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第五章 デート、浸食、ターゲット。

 第五章 デート、浸食、ターゲット。


 赤ペンで記した文字間の狭い癖字が、原稿用紙のあちこちに生意気な指摘や感想を残していく。

 そして末尾の余白に、私は短い私信を書き添えた。

 もしかしたらあなたは、作家の好みが私と同じかもしれません。

 違和感なく読み進められるこの小説の文体は、私が日頃愛読する先生のそれとよく似ていた。


「店長~。関君は今日もシフト入ってないんですか?」

 耳に届いた客の一人からの問いかけに、思わず意識を集中させる。

「申し訳ございません。あいつはしばらく暇を頂いているんですよ」

 眉を下げて受け答えをする栄二さんに、問いかけた客はもとより周囲にいる他の女性客も揃って肩を落とした。

「そっかぁ。いつくらいに戻るんですか?」

「そのうち戻りますよ。それまでは私とゴンだけでご勘弁下さい」

 もう何度目だろう。同じ内容、同じ口調、同じ表情で返される答えに、私はじりじりと苛立ちが溜まっていく。

 達観している気配が漂う栄二さんの「そのうち」は、何ヶ月後とも何年後とも何十年後とも思えた。

「そんなに気になるってことはさ、ずばり! 透馬君のことが気になってるってことじゃないの?」

 アイスココアをストローで啜りながら、奈緒は何度目かわからない指摘をした。透馬が姿を眩ませてからもうすぐ一ヶ月になる。

「雲隠れの前に杏に会いに来たんでしょ? わざわざ! それから何も連絡もないんだ? メールも、電話も?」

「ない。そもそもあいつにそんな個人情報を漏らしてないし」

 つっけんどんに答えた私は、手元のカプチーノをぐいっと呷る。

 別に何が変わったわけでもない。あいつと知り合ったのだってここ数ヶ月のことだし、以前の私の日常に戻っただけだ。早めに貸し借り精算しておいて本当に良かった。

「強がっちゃって~」

 困ったように笑う奈緒に、私は気付かない振りをした。


   ***


「尾沢教授? あのやたらボディータッチの多いハゲ親父?」

「今野さん、正解です」

 文学部棟を行動範囲に入れている女なら常識問題だ。

「オザワ教授」=「オサワリ教授」で通じるようになることが、この大学にとけ込めたある種の目安としてもいい。

「んで。オサワリ親父がどうしたの? 確か、この教授も被害者だったよね」

「はい。そしてこれは、被害者情報の一覧です」

 あの後、図書館で頻発していた中傷書き込み事件の犯人捜査は少なからず進展を見せていた。

 まずは奈緒に言われたとおり、被害者のゴシップを知る人物に心当たりがないのか、今一度聞き取りをした。どこかでそれを話さなかったか、話した相手は誰だったか。

 その結果浮かび上がった共通点は、いずれもこの大学関係者。しかしながらその範囲は学生から教授陣まで幅広く、特定の誰かが浮かび上がる、なんて都合のいい展開には当然ながらいかなかった。

 また、氏名に使われた旧字についてはどれも正確に記されていた。

 ただ一人――尾沢教授を除いては。

「へぇ。つまり、オザワ教授の『ザワ』は、さんずいに尺の『(ざわ)』が正解なのね?」

「そうなんです。でも中傷文にあった尾沢教授の名前には、新字の『(ざわ)』ではなく旧字の『(ざわ)』が使われていました」

 ちなみに尾沢教授についての中傷内容は、いわずもがな女性職員及び女子生徒への執拗なセクハラ行為だ。

『法学部法学科教授・小澤鉄郎教授は、女性職員及び女子学生に対し日頃執拗な事務作業を言いつけては己の研究室に誘い込みセクハラ行為に及んでいる』――こんな胸糞悪い文面に、まさかこんな風に向き合うことになるとは。

「そして問題は、何で犯人がわざわざ旧字の『澤』を使ったのか、です」

「犯人が漢字を間違えて覚えていた?」

「そこなんですが、あの教授、五年くらい前に市役所でもともと旧字だった『澤』の字を、新字の『沢』に直す手続きをしたらしいんですよ」

「え。そんなことできるの?」

「旧字から新字への変更は、意外と簡単に認められるみたいですよ。それ以来、大学の所属名簿から何から綺麗に『沢』を使っているみたいで」

 つまり、犯人がここ二、三年の間で尾沢教授を知ったのだとすれば、今回の中傷文で旧字の『澤』を使う理由はない。それらを踏まえて整理すると。

「犯人は大学関係者。加えて恐らく勤務歴が五年以上の、大学関係職員の可能性が高いと考えます」

 手元の資料を静かに閉じる。そして以前と同様、周囲を取り囲んでいた先輩司書の拍手喝采が沸き起こった。

「はぁ~。相変わらず凄いわぁ小野寺さん。これから本当に犯人特定も夢じゃないかもね!」

「でも、条件に該当する人なんてたくさんいますからね。その中の誰が、何の目的でこんなことをしてるのか」

「んー。現代の犯罪って、動機もあってないようなもんだからねぇ」

 確かに、先輩たちの言う通りだ。

 何はともあれ、その後も先輩司書から浴びせられる賞賛の言葉に居心地悪さを感じながら、この空間の物足りなさにひとり顔を上げた。

「そういえば、今日、中吉ちゃんは?」

「来てるよー。さっき返却図書を戻しに行くって言ってたけど」

 関心のなさげな先輩を尻目に、これ幸いと私は事務室を後にする。賞賛のシャワーも、あまり浴びすぎると身体に毒だ。

 その点、中吉ちゃんがいてくれるときは彼女が全員分の反応を一手に引き受けてくれる分心持ち清々しくいられる。あの子は私と違って、自分の感情に素直な子だから。

 カウンター横で広がっていた書類をまとめ、中吉ちゃんの手助けに向かおうとした時だった。

 後方で人の気配がしたのと同時に、書籍の崩れ落ちる音が聞こえたのは。

「中吉ちゃん?」

「小野寺さんっ」

 目に止まった人影に、私は反射的に声をかけた。どうやらまた本の山か何かを崩してしまったらしい。あわあわと焦りを露わにする中吉ちゃん。

 その足元にページ面を下に落とされたえんじ色の書籍の表紙を見留め、私は苦笑を漏らした。

「まーたやっちゃったの? 中吉ちゃんってば。今日は主任もいる日だから、お小言気を付けないと」

「……た、たたっ、大変です小野寺さんっ!」

 口の中で何度も言葉のお手玉をしながら、中吉ちゃんが書籍もそのままに急接近してくる。

 その対策も手慣れたもので、私は彼女の額を人差し指で押し止め笑顔を浮かべた。

「なーにが大変? っていうか、散らばった書籍を拾わないと……」

「そ、そのっ! 小野寺さんの彼氏さん? にとっても似た人が、図書館のホールにですね……!」

「――」

 透馬が?

 瞬時に浮かんだのが奴の名だという事実に、気が付く余裕もなかった。

 一ヶ月だ。

 この一ヶ月、仕事にも散々穴をあけて――これは栄二さんが納得しているようではあるが――どこにしけこんでやがったあの野郎。

 咄嗟にゲートの先に視線を向けるも、学生たちがいつものようにまばらに入り乱れていて、目当ての人影は見えなかった。

「あの……入ろうかどうか、凄く迷ってる様子でしたから。私、小野寺さんを呼んできますかって聞いたんですけど、いいって言って」

「もしかしたら、帰られたのかも……」言い終わるか分からない中吉ちゃんの言葉尻を耳に掠めながら、私は窓口の扉を押し開けた。

「いい」って、なんだ。「いい」って。こっちはちっとも良くないわ……!

 職員証をかざす動作も煩わしく思いながら、職員用ゲートをくぐり抜ける。目を見張って立ち止まる生徒もいたが、気に止めることなく私は辺りをくまなく見回した。

 見ればすぐに目につくはずの長身は、どこにもない。思わず玄関へ繋がる階段に足をかけようとしたところで、ようやく我に返った。ちょっと待て。落ち着いて考えろ。

 何をしてるんだ。私は。

「小野寺さんっ!」後ろから慌てた声が投げかけられる。ああ、自分の後輩にまで、こんなに困った顔をさせて。

「あ、の。やっぱり、帰っちゃったんですかね……?」

 静かに息を吐いた。先輩の顔つきに、静かに戻す。

「ごめん。驚かせちゃったね」

「い、いいえっ! その、私……」

「戻ろうか。そろそろ主任が来ちゃうから」

 中吉ちゃんが申し訳なさげに眉を下げているのが目に止まり、私はぽんぽんと彼女の頭を撫でた。詫びるべきは私の方なのに。

 自嘲の笑みを浮かべる。窓口を飛び出していった自分は、どんなに情けない表情だったろう。

 職員用ゲートを再び開く。前に奴を介抱してやったフリースペースに一瞬視線を向けかけ、結局やめた。


   ***


「いらっしゃいませ。杏ちゃん」

 目の前に咲く、何事もなかったかのような笑顔。

 当たり前のように現れたコイツに、殺意に似た感情がぽつりと胸に色を落とした。奴の足元からひょこりと顔を見せたゴンちゃんの愛くるしさに、沸き立ちかけた激情を何とか押さえつける。

「……どうも」

「お変わりなくって感じだね。どうぞお好きな席に」

 雲隠れしていたことが嘘みたいな光景。心なしか女性客比率が上がったように見えなくもない。そんな「カフェ・ごんざれす」の店内を、透馬はブランクを感じさせない立ち回りで動き回っていた。

 私はといえば、何ともいえない胸くそ悪さに眉をひそめる。てめぇ、よくも飄々と。涼しげなその胸倉を掴み上げたいところだが、生憎ここは人目がある。今この状況で実行しようものなら、きっと私の方が周りの女性客から袋叩きだ。

「杏さん。すみません、無理を頼んでしまって」

 入口付近で立ち尽くしていた私に、厨房から出てきた栄二さんが声をかける。ああそうだ。私は別に、透馬の馬鹿に用があったわけではない。

「いえ。私のほうこそ、忙しい時間帯に来てしまいましたね」

「とんでもないですよ。透馬、シフォンを二番卓に」

「はいよっ」

 栄二さんの一声で、透馬は再びお客さんの元へ向かう。その作られた隙を逃すまい。

 意志疎通を交わした視線を合図に、私は栄二さんへ茶封筒を素早く手渡した。そして同時に、栄二さんから新たな茶封筒を受け取る。まるで怪しい取引でもしているような自分たちが可笑しい。

「ありがとうございます。すっかり甘えてしまって」

「いえ。これで結構楽しんでますから」

 初めは唐突に頼まれてしまった小説の推敲作業は、今でも定期的にお願いされるようになっていた。

 舞台はそのまま引き継がれるものの、初回とは別の視点から語られる物語。どうやらこの作者は、これらのすべてをまとめて一つの作品とするらしい。いまだ伏線が多く、一読者として続きが気になるところだ。

 本当はこのまま、ここでお茶をして帰ろうと思っていたのだが。

「今日はちょっとこれから用事があって。また今度ゆっくり、寄らせてもらいますね」

 尤もらしい台詞。それでも、微かに焦げ付いた感情に栄二さんは感づいたと思う。

 笑顔を交わし、奴の顔も特に見ることなく私は店を後にした。突き抜けるような青空を見上げ、大きく嘆息した。

 何だ。元気そうじゃねーの。くそ野郎。

 唐突に姿を消した奴を糾弾する資格も理由も、私にはない。ただ、ほんの少しくらいは心配してやっていたのに、と。

「ちょっと待った!」

「きゃあっ!?」

 歩みを再開しようとした矢先、もの凄い力で後方に引っ張られる。

 咄嗟に振り返った先には、八つ当たり真っ只中だった透馬が必死の形相でこちらを見つめていた。しかしながら視線がかち合った瞬間、目の前の顔から呆れたような笑みが滲み出る。

「何よ、その顔は」

「相変わらず思い通りになってくれないね。杏ちゃんは」

「何だそれ。……っていうか仕事。放っていいの?」

 指摘に微かに苦笑いを浮かべた透馬は、それでも腕を離すつもりはないらしい。

 太陽の下。改めて眺めてみた奴の顔色は、どうやら本調子とまではいかないようだ。

 相変わらずの白い肌に、僅かに青みが透けている。図書館のフリースペースで刻まれていた目元のくまは引いているらしい。栄二さんも、これなら接客業には支障ないと判断したか。

「ふ。そんなに見つめられると照れちゃうよ」

 全く照れていない口調に溜め息をこぼす。しかしながら、その真意は呆れではなかった。

「へへ。もしかして杏ちゃんも、少しは俺のこと心配してくれた?」

「……馬鹿じゃないの」

「ははっ、だよね」

「心配するに決まってるでしょ」

 軽口を飲み込む気配がした。

 見上げた透馬は何故か反応に窮していて、私は怪訝な表情を浮かべる。動きが止まった間抜け面に、徐々に腹が立ってきた。

「あんな具合で外をふらふらふらふら出歩いて。そんなだから体調崩すし熱も出るのよ。いっそ女から病気移されて家で大人しく寝込んでろ、この種蒔き馬鹿!」

「杏、ちゃん」

「私が!」

 堰を切ったように、本音がこぼれ落ちる。

「私が――あんな風に、あんたに水を浴びせちゃったから」

 熱い吐息をつく。性急に打ち鳴らす鼓動をそっと落ち着けるために。

「喫茶店であんな風に水を浴びせたのは私だから。だからこれでも、人並みに責任を感じてた」

 語尾が、微かに震える。それでも、半端な言葉を残したくはなかった。

 癇癪起こした挙句水をぶっかけるなんて。あれはどう考えても、やり過ぎだった。

「ごめんなさい」

 顔が歪みそうになったのを隠すように、私は頭を下げた。

 砂混じりの苦い風が辺りを吹き抜ける。過ぎ去る音を遠くしてもなお、透馬は言葉を発しない。

「病院には行った? せめて治療費を、」

「……かーわーいー」

「……」

 単語として意味を捉えそびれる。

 ぽかんと呆けた一瞬をつくように、透馬の胸が無遠慮に私の視界を覆い隠した。

 身体中を包み込む温もりには記憶がある。図書館で落ちてきた本から庇われたときと同じ体温で。

「ちょ……!」

「やーっぱり。思い通りになってくんないなぁ~、杏ちゃんは」

「はっ!?」

「ふ。何でもないよ。ただ、」

 すごく可愛いなって、思っただけ。

 楽しげな笑い声が耳の近くに届き、噛みしめるたびに体温が上がっていく。

 口にした謝罪の言葉も忘れ、私は身体ごと振りかぶった拳を奴の腹にめり込ませた。鳩尾から引き抜いたと同時に、透馬が道路に膝を付く。イタリアに帰れ似非イタリア野郎。

「俺……いちお、復帰間もないんだけど……?」

「世の中には自業自得という言葉があるのよ。透馬君」

「……ははっ」

 お腹をさすりながら、前屈み気味に立ち上がる透馬。威嚇の視線を送り続ける私に、柔らかな笑みを浮かべる。

「まぁ、このパンチは痛み分けということで……杏ちゃん」

「何」

「さっき、謝ってくれたことだけど」

 じゃり、と。敵が一歩距離を積めたことに、私は眉間を寄せた。

 そんな反応すら楽しそうに、透馬はゆっくりと歩みを進めてくる。反射的に後ずさりしようとする私の足が、プライドで留められていることを知って。

「杏ちゃんがそんなに気に病んでるならね。ひとつ提案があるんだ」

「……」

 嫌な予感しかしない。

 にっこり綺麗に弧を描いた奴の口に、私はどこで間違えたかも知れない自分の選択を全力で呪いたくなった。


   ***


「モデル?」

「ほら。あの人っ」

「うっわー、背ぇ高! ほっそー」

 周囲からまとわりついてくる視線自体は別に珍しいものではない。しかしながら、なまじ「待ち合わせ相手がいる」というプラス要素により、妙に胸がざわざわと落着きのない状態が続いていた。

 駅構内は連日絶え間なく人が行き交っている。その駅南口にたたずむ白いモニュメントは特に、待ち合わせの目印として人口密度が濃くなっていた。

 手元の文庫本から時計の針に視線を移す。約束の時間まであと二分。一秒でも過ぎたらここから撤退しよう。

 そう考えた瞬間、視界が薄く陰ったことに気付いた。

「お待たせ。ごめんね。結構待った?」

 周囲からはまるでお約束のように、黄色い歓声が沸き立つ。自然と人だかりを開かせるほどの存在感に、私も一瞬目を見開いた。

 図書館にふらりとやってくる時とはまた違う、シンプルな着こなしに添える程度の洒落たジャケットが重ねられている。涼しげな白い首もとに揺れるネックレスは思いのほかカジュアルなもので、変な魅力に思わず見とれそうになった。

 そんなに待ってない。答えの代わりに、ぱたんと文庫本を閉じる。

「……なに呆けてんのよ。夜遊びで体力がなくなった?」

「ううん。杏ちゃんの、そういう髪型も良いなぁー……ってね」

「!」

 油断も隙もあったもんじゃない。

 別にこいつとの約束だったから手を施した訳じゃない。後頭部を細めに編み込んで、右サイドに弱めに結ったヘアスタイル。たまたま透馬の目に触れてこなかっただけだ。

「毛先ふわふわしてる。触っても良い?」

「良いわけがない。触るな」

 伸びてきた奴の手をぺしっとはねのける。そうなることを分かっていたような奴は笑った。それを睨みつけながらもふと、強ばっていた肩の力が抜けていることに気付く。

「それじゃ。初デートスタートといきましょうか。お姫様?」

 おとぎ話の王子様よろしく、差し出された手のひらと爽やかさ満点の笑顔。ギャラリーの若いおなごたちが再びきゃあっと沸き上がる。

 その中でただひとり顔をしかめた私は、差し出された手をはたくことも放棄してすたすたと駅出口に歩みを進めた。

 デートじゃねぇよ。

 心の中で吐き捨てた独り言とともに、ちっと大きく舌打ちを鳴らした。


(今度の土曜にね。杏ちゃんに、ちょっと付き合ってほしいんだ)

 水をぶっかけたお詫びとして奴が言い出したこと。それ自体、予想の範囲内ではあった。

「杏ちゃーん。ちょっと足早くない?」

「私はこれが普通。合わせろっていうなら合わせるけど?」

「ははっ、それこそ男の役目でしょ」

 何が楽しいのか、隣にひょいっと立ち並んだ透馬は始終楽しそうに口元を緩ませている。どちらともなく人目を颯爽とさらいながら、私たちは曇天の下を突き進んでいた。

 駅前のスクランブル交差点を抜けて、人混みが多少開けた道をひたすら南下する。狸小路を西に行った店に向かうと聞いてから、私は仏頂面を崩さずにひたすら足を止めようとしなかった。

「んー。なんか一雨来そうだねぇ。杏ちゃん寒くない?」

「平気。一応上着も持ってきてるし」

「はは、杏ちゃん、冷え性っぽいもんね」

 冷え性っぽいって何だ。非難を視線に乗せながら、それでも無駄口を叩くことはしない。不自然なほどに。

「ね。もしかして杏ちゃん」

「なに」

「緊張してる?」

「っ、な……!」

 ぐるり、と。まるで音が聞こえるような振り向き方をしてから、はっと我に返る。

 そんな自分に、思わず苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。

 デート。異性とふたりきり。そんな経験は幼馴染みの薫とくらいだったから。

 こいつとふたりきりで街中を歩く。そんな状況に自分がこんなにも困惑するなんて、全く想定していなかった。

「……悪かったわね。慣れてないのよ。あんたと違ってっ!」

 大股で踏み出し、奴の一歩手前を闊歩する。羞恥と屈辱で双眼を閉じていた私だったが、次の瞬間、大きく打った胸の鼓動とともにその目を見開いた。

 右手を慈しむように包んだ、奴の手の温もりに。

「離せ。迷子になる人混みじゃないでしょ……!」

「うん。でも、離れたくないから」

「っ」

「杏ちゃんと、離れたくないからさ」

 繋がれた手と柔らかな笑顔。

 底冷えしていた身体の奥の奥が、少しずつ奴の持つ熱で溶かされる。

「いってて!」

「そういう言葉はね。あんたに騙されてくれてる幾多の女の子たちにとっときなさい」

 つまみ上げた奴の手の甲を、ぺっと投げ捨てる。ふんと鼻を鳴らして歩みを再開する私に、透馬はむーと納得いっていないような表情を見せていた。

 良かった。心の中で密かに安堵する。ようやく調子が戻ってきた。

「んで? あんたが付き合ってほしいっていうお店はどんななの」

 駅の姿も遠ざかり、東西に真っ直ぐ伸びる大通公園に踏み入る。噴水に小さな子供たちがはしゃぎ回り、家族連れや観光客らしき人たちで賑わう中、私はそもそもの疑問を口にした。

「それはね、着いてからのお楽しみ」

「イカガワシイところじゃないでしょうね」

「杏ちゃんがご希望なら是非」

「くたばれ」

「ぷっ、はは!」

 もしかして、こいつも浮かれてる?

 ふと頭に降ってきた表現に、私はひとりかぶりを振った。

 隣をちらりと盗み見る。こいつがいつも以上に気遣いをしてみせるのも、笑顔が正直に見えるのも、全部全部女の子へのリップサービスのようなものだ。

「ねぇ杏ちゃん。とうもろこし食べてく?」

「食べません。ほら、早く行くよ」

 相手が私だから。私にだけ見せてくれる奴の顔。

 そんな勘違いを、私は絶対にしてやらないから。


 賑やかな界隈をはずれた先にある街角に、そのビルはあった。

 外壁はコンクリートがむき出しで、店先にはメニューもなければ品々の手がかりになるものすら記されていなかった。唯一、店名らしきアルファベットの列が、扉の下に控えめに彫られている。

 まさか本当におかしな店じゃあるまいな。あからさまに顔をしかめていた私だったが、たどり着いた別世界にただただ圧倒された。

「気に入った?」得意げに問いかけてくる透馬の声に素直に頷く。その問いすら、今の私にとっては風音のひとつに過ぎなくなっていたのだ。

「す……っごい。私営図書館……!?」

 一面を彩る背表紙の歓迎に、私は口元を覆わずにはいられない。

 外界から遮断した扉にさらにつながる扉の先には、何段にも折り重なるように並べられた本たちが、見上げるだけじゃ収まらないほどの高さの本棚に身を寄せていた。

 本棚も仕立てがすこぶる良さそうで、まるでバイオリンを思わせるアンティークな艶めきを放っている。まるでその場所に長年根付いているような重厚感に、自然と敬意が浮かんできた。

「良かった。杏ちゃんのそんな顔が見たくて、ここまできたから」

 するりと耳に入ってきた感慨深げな声に振り返った。微笑ましげな笑顔でこちらを見つめる透馬が、ほんの少しだけ癪に障る。でも、それも数秒で打ち消された。

「俺もここ、好きなんだ」

「!」

「考えがまとまらなくなったり……逃げ出したくなったときなんか、しょっちゅうここに来る。ここにきたら、大好きな本だらけで逃げ場所なんてなくなるから」

 本たちをまるで愛でるように眺める眼差しに偽りはなかった。喧噪で乱された世間の中で、この空間だけはいつも自分を待っていてくれる。そんな想いを抱く人間が、こんなに近くにいたなんて。

「私もあるよ。そんな場所」

 気付けば口からこぼれ落ちていた。

「もう死んじゃったけど……本が大好きで、その素晴らしさを教えてくれたおじいちゃんが遺してくれた、小さな別荘がある。ここの広さには到底及ばないけど時々そこで一人で本を読み耽るの。それでも、今もまだ読み切れないくらい」

 瞳を閉じる。本と埃の匂い。タイルの床が鳴らす音。表面にひび割れが目立つワインレッドのふたり掛けソファー。ステンドグラスを思わせる曇り窓から注がれる、微かな陽の光。

 昔と変わらない、私の大切な場所。

「素敵だね」

「……ありがとう」

 交わされた会話には、一寸の目論見もない。本を好きな者同士の、他愛ないやりとり。

 しかしながらそのやりとりが、とてつもなく尊いもののように思えてならなかった。


「重い」

「だから言ったでしょ杏ちゃん。せめて三冊にしなってさ」

「これでも絞り込んだ結果だし」

 結局、あのあと作成した会員カードに、私は早くも貸出記録を入れることになった。

 密やかに芽吹いていた分、世界の壁さえ取り払われた書籍たちが様々に来場者を誘惑していたあの空間。その誘惑を振り切って、どうにか五冊に留めたんだ。寧ろ褒められるべきじゃないだろうか。

「鞄重くしたら、杏ちゃんが大変でしょって言ってんの」

 途端、身体がふわりと羽が生えたみたいになる。装飾の少ないシンプルな、それでも一目で女物と分かる鞄を、透馬はまるで抵抗を見せずに自分の肩に回した。

「い、いいってば! 荷物くらい自分で持つからっ」

「心配しなくても盗みはしないって。俺は杏ちゃんと居られれば、それで十分だから」

 言いながら向けられたのは、子供のように無邪気な笑顔。それがまるで、本心を語っているように思えたから。

「――思わせぶりも大概にしなって。今度こそ、あの人に愛想、尽かされるよ」

 気付けば口からこぼれ落ちていた言葉に、私自身驚きに目を見開いた。

「あの人って?」

「……っだ、だから、あのカフェのっ」

 続けるべき話題を思案する頭のもたつきが、泥濘にはまったみたいに重い。

「え、と。杏ちゃん、それって――、」

「……雨」

「へ?」

「雨、降ってない?」

 出鱈目ではなかった。口にした最中、鼻先に跳ねた雫を指で拭う。

 恵みの雨と感謝しかけたものの、小さな水玉模様を描いていた道路はあっという間に重い灰色に塗り替えられる。

 余りに変わり身の早い雨足に呆気にとられた私だったが、唐突に手を掴まれる感触にはっと我に返った。

「この辺にでかい店もないし、とにかく雨宿りするよ!」

 握られた手の感触が、やけに熱い。

 辺りにはひと気がほとんどない。細い道筋をひたすら駈けていた私たちは、途中でようやくふたりで雨を避けられそうな軒下を見つけることが出来た。遠くでは雷の低い音が鳴り響いている。

 間もなく、コンクリートを突き刺すように降り注ぐ雨が、辺り一面をカーテンを引いたように包み込んだ。こんな土砂降りじゃ、鞄に入れた折りたたみ傘もさして意味はなさないだろう。

「あー……雨の予報だったけど、まさかここまでとは。杏ちゃん、大丈夫?」

「ん。平気」

 頬に張り付いた髪の筋をすっと避ける。

 ふた付きの鞄を持ってきて良かった。一応中を確認してみるも、先ほど借りた書籍を含め中身は皆無事だった。

 濡れた指先をゆっくりと鞄内に差し入れ、何とかハンカチを抜き取る。

「使って。あんた病み上がりでしょ?」

 こんなことで風邪をぶり返されたら、今日のお詫びの意味がまるでなくなってしまう。

「……? 透馬?」

 反応のない相手に、私は怪訝な顔を向けた。途端、はっと息を呑む音がする。

「あ、ああ! ありがと、杏ちゃん……っ」

「……」

 なんだそら。

 奴らしからぬ反応の鈍さ。もしかして、既に風邪の予兆が見え始めたか。

 奴の真意を汲み取ろうと、私はじいっと奴の顔色を窺う。すると、やはりやましいところがあるからだろうか。一瞬弱ったように顔を歪ませた透馬は、そのままぱっと顔を反対へ背けた。

 そして透馬もまた、鞄をゴソゴソと引っかき回す様子を見せたかと思うと、無地の布目が目の前いっぱいに広がった。

「ちょっ、何……!」

「杏ちゃんこそ寒いでしょ。着て。これ」

「これ、あんたの上着じゃない」

 非難めいた指摘にも、透馬の視線は斜め向こうを見たきりで動こうとしない。

「あのね。私が今日付き合った理由忘れてない? こんなことでまたあんたに風邪でも引かれたら、後味悪いのは私なの」

 言いながら確認する。何も間違っていない。正論だ。

「分かったら格好付けてないで羽織って。身体が冷える。私は滅多に風邪なんて引かないから」

「透けてる」

「は?」

「透けてる」

「だから、着て。これ」断片的な言葉に、奴の体調不良を本気で心配した。

 しかしながら、雨に降られた現状と奴の言う「透けてる」の意味が急に頭の中で繋がり、私は一目散に自分の身なりに視線を遣る。そして目にした醜態に、恥じらいと屈辱が身体を一気に焼きつくした。

 雨で身体に張り付いた自らのシャツには、下着の色やレースのあしらいまでがはっきりと浮かび上がっている。

 咄嗟に噛みつくように顔を上げるも、透馬は先ほどと全く変わらず、明後日の方向に視線を向けたまま。それでも、カフェオレ色の癖毛から垣間見える耳が、ほんのり赤くなっていることに気付いてしまった。

 思わず、目の前に差し出された上着を引ったくる。

「何で、あんたの方が照れてんのよ」

 飛沫をあげる雨の音すら遠くなる。この空間の変な沈黙に、私は早々にしびれを切らした。

「らしくないでしょ。百戦錬磨のくせに」

「……」

「シカトですか」

「杏ちゃんが、好きだから」

 耳に届けられた言葉は、どこまでも単純で明瞭だった。

「惚れてる子のそんな姿を見たら、誰だってこうなる」

「……」

「シカトですか?」

 シカトじゃない。ただ、瞬きすることも忘れていただけだ。

 雨に打たれたからか、一段と白く澄んで見える奴の肌。いつもは甘く緩いウェーブを描くその髪も、意志の強い癖が浮き上がっている。

 まとう服は雨に一段の暗色が与えられ、酷くこいつの色香を際だたせた。頬が熱い。とても。

 ダメだ引きずられては。ベールで包まれたような空間にも、わずかな理性がどうにか私を引き留める。

 だって、こいつには、本命の彼女が――。

「アリサちゃんとは、そういう関係じゃないよ」

 考えていたことと予期せず重なった言葉に間抜けな声が出る。目を丸くした私に何を思ったのか、透馬は嬉しそうに肩を揺らした。

「アリサちゃんは、仕事関係で本当にお世話になってる。でも、杏ちゃんが思ってるような関係じゃないから」

「でも」

 喫茶店での二人の会話は、どう見てもそんな社交辞令的なものではなかった。

 もっと密な……少なくとも、私なんかが立ち入ることが出来ないような信頼があったのだ。

「はは、でも、なんか嬉しいな」

「は?」

「ヤキモチ焼いてくれたんだ? 杏ちゃん」

「――っっ!」

 違う! マグマが沸き立つような勢いで口に出るはずだった言葉は、結局喉の奥に止められた。

 何で。否定しなきゃ。じゃないと肯定したと同じになる。

 それを知りながら、私の身体は思考をまんまと裏切った。

「杏、ちゃん?」

「……っ」

 妬いてなんかない! 何であんたのことでそんなこと! 自惚れるのも大概にしろ!

 そんな言葉が流れ星のように頭の中を流れては消え、流れては消える。結局何一つ言い返せないまま、奴とは逆方向に身体ごと背けるのがせいぜいだった。衝撃的だった。

 安心してしまったのだ、私は。まるで信頼の置けない奴の言葉に、こんなに容易く。

「妬いて、なんか……っ」

 詰まりそうな息の合間に、何とか背後の敵に投げつける。悔しさに眉を寄せた私だったが、突然両肩に降ってきた熱い手のひらにその感情も霧散した。

 両肩を後ろから引き寄せられ、首もとに奴の額が軽く乗せられる。

 それだけなのに時折首を掠める熱い吐息に、冷えきったはずの身体が熱をもった。

「透馬……!」

「杏ちゃんが悪い」

「悪いって、何が!」

「俺は杏ちゃんが――マジで好きだって、言ってんのに」

 ずるいよ。

 呟きめいた恨み言と同時に、ゆっくりと首筋が外気に触れる気配がして私はぎょっとした。

 上着だけじゃない。私自身が身につけているシャツと中のキャミソール、あろうことかブラの肩紐まで共に肩を滑りかけている。咄嗟に肩を覆う手を押し止めた。

「なに、調子に、乗って……ッ!」

「杏ちゃん」

「っ、や」

 ちり、と押しつけられた熱。首もとに落とされたそれが透馬の唇と知った瞬間、私は混乱に目を回した。

 一体何が起きた。こいつ、一体何を。

「ん、や……っ、透馬……!」

「杏ちゃん」

 私の声が聞こえているのかも怪しい。肩を掴むだけだったはずの奴の手は、徐々に私の身ぐるみを暴き進めていく。

 抵抗を試みるも気付く様子のない透馬は、ついにその手をあらぬ方向に動き出した。交わされているはずの瞳に自分が映っていないことに気付く。

 情欲だけが揺らめく瞳に、身体の血の気が引く音が聞こえた。

「――っ、嫌だッ!!」

 人気のない界隈に、叫び声がこだまする。

 間もなく解放された自身の身体を、私は掻き抱くようにしてその場にしゃがみ込んだ。心臓が痛いくらいに打ち付ける。歯が小刻みに鳴っているのに気付き、私は慌てて口元に手をやった。

「杏ちゃん……」

 恐々と届いた呼び名に、肩がびくつく。

 しゃがみ込んだままの私は、いまだに降りやまない雨が地面に跳ね返るさまをただただ見つめていた。だって、そうでもしなくちゃ。

「杏ちゃん……ごめん」

 泣きたくない。

 こんなことで、こいつの前で、絶対に泣いてやるもんか。

「ごめん。本当にごめん……!」

「……」

「杏ちゃん……俺さ、本当に」

「満足した?」

 ようやく発した言葉は、自分でも感心するほど冷たかった。

 鉛を詰めたように重い身体を、ゆっくりと後ろへ振り向かせる。目を見開いたまま立ち尽くす透馬に、私は短い笑みを浮かべた。

 地面に倒れていた鞄を拾い上げ、上着はそのまま奴に返却する。

「自分の上着があるから、あんたのはいい。いらない」

「杏、ちゃ」

「いらない!」

 真っ直ぐに見据えた瞳には、ようやく私の姿が戻ってきたらしい。

 結局半ば強引に上着を受け取らせると、私は迷いなくきびすを返す。自ら持ってきていた上着を羽織る際、先ほど手をかけられた右肩の身なりも整えた。

「こんな雨だし、デートも中止でいいよね」

「……っ」

「じゃあね」

 透馬が何か言いたそうなことには気付いていた。雨の中を進み出す私を、決して引き留められないことも。

 雨宿りをしていた軒下から完全に見えないところまで歩みを進めたところで、私は小刻みに震える指先をぎゅっと握りしめる。胸が痛いくらいにきりきりと悲鳴を上げて、今にも破裂しそうだった。

「……ばかじゃないの」

 何も変わってないじゃん、あの時と。

 打ち付ける雨雲を見上げ、情けなく独りごちる。雨粒に涙を滲ませまいとひとり意地を張る自分の姿。

 それさえも面白いくらいに、二年前の自分と重なった。


   ***


 最悪な幕引きとなったデートの日以来、初めての出勤日。

 思えばその日は、初めから変な違和感があった。

 例えば、学生からの羨望の眼差しの中に好奇の視線が混ざっていた。或いは、職場に向かう途中、学生窓口を横切った際、窓口の女の子から珍しく労いの言葉をかけられた。

 しかしながらその違和感が、こんな事態を示唆していたとは思い至らなかった。

 遅番シフトで職場に顔を見せた私に、既に集結していた主任を含め、司書のほぼ全員が揃って目を剥いた。事務室を取り巻く異様な空気に、思わず立ち止まる。

 そしてすぐに目に留まったのは、テーブルの中央に開かれた一冊の書籍だった。

 遠巻きから見ても分かる、明らかに故意に加えられた朱色の書き込み。無惨に書籍に添えられたその文章を、私はしばらくの間、無言で見下ろしていた。

「お、小野寺さん……」

 いつも天真爛漫の中吉ちゃんまでもが顔を青く染め、直立したまま私の傍らを動かない。この場に似つかわしくない笑顔が、なんとも自然に浮かび上がった。

「大丈夫だから。心配しないで」

「で、でも……っ!」

「大丈夫」

 大丈夫。大丈夫。これくらい、とっくに慣れっこだから。気遣わしげな、それでもどこか蔑視を含んだ視線にまとわりつかれ、日常を過ごすことくらい、何てことはない。

 被害にあった書籍を机に横たえ、事件ファイルにデータを正確に記録する。心頭まで震え上がりそうな怒りを心の奥底に封印して。

『中央図書館勤務の小野寺杏は、幼馴染みとカフェ店員の二人の男に身体を売る尻軽女である』


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