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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第三章 泣きっ面にペン
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ひよこと恐れ


口の中に感じる鉄の味は自分のせい(ノーカウント)、でもそれ以上に身体が痛過ぎ……!!


ジョニーの体当たりを避ける為に咄嗟に取った行動とはいえ、自分の風術をもろに当たるとどうなるか。知りたくはなかったけど、あの突進を受けるよりずっとマシなはず……だと思いたい。


ジョニーはジョニーで着地に失敗したらしく、奇しくも私と同じように痛みにのた打ってるようだ。すぐに体勢を整えなきゃいけないのはお互いに理解しているけど、けれども痛いものは痛い……!!


なんとか体勢を先に整えたのは……私のほう!! 可哀想だけどこの隙を逃してあげられる余裕はない。



イメージするのは風の羽根を模した矢。



翼を振って巻き起こる風を集めて……撃つ!!



風羽根(ウィンド)(アロー)。キラーマンティスの幼体群の戦いの後から学んだ一対多用の魔術だ。詠唱を起点とせずに自身の起こす風を起点にする速度重視の魔術。


一撃の威力の高い風の(ウィンド)一突き(スナイプ)の方が個人的に好みだけど、状況的にこれが最適解!!


細かな狙いが付けられないのは今後の課題だけれど、質より量の風の矢がこちらへ向かおうとするジョニーへと殺到する。


「わぁ!!いたい!!」


悲鳴をあげるジョニーに罪悪感が滲む。どうして避けないのか、どうして逃げないのか。模擬戦だから威力は抑えてるといっても何度転んでも立ち上がり、ただひたすらにこちらへと突進しようとする。


「っ……しつこい」


まるでなんとでもないと言われてる気がして、翼を大きく広げて風を大きく吹かせる。狙いをつけるコツも次第に掴めてきた。同時にジョニーもまたクチバシと頭で弾く事を覚えたのか、諦めることを忘れてるかのように突っ込んできた。


マナはまだ保てる。距離も詰められてない。まだまだ大丈夫。


それなのに、この予感はなに?


怪我を負ってるのも、息を切らせているのも、ジョニーの方なのに。


いつしか近寄る距離が短くなる。弾かれる回数が増えていく、しかも手際が良くなっていく。


なんで……


鋭い目が、私を貫く。


なんで、倒れてくれないの。


震える体で、血のにじむ足で。


どうして……!?



「いけぇぇっ!! ジョニィィィィッ!!」


「っ!?」



不意に響き渡るソラさんの応援に呼応するように――



「――――ッ!!」



音が爆発した。



予感は既に確信へと姿を変えていた。


いつもの愛嬌のある姿から漂う雰囲気は、いつものそれではなく。


「あ、あぁ……」


射抜くような鋭い視線から目を逸らしたいのに、逸らすことが出来ない……


「い、や……」


だって、いま目を逸らしたら――





"私は、死ぬ"。




予感ではない確信。


踏み抜く勢いで突き立つジョニーの足はカウントダウンのように。



その足元が爆散した直前に私が見たのは、ジョルトおじいちゃんの背中だった。






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