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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第三章 泣きっ面にペン
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ひよこの初陣


ソラさんとクリムの……あとキィルのやり取りはしばらく続いてるようで、ここから離れてるせいでよく聴こえない。


しかし、どう見ても甘い雰囲気には見えないのは……なんでだろう? 少なくとも私から見ればソラさんはクリムに対して、なんだかこう……意識はしている感じがするのになぁ。


明確な言葉として出てこない感覚的なものだけど……


不可思議な感覚に首を傾げていると、不意に巣へと誰かが飛んできたのが見えた。



「フェニス様!! 緊急連絡です!!」



一羽の鳩さん……確か、ヒメモリさん?


いったいどうしたのか? 誰もが抱く疑問を口にする前に――



「領域の北西よりオーク族及びゴブリン族、南方より爬虫族の集団が接近しています!!」



分かりやすくその危機を叫んだ。



領域への襲撃。



少なくとも私が産まれた時から一度もなかった出来事に、気持ちが追い付かない。というのが感想だった。


毎日のように餌となる昆虫との戦いや、今し方模擬戦を通しても、理解しきれない所が多い。


しかも、話によれば多種多様な種族が各方向から同時に来ているらしく、話はどんどんと進んでいく。


一瞬取り乱しそうになる私を諭すように答えた頼もしいお母さんとジョルトおじいちゃんというふたりがいてもまだ手が足りないのに……


ヒメモリさんの到着に遅れる形でこの大きな巣へと避難する鳥達が次々と姿を現す。みんな何処か落ち着かないように見える所からも、この事態の異質さを物語っているようだった。



だとしたら、だとしても……



「……おかあさん。私も戦うよ」



今の私には、出来ることがあるはずだ。



◇ ◇


事態が切迫していくなかで、私達の割り振りが決まっていく。数だけならば圧倒的不利だけど、それを覆す事はきっと不可能なんかじゃない。


 東に現れた大型の地龍はお母さんが対応し、私、ジョニー、ジョルトおじいちゃんが北西から来るオーク達を北から対応……


南から来るという爬虫族をソラさん、クリム、キィル。それとカラスのひと? が対応する事となった。


お母さんと私達はそれぞれの敵と戦いながらソラさんの援護へと急ぐ形で作戦は決定。決定したとはいえ、どう見てもソラさんが心配になってくる。


他意のない事実として、お母さんとジョルトおじいちゃんは分けるべきだし、大型地龍とかいう存在は飛べるお母さんが適役だ。


ソラさん達が圧倒的に戦力的不利なのに、私とジョニーはジョルトおじいちゃんと共に行く事になった。三姉弟のなかで一番弱いソラさんの負担は余りにも大き過ぎる……!!



「ソラ!! 私達も直ぐに行く……だからそれまで持ちこたえていてくれ!!」



お母さんの背に乗る私達の下で、たったひとり。ミルキーバリスタに背を預けるソラさんへと叫ぶ。


彼の行く先にある湖へと誰よりも早く駆け付ける為に、一度は死にかけたであろう装置を使う。ソラさんの考えてる事がまったく理解出来なくなりそうだった。


「持ちこたえる? サクッと片付けてやるよ。終わったら再戦だからな? 次こそ泣かしてやるからな」


言葉が返ってくる事自体が予想外でもあったけど、余裕そうに笑む姿はどう見ても――



「っ……そんなフラグ臭いことを……!!」



私の声に今度は返事はなく、お母さんに目で合図。ソラさんが湖へ向けて飛んでいく、追いかける形で一羽のカラスが飛び、私達も巣を離れる。



「クリム、キィル」



浮遊感と風切り音の中で私はふたりに声をかける。極樹の下で降り、ソラさんを追うふたりだ。声が届いたふたりの視線がこちらを向く事を返事として、改めて私はふたりへと頭を下げる。



「ソラさんを頼みます。必ず行きますから」



激しい風切り音のなか、届いたかは分からないけれど。これは半分以上が、私に向けての宣言だ。


同時に遠くに見える北側の森への宣言だ。



――私の初陣が、始まる。



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