていないんだよな。俺が異世界に転生してから。



 いったい何をしようか、このペン生で。


何を成せば満足出来るペン生になるのか。どれだけの事が出来るのか、ミミズに殺されかけたペンギンにどれだけのことができる? まじウケるんですけど。


なんにせよ、だ。



「……強く、なりてぇ、かな」



 スキルを覚え、レベルを上げる。


 それで何をしたいか。


 自問に自答は返らない。


 ただ、嫌な事があった。答えの代わりに思い返した出来事があったのだ。


覚えたスキルは奪われる事もある。命と共に。


 もしもの話で、可能性は低いであろう将来。この世界の家族に何らかの危害が及ぶ可能性、その想像だ。妄想ともいう。


 だが、仮でも現実となった場合。俺は守られるだけでいたくない。それは嫌だと思える。守ってみせるだなんて今の現状で自信は心のどこかの自分が嘲笑ってしまっている。



「とはいえ、だ……」



 何一つ解決しないうちから問題は発生する。強くなる為にスキルを覚える。同時にそのスキルが狙われない可能性はあるか。今は皆無としても将来がそう呼べないなら、出来うるだけ気をつける必要がある。心配性だが、この未知の世界には丁度良いだろう。



 では有用で、狙われ難いスキルとは?


武芸は、判らん。そもそも逆水平チョップのスキルを欲しがる奴はいるのか? アビリティとてこの体由来の物なら俺じゃなくてもいいだろ。わざわざ飛ぶための翼を痛めるような真似を――



「あ……」



俺じゃなくてもいい?


 視線にとまる翼とその言葉が脳裏にアイデアが閃かせる。爽快感にも似た感覚だ。


 いい、決して悪くない。ただ、不可能に近いだけで、だからこそなんの目標もない俺には持ってこいだ。


 寝ろと言われたけど、どうしよう。胸がドキドキ、目はぱっちり、眠れそうもない。


 早く明日にならないかな。ワクワクが止まらない俺は何時までも妄想の海を泳ぐ事にした。



 ◇ ◇



「ソラ、もう一度言ってくれないか?」



 朝早く、ママ鳥のいなくなった巣でメアリーはひよこ目をぱちぱちさせて問いかける。てかママ鳥、仕事サボりはダメだよ。なんか朝一にいっぱい野鳥が来て、なんか連れてかれてたけども。おっと、ワンスモアだなメアリー、判ってるって。



 息を大きく吸って、上を見上げる。



 本日快晴。清々しく晴れ渡る空に、(ソラ)は強く、高らかに宣言する。




「俺は、空を飛ぶっ!!」




 寝不足と、深夜テンションを引きずっていた為。端から見たら酷く阿呆っぽく見える事に気がついたのは、後になってからだった。

主人公の決意表明回。

ある意味物語に置ける目標が出来ました。ここまでお読みいただきありがとうございます。

作品を気に入られましたら感想、しおり(ブクマ)頂けると嬉しいです。ぺんぺん。




 名前:ソラ

 種族:ミニペンギー

 レベル:1

心 B

技 E

体 F-

魔 F-


 スキル

  【ふわふわボディ】

  【格闘の心得】

  【逆水平チョップ<T>】

  【種】

  【集中】

new【ビーク<T>】


 称号

  【神*呪%>◎℃】

  【神の悪戯】

  【凶極鳥の寵愛】

  【ペテンペンギン】

  【チョッパーロード】

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