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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第一章 ペン里の道も一歩から
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パタつかせて再確認

 



「やぁ、ソラ。こんな所にいたのかい」



 無数の星が輝く夜空の下、俺は背後からかけられた声に、ごろりと体ごと視線を向ける。くっちゃくっちゃ。



「その、おかあさんから聞いたよ。ミルキーワームに、勝てなかったって……」



 横向きの視界で、一羽のひよこがピヨピヨと話しかけている。なんだよ、今こっちは忙しいんだからよ。くっちゃくっちゃ。



「あ、あまり深く考えない方がいい。何せキミは文字通り、生まれたばかりなんだから……って、何をしてるんだい?」



 どうやら慰めに来てくれたらしいメアリーが俺の顔、口元を注視する。何をしてる? だって?



「ミミズ食って供養してんだよ。ほら、お前も一匹食うか?」



 味の薄くなったガムのようになったミルキーワームは吐き出すにもいかず。とりあえず足元に置いて新たな一匹をメアリーに差し出す。不良在庫よろしくまだまだ残ってるんだ、慰める暇があったら手伝ってくれよ。



「……頂こう。ふふっ、私も生まれたばかりの時はよく食べたものだよ」


「ひよこが何を懐かしがるってんだよ。まったく、普通に食いやがって」


「おやおやこれは失敬、まだまだキミには早かったようで」


「言ってろ」



 抵抗、というか虫を食うのに躊躇(とまど)わない事は当たり前として、メアリーは普通にミルキーワームをクチバシと足で、ぷちぷちと器用に小さく解体していく。嫌みなくらい簡単に千切れるミルキーワームに腹が立つ。



「それはそうとまさか、キミは縛りプレイとかそういった人せ……ペンギン生を送ろうとしているのかな?」


「メアリー、いきなり縛りプレイとか過激なことをいうんじゃない。まだミミズ食べてる途中でしょうが」


「え?あ、そっ、そういうのじゃないから!!」



 突然何を言い出したのかと言葉を返すが、直後にその意味に気がつく。意外と耳年増に憤慨するひよこを後目に、自問自答してみよう。



 縛りプレイ。いわゆる何らかの制限をかけて事を成す、主にゲームで使われる用語だ。RPGで例に挙げれば主人公を使わずに脇役でラスボスを倒したり、アイテム不使用、必殺技不使用、果てには初期レベル装備無しクリア等まで多岐にわたる。


 俺の場合においてはこの貧弱ペンギンというベリーハードな状態を差しているのか。選択不可避の先天的な問題で言えば、確かに縛りプレイ……むしろ縛られプレイなわけなのだろう。なにその変態な単語。まだミミズを食べてる途中でしょうが。



「ってその反応、私の話なんてまるで聞いてないだろ」


「いや、聞いてたよ。ピヨピヨって、可愛らしい声は」


「音としては聞いてもらえたようで何より、なんなら歌うかい?」



 俺からのスルー肯定発言に言ってはなんだが、なんだかんだで思ったより(たくま)しいひよこのメアリーである。願わくば姿勢を正して始まる朝の体操メロディーはやめて欲しい。



「それは次の楽しみにとっておくよ。それで、お姉ちゃんとしてはなんで俺が縛りプレイなんてしていると?」


「うむ、なんて言ったらいいかな。スキルは覚えたらしいし、使っているようにも思えるんだが……どうにも不自然に見えてね。上手く言葉にできない違和感を覚えるのだよ」



 ふむふむ。確かに、言われてみればメアリーはこう見えて先輩だし、俺より何かを知っているのだろう。事実、俺より強いしな。貧弱な俺より。くっちゃくっちゃ、あー、ミルキーワームうめぇな。噛み切れねぇけど。



「そこで、だ。私で良ければ確認の意味も兼ねて色々と説明させてもらうけども?」



 よろしいかな?と問うメアリーに教えてくれるってんなら、是非ともと俺は返す。



 かくして、俺は知る事になる。


 俺は、俺が思っていたより縛られプレイになってた事に。

ストック切れ&寝過ごしorz

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