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パタつかせてペン生~異世界ペンギンの軌跡~  作者: あげいんすと
第三章 泣きっ面にペン
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メアリーの才能

 

 お昼までまだ時間もあるという事もあり、気持ちが落ち着くと、私はジョルトおじいちゃんと鍛錬を始めた。



 一応、一番弟子のソラさんには悪いけど私の場合、鍛錬に走り込みはない。ジョルトおじいちゃん曰わく、どうせその内に飛ぶなら必要以上に走ることもなかろう、である。


 ちなみに、これについては流石にソラさんには言わないであげて欲しいとお願いした。


いつか飛ぶのは周知の事実としても、ペンギンという存在が本来は終生飛べない存在だとジョルトおじいちゃんが知っているかはさて置き、ソラさん本人はまだ飛ぶ事を諦めていないようだし……



 それはさて置くとして。



 ジョルトおじいちゃんと私との鍛錬は、"打ち込み"である。


「速度はあるが……っ!!」


 風を纏わせた翼撃がジョルトおじいちゃんに防がれる。直後、風を起こして体勢を整え、多少苦し紛れながら蹴り足で風の矢を放つも、雑になった動きで放つ矢は軽く腕で振り払われた。


「やはり軽い、その身では無理もないが……さぁ、どう出る?」


「ふ、くっ……はぁ……次は――」


 当初は十度も満たない程度で疲れ果てた打ち込みだったけれど、この身体は順応が早い。今ではそれを数セットこなせるくらいにはなっていた。


それでもまだまだ満足の行く結果は出せそうにない。


 無理もない、なにせ相手はこの世界の人類でも屈指の存在。拳聖と謳われるほどの――


 思考を遮るように投げ放たれる枝に、一瞬だけ反応が遅れる。距離を離せばすぐにこれだ。


 たかが一瞬だ。


 しかし、それは致命的な一瞬でもある。


 回避は不可能と、咄嗟に翼で防ごうと顔を隠して――



「"取ったぞ"」



 翼に当たる小さな痛みの後に、私の背中に当たる枝の感触と声。遅れた形で後悔がやってくる。


 またやってしまった、と。


「……すいません」


 自分の翼が死角になった瞬間に回り込まれたのだ。投げた枝と同じような速度で回り込むのもおかしな話だけど、なんにせよ自分で死角を作った私が悪い。


次はどう対策をしたらいいかな……



「うむ……それより、大丈夫か?」


「え? あ、はい。もう一度お願いします」


「あぁ、そうだな……」



 いつもなら問答無用と少しの間もなく再開するのに、今日のジョルトおじいちゃんはやっぱりなんだかおかしいような気がする。思えば枝の勢いもいつもより弱かったような気もするし……なんだろう。


「よし。来い」


 再開の声に浮かぶ疑問は一度蓋をして、気持ちを落ち着かせる。


 互いの距離は少し遠い。


ジョルトおじいちゃんの手には剣に見立てた長い枝、そして投げナイフに見立てた枝。一応ながら対剣士という想定での立ち会いになる。


ただ、基本的に剣を振るってこないのは拳聖だからか、徒手空拳が多い辺り剣闘士……いや、最早ただの武闘家なのだが――



 思考を長考と捉えたのか。ジョルトおじいちゃんが枝を投げ放つ。先程よりも遠い間合い、対処は十分出来る。



 翼を振るい、風の矢で迎撃。生憎当たらずとも風に煽られた枝の軌道は、簡単に私からズレる。一方で風の矢は避けられるけど――


 ひとまず今回も、撃ち合うか。


 ジョルトおじいちゃんも、そのつもりらしい。私を中心に旋回しながら徐々に距離を詰めながら枝を投げてくる。


 これが始めの頃は本当に苦戦した。


 飛んでくる枝に気を取られていれば、一気に距離を詰められるし、かといって枝に集中しないと撃ち落とせない。ある意味ではソラさんと同じく、私も的当てのようなものだ。



 二、三、四……



 枝を撃ち落とし、逸らし、時には牽制にジョルトおじいちゃんへ放ち、その数を心のなかで数える。


 枝とて無尽蔵にあるわけではない。基本的に、実践で投げナイフが足元に落ちてる事なんかほぼないだろうという点から、本数は不明だけど限りのある物としている。


 対する風の矢は、時間と共に回復するので無尽蔵ともいえる。風術の使い方にも寄るけれど、一本ずつ風の矢なら強さを調整していけば、後を気にせずを撃てるようになった。これもこの鍛錬と制御鍛錬の賜物か。



 八、九……そろそろか。



 渦を巻くように距離は少しだけ縮まっている。均衡した状態を変える為には戦術を変えなければならない。正確にはここから主導権をどう取るか――



「っ……!?」



 十本目の枝に対する風の矢が、大きく外れた。枝の軌道は変わることなく、私へ向かってくる。飛び退くように体勢を崩した私を見逃す筈もない。


 先程のような不条理な速度での回り込みは、死角を自ら作った場合のみ。今回はただの隙と見たのか、握る枝を構えながらこちらへと向かって――



 ――それを、"待っていた"。



 珍しく枝剣を横凪に振るったジョルトおじいちゃんだけど、振り抜いた音だけが虚しく響き渡る。


そこには、誰もいませんよ?



 スキル、【ムーンサルト】。



 私のお気に入りとも呼ぶべきスキルにより、既に私はジョルトおじいちゃんの上を舞っている。


 さぁ、ここから打ち込みだ!!


 宙でくるりと一回転する勢いに風を取った爪を頭上から放つ。あっ!! この動きはいい感じ!!



[アクションによるアンロック、【クロースキルツリー】派生、【†三日月蹴り(クレッセント)†】を取得しました]



 スキル、頂きました!!


 刹那的な高揚感も程々に、ジョルトおじいちゃんは枝剣で受け止める。枝の一本程度へし折れると思ったけれど、不自然な程頑丈な枝に執着はせず次を狙う。


 その選択は間違いないじゃなかった。ジョルトおじいちゃんが枝剣を手放したのだ。剣士が簡単に剣を捨てるの!? なんて疑問を持つことは一瞬も許されない。


 お決まりの風の矢を左右で至近距離で撃ち出せば、左右の掌が向かい入れるように――


 まずっ!? 何度か見た光景に焦りが募る。



 流転。



 嫌な予感は寸分違わず当たってしまう。良いところまで行った時は大体これでやられる。


 左右の掌に触れた風の矢は、その標的を私に変えて襲いかかるだろう。思考タイムはほぼゼロだ。直感で勝負しないといけない。



 そして、直感で選んだ行動。




 それは――




お待たせしませんでした!!

はい、引っ張ります。ごめんなさい。


今夜辺りにいければいいのだけど。


そう言えば短編書きました。

いや、むしろあれは短編というより……

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