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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第三章 泣きっ面にペン
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考えるひよこと考えたひよこ

 

 ジョニーの鍛錬を横目に、私は改めて思考の海に身を委ねる。


『アンロック ステータス オープン』


 意見交換は出来ずとも思考は出来る。新たに取得した物も確認したいし――



 名前:メアリー

 種族:ひよこ

 レベル:28

心 D

技 D+

体 E

魔 C+


 アビリティ

 【ふわふわボディ】

 【魔術の心得】

 【格闘の心得】

 【術制御 初】

 【反骨心】


 スキル

 【強制体操】

 【クロー<T>】

 【ビーク<T>】

 【ムーンサルト】


 スペル

 【風術 破<T>】


 称号

 【神の遊技】

 【凶極鳥の寵愛】

 【爪を立てるひよこ】

 【つつくひよこ】

 【風を起こすひよこ】

 【拳聖グリアルド拳闘流 門下生】

 【風の子】



「ふふっ……」


 おっといけない。思わず笑みが漏れてしまったようだ。


だが、これは笑わずにいられようか? 自分の成長ぶりが恐ろしくなる。


 攻撃範囲は格闘の近接から風術の遠距離、ムーンサルトで変則技、ふわふわボディで物理軽減。欲を言えば魔術対策が欲しくなる。いけない、いけない。


 さて、新しく手に入れたのは、と……



 アビリティ【反骨心】

 所持者の深層心理によって生まれたアビリティ。反撃判定攻撃への補正。気性に補正。


 うーん。カウンタータイプのアビリティかな? 気性に補正ってあるけど、私自身は変わった気がしないなぁ。少なくともデメリットはない。


 それじゃ、次。これは見るのが楽しみだ。


 称号【風の子】

 風術の扱い方が板に付いてきた証明。風術の威力、制御に補正。



 シンプルながらもありがたい効果だ。縁の下の力持ちといった感じかな。おかあさんから貰った称号の風補正と比べるとやっぱり凄くないけど。うんうん、いい傾向だ。


 これからのステータス育成計画を思い描きながらも、私はその称号を見る。全ての始まり、ターニングポイントとなった称号。


 【神の遊技】

 取得経験値上昇。補正低下率変化。全ステータス低下率変化。



 名称の響きはアレだけど、効果を見ればまさに祝福といっても過言ではない。もう一声と言いたいけど、心強いアドバンテージに代わりはない。


 ソラさんが覚えたであろう奥義は取ったし。次はどうするか。考えるだけでもワクワクする。ワクワクしない方がおかしい。


 うーん、ジョルトおじいちゃんと鍛錬して近接強化は決まりとして、おかあさんに教えて貰って風術……えっと、クリムは何か知ってないかな? 回復とかも覚えてもいいかもしれない。ソラさんは――




「……ソラさんは、どのくらい強いのかな?」



 高ぶる感情の隙間に思わず口から零れた言葉に、自然と思考が向けられていく。


 前に森で子カマキリに囲まれた時。あの時、背中を合わせたソラさんは、最弱ミミズに遅れを取っていたひととは思えない強さを持っていた。


少なくともあの状況から生き延びられた一因として大きな要素がソラさんという存在だ。


 今の彼のレベルは? アビリティ、スキル構成は? スペルはまだ覚えていないだろう。ジョルトおじいちゃんのスキルを覚えたという事も看過できない。



 なにより多分、ソラさんが神様から貰った称号は私と違う。


 言い方は悪いけど、私は転生した直後でも最弱ミミズに負けたりなんかしなかった。震えながらも爪で刺したのが何だか遠い昔のように思える。



 ねぇ、ソラさん。


 私は貴方と話がしたい。同じゲームの話をする友達のように楽しく、同じ世界に生まれた仲間として……



 自然と視線はソラさんを探していく。


 そこには――



 なぜか巣を掘るクリムと楽しげに話すソラさんの姿が。



 これは、これは……ラブコメの匂いがしますねぇ!!



 仲の良いふたりの姿に私の思考はちゃぶ台を返したように吹き飛び、本能が告げるままにお邪魔させて貰うべく行動を開始した。



 ◇ ◇



 思考に耽っていた為に気が付かなかったけれど、時刻は既にお昼時といった所だったらしい。遠くから聞こえるふたりの声から状況の把握に成功した。


 どうやらクリムはご飯を探しているらしい。常識的にも客観的にも腹をすかしたからと言って巣を掘る姿は末期と言っても過言じゃない。ただし、この巣においてはあながち間違いではない辺り、常識とは? と思う部分はある。



 そんなふたりの下へ私がお邪魔、もとい様子を伺おうとした直後にソラさんがそのクチバシを天高く伸ばした。その姿はまさに、やれやれ仕方ねぇな。と言わんばかり。


 ソラさんって、やれやれ系主人公をしたい節がある気がする。もったいぶるとまではいかないけど。



 ――頑張れ、ソラさん。



 果たして、良いところを見せる事が出来るか。少なくとも私はソラさんがご飯を調達出来た姿を見たことない。


 忍び足を止め、固唾を飲んで見守るなか、巣を突いたクチバシが高く掲げられた。そこにあったのは……




 赤いミミズ。


 マゼンダワームだった。



 惜しい!! 食料は食料だけど!! 流石にクリムの食べられる物だったら……うん?



 おや? ソラさんのようすが……?



 まさか……クチバシで(うごめ)く赤ミミズが、巻き付いたまま取れないの!? これは痛い!! 格好悪い的な意味で!!


 ないですよソラさん。赤とはいえミミズの悪足掻きにいいようにされて、あの時に背中を合わせた頼もしさは幻だったの!?



 ……まったく、仕方ない。



「……ソラ様?」


 見ろ、クリムも困惑している。こんなグダグダなペンギン男のフォローを出来るのは、私をおいて他にいまい。やれやれ。まったく、仕方ない。



 ごほん。あー、あー。



「……ふたりで探した方が早く見つかるだろ?」



 ……うん、似てなかったね。ごめんね、ソラさん。正直、ここまでダメダメだとは思わなかった。幾らなんでもこんなので騙されるほどクリムは――



「そ、それはそうですが。どうか私の方はお気になさらず、ソラ様は先に召し上がってください」



 クリムは、残念だった。



 ど、どうしよう? ソラさん。この子びっくりするくらい残念だよ!?


 まさかまさかの展開にソラさんへ助けを求めるけど、クチバシを巻かれたソラさんの視線から察するに……



 続行するべし、かな。よしっ!! 私も腹を括ろう!!



「ごほん。そ、そんな事より、なんだ? クリムと一緒に食べた痛っ!!」



 咄嗟ながらも渾身の声真似は、翼で打たれて最後まで言わせて貰えなかった。割と普通に痛かった。ふわふわボディに守られた私の防御を抜くとは、まさかソラさんの神様特典は防御無視系――



「わ、わた、私と一緒にだなんて!! そんな、とんでもない……」


「「…………」」


 今の一部始終を見て尚も気が付かない、残念天使クリムに私もソラさんも言葉を無くした。



「リム、ごはんとれた!!」

 

「え? あ、ジョニー様、これは……」



 どたばたと賑やかな足音と共に現れたジョニーが、果実の実った枝をクリムの足元に置く。ソラさんが出来なかった事を平然とやってのけるジョニー。そんな無自覚系主人公に痺れるよりも、憧れるよりも、戦慄を覚えざるを得ない。ジョニーの将来が怖い。



「ごはん!! そんでもって、おれ、かんがえた!!」


 御機嫌なジョニーに私達は言葉の続きを待つしかない。完全にジョニーのターンで――



「おれ、おれやめる!!」



 …………?



「ソラ、解読頼む」


「ぷはっ、やっと取れた……なんで俺だよ」


「あ、あのジョニー様? それってどういう事でしょう?」



 一同が疑問符を浮かべる内容に、ジョニーは、うーんと、うーんとと首を捻る。かわいい。ジョニーかわいいよジョニー。



「おれ、おれさまになる!!」



 一生懸命考えた末に出してくれたであろう言葉は、つまり……


「ソ、ソラさん。ジョニーがグレました……!!」


「落ち着けメアリー、素が出てる。それとグレたわけじゃないよ」


「はっ、そ、そうなのか……!?』



 一瞬、黒いサングラスをかけて辺りをパラリラ言いながら暴走するジョニーの姿が脳裏をよぎってしまったけど……それはそれでかわいいと思う。



「ソラ様。何か解りましたか?」


「まぁ、なんとなくだけどな……」



 ただひとり合点がいったように頷くソラさんに促されるまま、私とクリムと三人で額を合わせる。


 ソラさんの話を要約すると、強い男を目指す上においてのひとつ通過点(様式美)。


あぁ、はいはいなるほど、そういう事ならよくよく判ります。前世で近所にいた男の子も、我様(われさま)が世界最強である!! と息巻いてよく分からないチェーンをジャラジャラさせていた時期がありましたし……ただ何年か後に、彼は俺と一人称を変えてすっかり大人しくなってしまったんですけど。なんでやめてしまったんだろう?



「おれさま。かっこいい?」


「あぁ、凄くいいと思うぞ。ならば、私がジョニーの二つ名を考えてやろう」



 そうだな。大地、大樹、陽光という適性属性を絡めると――


「え、っと……」


「俺達は飯にしようか」


「はい。あ、ジョニー様。有り難くご馳走になりますねー」


「おまかいなくー。あれ? あっ、おかまいなくー。そんでもってメア、かっこいいやつがいい!!」



 ふふ、任せろ。ベースはできた。自分の才能が恐ろしいよ……



「まったく、誰から聞いて覚えたのか。迂闊な事は言えんのぅ」



 シャイニングアース。いや、グランドシャイニング。待てよジアース――


「師匠。何してたんですか?」



 えっと、グランドシャイン、ユグドラシル、シャイニングツリー、違うなぁ。シャイン――



「うむ。昨夜はベッドしか作れなかったからの――」


 シャイニングツリーベッド!! えっ!? 何か降りてきたかも!? 降りて来たかな!?



「ソラよ。飯が終わったら屋根を組むぞ」


「……午後から稽古があるの、付き合えないわ」


「今日は休め」



「なぁなぁ、ソラ。シャイニングツリーベッドと言うのはどうだろう?」




「何を言ってるんだ、お前は?」




 うん。自分でも判らない。 



ついに明かされたメアリーの神様特典。

ぶっちゃけチートというかは微妙ですが。

相変わらずの情緒不安定ぶり、メアリーは問題児かよ。問題児だよ。

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