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第三章 過去、未遂、特別な女。

 第三章 過去、未遂、特別な女。


「小野寺ちゃーん。来たよ。今日も例の彼!」

 先輩の中では比較的仲良くさせてもらっている今野(こんの)さんが、口を緩ませながらカウンターに戻ってきた。同時に中吉ちゃんが、「目の保養が来た! 行ってきまーす!」と書籍を携えて飛び出していく。

 ここ最近幾度となく目にしてきた光景に、私は軽く肩を竦めた。


 最近、誰かさんがM大図書館にちょくちょく出現するようになった。

 恐らく、奈緒と栄二さんの会話を耳にしたのだろう。貸出カードの作り方を尋ねてきた奴を目にしたときは、一瞬ここが職場ということを忘れるところだった。

「それでそれでっ! あのイケメンさんはずばり! 小野寺さんの彼氏サンなわけですよねっ!?」

 迫りくる中吉ちゃんの期待に満ちた瞳。その傍らで作業していた今野さんも、同調するようにうんうんと頷く。

「いやー、私も妙だと思っていたのよ。小野寺さんくらいの美人さんがフリーなはずがないってさぁ」

「今野さんも中吉ちゃんも誤解です。奴……じゃなく、あの人はただの知り合いってだけで、彼氏とかそういうのじゃ」

「事務の子たちにも教えてあげなくちゃ! 小野寺さんにつ・い・に! 発覚した彼氏は超イケメン長身イケメン!」

 幸せのお裾分けとばかりに飛び出していった彼女を呆然と見送る。

 四十代前半の今野さんは、苦笑しながら「若い子はこの手の話が大好物だもんね~」と私の肩に手を乗せた。「というか、イケメンて二回言ってたね」

 中吉ちゃんの蜘蛛の巣を張り巡らせたような情報網は、午後の図書館来場数に確実に影響を与えることになった。

「なあなあ、お前が聞いて来いよ」「小野寺さん、特定のメンズができたって本当ですかってか?」好奇の視線を向けてくる資料集め中の学生たち。

「わかんないよねー、あんなつんけん女のどこがいいんだか」「ふふっ、あんた聞こえるって」「でもあのロングヘア―は憧れるなぁ。ストイックさが滲み出てるよね」褒めてるのかけなしてるのかわからない空気を漂わせる大学事務の子たち。

「いやあ、孤高の美人司書さんに恋人ができたと聞いたもんでね」しまいには私を愛想がないと毛嫌いしているセクハラ教授まで。

 もはや否定する気も失せた。

 噂に振り回されている知人以下の人影をまるっと無視し、私は通常業務を粛々と進める。勝手に尾ひれを付けて楽しむが良い。暇人どもが。

「すみません。この本をお借りしたいんですが」

 利用者から差し出される、蔵書検索のレシート。所蔵図書の案内もまた立派な司書の業務だ。

 例えその利用者が、本日の騒動の元凶だとしても。

「この参考図書は三階の書庫ですね。お持ちします」

「良ければついていっても?」

「……どうぞ。こちらです」

 満足げににこり、と笑みを浮かべた奴に、遠巻きから女子学生の黄色い悲鳴が上がる。

 すかさず主任が彼女らの注意に腰を上げたが、奴はといえばまるで興味がない様子だった。

「……まだ居たんだ。午前で帰ったんだと思ってた」

 人気のない通路に入ると同時に、私はちろりと奴に視線を遣った。

 店で働くときとは違う、白肌に映える紺色の軽めなカットソーにジーパンというラフスタイル。シンプルな時計がはめられた涼しげな手首に、ふと指元までを盗み見た。

 指輪はない。不特定多数の彼女たちには、十本の指では足りないか。

「仕事中何度も探してもらってごめんね。助かるよ」

「これも仕事です」

「くくっ、あんなギャラリー出来ちゃってたら、杏ちゃんも大変だね。さすが巷で話題の美人司書さん」

 誰のせいだ、誰の。

 周囲の噂話から知識を得たらしい無駄話は聞かなかったことにする。階段を早足で上っていく私に、難なくついてくるこいつに苛つきを覚えた。

 それにしても、と心で呟き、手元のレシートを再び眺める。

 蔵書検索機から出されたそれには、あまり貸し出されることのないコアな内容の参考図書が記されていた。

 奴が所望する書籍は、こういった一般人の使い道に首を傾げる内容の物が半数以上を占めている。

「え、と。ああ、あった」

 書架を探しだし、折り目正しく並べられた背表紙を指で撫でていく。要領よく見つけだした目的のタイトルに、「さすが。早いね」と感嘆の声が上がった。

「高いね。届く? 取ろうか」

「ううん。平気」

 辺りに視線を馳せるも、いつもならあるはずの踏み台が見当たらなかった。それでも、自分の身長でも届かない訳じゃない。

 奴の瞳が気遣わしげなものに変わるよりも先に、私はすっとつま先立ちで腕を伸ばした。きっちりとしまい込まれた書籍たち。隙間に指を潜り込ませ関節を曲げると、背表紙がゆっくりと手の内に収まった。

 人に頼る機会を減らしてくれる、長身の有り難みが身に染みる。

「はい。この書籍で間違いないで――、」

「ッ、杏ちゃん!!」

 差し出した書籍が、思わぬ衝撃で空を舞った。

 肩を抱え込まれ、広い温もりに顔を押しつけられる。何が起こったのか分からず混乱したが、私は咄嗟に頭上にある顔を睨み上げた。

「っ、あんた、突然何……っ!」

「はぁ……無理そうならそう言わなきゃ」

「は!?」

「本、上から落ちそうだったよ」

 諭すような口調に、そろりと見上げた視線。

 伸ばされた腕の先には、書籍の抜け跡を押さえつける手があった。無理に抜き取ったせいか、書架からはみ出た他の本が危ういバランスで斜めに傾いている。

 最悪だ。

 バツの悪い状況に、私はわめき散らしていた口を噤むのがやっとだった。

 もはや、庇うように腰に回された手に文句を言うのもはばかられる。奴の影に包まれたまま、落ちてきたのは戒めの言葉だった。

「怪我したらどうするの」

「いつも、取ってる高さだから」

「簡単に取れる本の厚みじゃないでしょ。気を付けないと」

「……わかったってば」

 いちいち真面目腐って言うなっての。悔しさが滲む顔を何とか整えようと、きついくらいに瞼を瞑る。

 頭上に僅かに触れた奴の吐息に動揺が走るのを必死に抑えた。平常心。心の中で独りごちる。

「ここは、利用者はひとりで立ち入り禁止?」

「……閲覧後、カウンターに一声かけてくれれば」

「そっか」

 言うなり、奴は何事もなかったかのように私の身体を解いた。床に落としてしまっていた目的の書籍をひょいと拾い、ふっと微笑みが向けられる。

「杏ちゃん、いい匂いする。もうちょっと支えておけば良かったかな」

「っん、な……!」

「じゃあ、少し見てくね。わざわざありがとう」

 不本意だ。でも助かった。

 不規則になっていた呼吸が落ち着きを取り戻していく。穏やかな笑顔を向けられ、私は言い返したい衝動を胸にしまった。

 持ち場に戻ろう。そう思っているはずなのに、足がなかなか動こうとしない。胸に噎せ返りそうな焦燥感がくすぶる。

「あの……!」

 咄嗟に、目の前の服の裾を掴んでいた。

 こんなこと、本当は言ってやりたくなんてないけれど。

「ありがとう。庇ってくれて」

 よし。言った。やけに重かった言葉を何とか口に出し終え、私は詰まっていた息をほうっと吐き出した。

「それだけ。ごゆっくり」

 早口で言い終えた私は、掴んでいた服の裾をそっと外し、書庫を後にする。

 背中の向こうで奴がどんな表情を浮かべているのかなんて、確認する間もなかった。


   ***


(小野寺さん彼氏説は、現在二手に分かれています!)

(ひとつは言いも漏れず最近出没頻度を上げているイケメン長身イケメンさん! もうひとつは先日小野寺さんをゲート前で数時間に渡り待ち伏せしていた年下フレッシュ大学生さん!)

 さあ、そして噂の真相は!? 嬉々として質問を向けてくる、可愛い後輩の笑顔が小憎らしい。

 美人で隙がなくて仕事も出来る、ちょっと近寄り難い大人の女性。

 長年培ってきた自分像が、確実に陰りを見せつつあった。


「かーおーるーッ!! こんのバスケ馬鹿がいい加減に練習切り上げろ! おばさん心配してんでしょうがー!!」

 それもこれも、後先考えない馬鹿共が人のテリトリーを好き勝手うろつくからだ。

 夕日に向かって叫ぶついでに、馬鹿の片鱗たる幼馴染みに向かって私は日頃の鬱憤を砲撃した。

 予想外の雄たけびを耳にしたからか、リングに向かって意気揚々と踏み切った人影のバランスが情けなく崩れる。ふん、いい気味だ。

 紅蓮の夕焼けが空に滲む。草木がピアノを奏でるように風に撫でられる公園の中央で、子供のころ設置されたバスケットリングが空に向かって真っ直ぐそびえる。昔に戻ったような光景に目がチカチカした。

 しぶしぶ帰り準備を済ませた幼馴染みに、私は聞えよがしの溜め息を吐き出す。

「ったく。遅れるなら遅れるで連絡くらいしろっての」

「いいじゃねぇか、少しくらい」

「私が来なかったら、夜中まで続けてたくせに」

「う」

 薫とM大で昼食を共にして以来、私たちは幼馴染みとしての付き合いを復活させつつあった。

 バスケットボールを指先で遊ばせながら、薫は拗ねた様子で唇を突き出す。昔とちっとも変わらない。

 丘の傾斜を上ってきた風が私たちを柔らかく撫でる。舞い上げられた髪を、手櫛とともにまとめた。

 沈んでいく夕日の残像が徐々に朱色を吸い取り、街を紫陽花色に染めていく。この光景ももう何度目にしてきただろう。草の香りが、遠い日の記憶に酷く優しい。

「帰るよ。おばさんが待ってる」

「おー」

 公園から家まで続く一本道をゆっくりと進んでいく。薫のこめかみに浮かぶ汗が、視界の端にきらきらと眩しかった。

「今日、杏姉もうちで食べんの?」

「さすがにそこまで迷惑かけれないよ。おばさんとはスーパーで偶然会ったの。うちの愚息がまぁたバスケから帰ってこないって文句言ってたからさ」

「ぐそく?」

 薫がきょとんと首を傾げる。

 呆れを含んだ温い視線を送る私に、薫はむうっと不機嫌顔を真正面に向けた。「それはそうと!」

「ちょうど良かった。聞こうと思ってたんだ。杏姉に」

「はい?」

 直後生まれた変な沈黙。連動するようにぴたりと止まった歩みに、私は訝しげに隣を見上げる。

「杏姉ってさ」

「はあ」

「今、付き合ってる奴とかいんのか?」

「は?」

「付き合ってる奴、いんの?」

 二回言わなくても聞こえてるわ。

「何、その質問。誰かに頼まれたわけ?」

 耳に障る車のマフラーをふかす音が遠く駆け抜けていく。依頼主の正体に思い当たる節が有りすぎて私は大きな溜め息を吐いた。

 一番可能性が高いのは好奇心旺盛な後輩中吉ちゃん。他の司書の先輩たちもなんやかんやで興味を抱いている様子だし、利用者内で面白半分に探る者もありそうだ。

「誰にも頼まれてなんかねーよ。ただ、部活の奴が杏姉のこと話しててさ」

「!」

「そんで何か……それ聞いてからずっと、気になってたっていうか……?」

 そこでようやく私は、薫の表情の変化に気付く。

 必死に言葉を探して寄せられている眉。猫のような瞳がそわそわと虚空を彷徨っていたかと思えば、こちらにぴたりと照準を定めた。

 問いつめてくる視線に、じり、と一歩後ずさる。

「で。どうなんだよ。杏姉」

 単純馬鹿でいつまでたっても子供思考のくせに、こいつには今でも敵う気がしない。

「付き合ってる人なんていない」

「へ?」

 ぽかんと呆気にとられたように口を開く薫に、私は横目で睨み付ける。

「あんたは一体どんな話を聞いたわけ?」

「い、いや……杏姉が、年上のオトコ? と最近親しげだとか、なんとか……」

 改めて耳にしたゴシップ内容に、思い切り顔をしかめる。脳内に浮かび上がったのは、綺麗で胡散臭い笑顔を浮かべた奴の姿だった。

「あれは知ってるカフェの店員。書籍のことで時々話をするだけ」

「……付き合ってねぇの?」

「ちり紙よりも軽い告白はされた。それも、あいつのルーチンワークみたいなもんだから。付き合うなんて有り得ない」

 そこまで言うと、薫はようやく納得がいったらしい。

 噂は信用ならない。預かり知らないところでひとり歩きを始め、帰ってきた頃には全くの別人になっている。

 私が思春期の虐めの最中にいたときに学んだことのひとつだ。

「へ、へぇ。そっか。ふーん……」

「くだらない噂に振り回されてるんじゃない。馬鹿バスケ馬鹿」

「じゃ、じゃあさ! す……好きな奴も、いないのか?」

 もごもごと口籠らせていたアンポンタンが次第に調子を取り戻してきたらしい。予想し得た連続質問に、今度は一瞬の間を与えない。

「いない。質問は終わり?」

「……」

「言っとくけど、今のもいちいち拡散しなくていいからね。勘ぐられたら面倒なんだから」

「杏姉」

 唐突に腕を掴まれる。

 少し痛いくらいの握力に、思わず非難を込めて振り返った。しかしながら、次の瞬間その勢いも削がれてしまう。

 前髪の合間から垣間見えるのは、意志の強い猫のような瞳だった。射るように見据えてくる視線が、僅かな軽口も許さない。

 懸念とも期待ともつかない感情が、胸を早鐘のように打ち鳴らす。公園の木々が夜風に撫でられ、さえずる音を遠くに聞いていた。

「杏姉。聞いて」

 激情の潤いに満ちた双眼に、映り込んだ自分の姿を見つけた。

 決心の琴線が張りめぐらされた空気に、胸奥に眠らせていた想いが微かに心を揺らす。

 もう――間違えるわけにはいかないのに。

「向こうの大学にいる間、ずっと考えてた。二年もかかったけど……杏姉とちゃんと話したいと思った」

「……っ」

「俺の気持ちも……ちゃんと伝えなきゃ駄目だって」

 ぐらり、と足下がおぼつかなく震える。

 器用じゃない薫がポツポツ語る言葉に、私はいちいち動揺する。

 逸らせない視線。身動きひとつできなくなる。それでいて最早真っ赤に茹で上がった目の前の頬が、無性に腹立たしかった。

 まるで、自分自身の姿を鏡で見ているようで。

「俺さ」

 飛び越えようとしている。

 微かに震えを帯びた声色に、胸が震えた。

「今更本当に遅くなってごめん。でも分かったんだ。俺……俺はずっと、」

「……っ」

「杏姉のことが――」

 その時だった。

「杏ちゃーん! 薫の奴見つけてくれたぁ!?」

「!」

「っ、あ」

 辺り一帯にこだまする、朗らかな声。

 遠く離れたところから発せられたその声の主には覚えが有りすぎた。薫のおばさんだ。腕を拘束する薫の手を咄嗟に振り解く。

「もー! 全くごめんなさいねぇ、迷惑ばっかりかけちゃって。薫! 全くあんたって子はいつまで経っても子供のままでっ」

「か、母さん……っ」

「いいんだよおばさん! 私も久しぶりに公園を散歩できて、ちょっと気分転換になったから……!」

 薫の上擦った声を間髪入れずに覆い隠す。

 何ともいえない表情の薫と目があったが、感情を打ち消すのは私の方が早かった。

「それじゃ、私もそろそろ帰ろうかな。明日は早番だし」

「っ、杏姉」

「ええっ、杏ちゃんも食べてきなさいよ~! おばさん、おかず作り過ぎちゃってねぇ」

「ううん。私ももう作ってあるから。ごめんねおばさん。また今度」

 残念がるおばさんは玄関先まで私を促すと、おかずをギチギチに詰め込んだタッパーを手土産に渡してくれた。

 その待ち時間も短いながら薫と二人きりの時間はあった。それでも、先ほどの夢うつつのような空気を再び作ることは難しく。

「それじゃ、おやすみ」

 結局は何ら変わりのない幼馴染みとして、別れの挨拶を交わしただけだった。


   ***


 自宅近くで「カフェ・ごんざれす」以外の喫茶店に入るのは随分と久しぶりだ。

 少々青臭い女の子が笑顔で運んできたコーヒーは心なしか香味が薄い。舌が肥えてきてるな、と苦笑を漏らす。

「よーっし。終わった~……と」

 かつんと音を立てテーブルに赤ペンを転がす。所々赤い指摘を書き込み終えた原稿の最終ページを、私は満足げに俯瞰した。

 先日栄二さんに託された物語。

 提出期限を逸しないように日々のノルマ字数を決めていた私だったが、それもただの気休めになるのにそう時間はかからなかった。

 だってこの話――面白い。かなり。

 読み進めるスピードが衰えなかった結果、物語の最終ページに全体の感想を書き終えたのがつい先ほどだった。これでようやくあのカフェに足を向けることができる。

 近所で推敲作業に集中できる喫茶店は「カフェ・ごんざれす」を除くと地下鉄駅直結のデパートに入っているここしかない。お世話になった感謝の意を込めて、味わいの足りないコーヒーをゆっくりと喉に通した。やっぱり、味薄いわ。

 コーヒー以外の軽食もやっているためか、店内には買い物を終えた家族連れや井戸端会議中のおばさま達がぽつぽつと見られた。そんな混沌とした中にいると、不意に考えなくてもいいことがするりと思考に入ってくる。

(今更本当に遅くなってごめん。でも分かったんだ。俺……俺はずっと、)

(杏姉のことが――、)

 本当に遅い。今更だ。

 思いのほか冷静な呟き。それでも、微かに残る感傷はどうしようもなかった。

 嬉しくなかったわけではない。あの強い腕にも、意志が籠められた瞳にも、捕らえられたのは決して初めてではない。

 でもやっぱり――薫とは無理だ。

 カップ底のコーヒーの残りを傾け、下弦の月と上弦の月を行ったり来たりさせる。ひとつ溜め息をつき、残ったコーヒーにも口を付けようとした。

「ん?」

 胡乱げに彷徨わせた視界の端にふと、不穏な空気をまとう男女の姿を見留めた。

 見るからに剣呑な雰囲気に、周囲の客も意識を向けているのがこの距離からでもよく分かる。男女――というか。

 ……何やってんだ、あいつ。

 片割れの男には、残念ながら見覚えがあった。

 一際目立つすらりと長い手足。今は首の後ろで無造作に結われているものの、カフェオレ色の緩い癖毛。

 どう考えても、奴だ。

 ボックス席に腰を据えている奴と目の前の女性は、もうかなりの間互いに押し黙っているらしい。ぴりぴりとした一触即発の空気が、周囲の介入を拒絶している。

 ああ、修羅場か。

 予期せず同じ空間に居合わせてしまった事実に私は顔をしかめた。

 ホテル街を彷徨っていたかと思えば、人様の職場、しまいには昼間の喫茶店か。出没スポットが多彩で結構なことだ。

 ちなみに、現在奴と対峙している女性はもちろん、私が以前夜の街で見かけた二人のどちらとも違う。つまり三人目。あと一体何人いるのだろう。

(杏ちゃんが好きだ)

 腐ってもチャラ男か。

 残りのコーヒーをゆっくりと喉に通し終えると、目の前の原稿を整えて勘定の紙をさっとつまみ上げた。知人の修羅場を見学する趣味はない。

 すぐそばの書店で新刊のチェックをして、栄二さんに原稿を届けよう。さらさらと頭のスケジュール帳に今後の動きをしたため、よしと頷く。

 あんたはそこで日頃の行いを反省するが良いよ。私が心中で吐き捨て、腰を浮かした時だった。

「貴方がそういうことなら、もう良いです」

 ソプラノの声。椅子を引く音さえ立てることもためらわれるような店内に、その声はとても気持ちよく通った。

 真っ直ぐに奴を見据え立ち去ろうとする女性。私と同世代くらいだろうか。頭上に締めつけるように小さなお団子が結われている。立ち上がった姿は小柄で多少細身だが、仕立てのいい上着を慣れた手つきで身にまとう姿はどこか凛とした印象を与えた。

 勘定を手にした細い指を引き留める大きな手。それを目にした途端、間違えたように大きな鼓動が、私の胸に響いた。

「いいよ、俺が出すから」

「私が聞きたいのは、そんな答えじゃないんですけどね」

「……うん。そうだよな。ごめん」

 意外だった。

 奴のその表情は、問題をすり替えうやむやにしてしまう、いつもの作り笑顔ではない。

 店を出るタイミングを逸した私は再び席に腰を戻し、そのまま耳をそばだてる。野次馬の中のひとりになっている自分が、無性に腹立たしかった。

「少しは私の気持ちも考えてください。これでも貴方のことを考えて……夜も眠れないほどなのに」

 胸が再び音を立てる。紡がれた美しい言葉のなかに、真摯な懇願が滲み出ていた。

「本当にごめん。アリサちゃん」

「……聞き飽きましたよ。その言葉も」

 ぺこりと頭を下げ、彼女はひとり静かに店を後にした。

 三人目の女性。これは明らかに前二名との関係とは違っていた。そして前二名と違うのは、彼女だけではない。

「くそ……」

 小さな呻き声を上げ、ひとりきりになったテーブルに突っ伏すように顔を俯かせる。隙間から僅かに見える愁いを帯びた横顔。本気で悔しそうに噛まれた唇。

 あの男が、女に対してあんなに落ち込んでいる姿を、初めて見た。

 ほとんど無意識だった。おもむろに立ち上がった私は、風通しの良すぎる店内を真っ直ぐ横断していく。胸の奥でくすぶる思いは、情けない「友人」に対する居た堪れなさからだろうか。

「いつまでそうしてるつもり?」

 丸まった背中に問いかける。瞬間、こちらに振り返った瞳は大きく見開かれた。

「杏ちゃん……」

「真っ昼間から逢い引きですか。相変わらずね、あんたも」

 無難に口にした指摘に、続いて訪れたのは心地の悪い沈黙だった。

 目の前に浮かんでいた驚愕の表情が際立って、みるみるうちに血の気を引いていくのが分かる。瞳の奥に、動揺の光が揺らめくのが見て取れた。

「……」

 いや、別に。

 今更他人の男女不純交遊をどうこう口出しするつもりはない。そんなことを気にするようなたまじゃないでしょ、あんただって。

 何をそんな、怖がるような表情を。

「杏ちゃん」

「何よ」

 灯火が今にも消えそうな声色だった。

「話……聞いてた? 全部?」

「あんたたちが痴話喧嘩し始めてからかな。さっきの彼女が、立ち上がったあたり」

 あんまり必死な奴の瞳に、つい折り目正しく返答をする。

 瞬時に会話を巻き戻している様子の奴の顔に、ようやく安堵の色が戻ってきた。

 以前目撃したふたりの女との関係を間接的に突きつけた時は、こんな風に慌てる素振りなんて見せなかったのに。

「はは。油断してた。格好悪いとこ見られちゃったな」

 浮かべられたのは、感情を綺麗に覆い隠す笑顔だった。先ほどの彼女に向けていたものとは、まるで違う。

「杏ちゃんもこの喫茶店使うんだ。今日はひとり?」

「今日はたまたまだよ。あんたは? 今の彼女専用?」

「ははっ。うーん、まあそうかな。でも」

 長く細い吐息は、微かに震えていた。

「振られちゃったかもだから。もう……来ないかもしれない」

 ああ、こいつは馬鹿だ、と私は思った。

 中途半端にこぼれ落ちた軽口に、苛付きが増幅される。力ない瞳に弱々しい語尾。

 ――隠せてないんだよ。馬鹿野郎。

 不意に、思考がホワイトアウトする。それは、一瞬のことだった。

 次に取り戻した意識の中で感じ取ることができたのは、指に滴る微かな冷たさと、「あらぁ」「修羅場?」という周囲からのどよめき。いつのまにか手にしていたグラス。その真下にある、奴の頭。

「……」

 ああ、もしかして、やってしまった。

「……うわー。思ったより冷たっ」

 困ったように笑いながら、奴はぺたりと顔に貼り付いた髪の筋をすくった。

 癖毛の先からぽた、ぽたと床に滴る水の跡が増すたびに、嫌でも現実に引き戻されていく。まるで現実味を帯びない、現実に。

「水かけられるとか、さすがに初めてだよ。俺」

 そう言って笑う奴の優しさに気付いて、私はぐっと喉を詰まらせた。

 いまだに水の滴が奴の髪や肌に筋を付けて落ちていく。

「半端なんだよ。どいつもこいつも」

 脳裏を掠める過去の記憶。

 私情が含まれていることには、とっくに気付いていた。

「……え?」

「そんな半端な想いなら、いっそ綺麗に手を引けって言ってんの」

 例え他の女と戯れようが、私みたいな女にちょっかいを出そうが……彼女に、愛想を尽かされようが。

「諦めつかないんでしょ。どうせ」

「!」

 特別なんでしょ。彼女のことが。

「だったらもう諦めはついたみたいな、物わかりのいい顔してんじゃないわよ。この腑抜け。――馬鹿透馬!」

 言い残して、私は店を後にした。周囲から聞こえてくる全ての音を遮断して歩き続ける。

 顔から感情を消していた。どの情けない感情も、決して浮かんでこないように。

 こんな場面で初めて口にすることになった奴の名前が、やけに悔しかった。


   ***


「これは、早急に何らかの対処をとるべきです」

 ピリピリと殺気立った空気が、会議室一帯に立ち込める。

 ホワイトボード前を陣取る主任の顔は既に鬼の形相と化していた。机に喰らい付くようにわななく両手の指が今にもめり込みそうで、隣に座る中吉ちゃんはあからさまに恐れおののいている。

 主任が鬼に変貌するのも無理はない。何故なら私も全く同感だからだ。

 ここ最近、図書館で貸し出した書籍に対する「いたずら」が、立て続けに発見されていた。

 書籍の毀損とともに乱暴な書き込みが相次いでいる。その内容がまた酷かった。

 特定人物への誹謗中傷や私生活の暴露。そのまことしやかな書込みの被害者は、学生や教授陣に至る大学関係者全域にわたっていた。

 最近は噂を聞きつけてか、図書館利用者の人数は連日うなぎ登りだ。それに比例して私たち司書の仕事が増える一方、書籍調査作業が深夜に及ぶことも珍しくない。

 でもせめて、図書館を悪意の温床にしたくはない。それはきっと、ここに集まる司書仲間の誰もの心中にあることだ。


「っていうか普通に器物損壊でしょ。折角ヒットした私の選書まで……!」

 怒りに震える今野さんに、先輩たちが同調して頷く。

「でもねぇ。ぶっちゃけ犯人を捕まえるなんて雲を掴むような話よねぇ」

「んー。さてはてどうするべきか……」

「あれ? 小野寺さーん? 何してるんですかぁ?」

「一応、今までのいたずらの内容をまとめてるの」

「へっ?」

 中吉ちゃんがひょこっと肩の向こうから顔を出す。私はエンターキーを弾いた後、キャスター付きの椅子ごと振り返った。

「いたずらが見つかった日付、本のタイトルと著者と出版社、保存書架の場所、最後に借り入れしていた利用者の名前と所属学年学部」

「……」

「被害者の氏名と所属学年学部、抽象内容と犯人の心当たり。まあ、これは聞ける範囲内だけど」

 中には今回の被害のことは口にしたくないという人もいる。自分の恥を明かされたんだ。無理もない。

「いまのところ被害者は文系学部関係者が八割以上。まぁこの図書館は文系棟と繋がっていて利用者の割合からいっても特に不思議ではないね。他の分館は被害を受けていないようだし犯人は確定ではないけど文系学部棟内関係者かな。最後の借入れ利用者は、学生が殆どだったけど残念ながら学年も学部もばらばら。保存書架の位置も、カウンター前から奥まった場所に至るまで無差別に被害に遭っているようで――、」

 一息に説明を続けていた私は、そこでようやく、殺伐としていた辺りの雰囲気がぴたりと止んでいることに気付いた。

 不思議に思い顔を上げる。次の瞬間、こちらに向けられているたくさんの視線に、私は目を丸くした。

「えっと。どうかしましたか」

「小野寺さんすごいです! 何かすごい! 格好良い!」

「は?」

 いつもハイテンションの中吉ちゃんが、両手を拝むように組みながら瞳をキラキラさせてこちらに詰め寄る。

 思わず辺りに視線で助けを求めるも、それは無意味だと早々に理解した。

「小野寺さん、すごいわねー! 仕事が速いとは思っていたけれど、分析能力も凄まじいわぁ! 探偵みたいな!?」

 いやいや。こんなので探偵と言っていたら推理小説もドラマもただの日常ものに成り下がりますよ。

「いや~、私一瞬感動で意識飛んじゃった! 小野寺ちゃんさすが! 頭脳派! っていうか、もともと小野寺ちゃんってこの大学出身だから生徒視点の考えも色々詳しいし!」

 先輩。あなたもここに十年以上勤務しているでしょうが。

「“美人司書・小野寺杏の事件簿”。よし、これだね!」

 な・に・が・で・す・か。

 一体何が「これ」なんですか、何でそんな爽やかな笑顔を漲らせているんですか、教えてください今野さん……!

「小野寺杏さん」

「――っ、は、はい!」

 反射的に肩を強ばらせる。

 声の主は、この図書館で最大の権力を掌握している先ほどの鬼の化身。

「犯人探し、やってくれるわね?」

 主任の笑顔は意外にも柔らかなもので、かえって私たち司書全員の恐怖を煽った。

 きらりと表面を撫でるように反射する主任の眼鏡。後頭部に夜会巻きでまとめられているはずの髪が、邪悪なオーラになびいている幻が見える。ああ、こめかみがズキズキ痛む。

 一体全体、どうしてこんなことになったのでしょうか――。


   ***


「それで。落書きイタズラ犯を捕まえる任務を与えられたの? 杏一人で?」

 目をくりくりさせながらマンゴージュースを啜る奈緒に、私はココアに浮かんだパウダーを一心不乱に混ぜていた。

 幸い今日は、ここ「カフェ・ごんざれす」の客数もさほど多くない。一応周囲に気を遣いながら話を進めた。

「先導役を仰せつかったってだけよ。職場の全員が犯人を吊し上げにするって意気込んでるし。ただ、やみくもに行動して業務に支障が出ても困るからって」

「確かに杏は昔から察しが良いし、頭も切れてたけど……今って結構頭の可笑しい奴が犯人だったりするじゃん。警察に任せた方がいいんじゃないの?」

「まあ、学校側も本気で犯人を捕まえる気があるなら、警察にでも何でも言うんだろうけどね」

 面倒事は事なかれ主義で通してきた上の方々が、メディアに取り上げられかねない危険を簡単に許すわけがない。

 完璧主義者の主任が今回の事件を職員会議で求めたときも、結局は館内で起こった出来事と指摘され、解決もその後の処理も全てこちらに一任すると言われたらしい。要するに、事件そのものを体よく押しつけられたわけだ。

「図書館が今まで大学に与えてきた功績も何も分かっちゃいないんだから。あんのセクハラ教授陣が」

「うっわー……結構派手に破かれてるね、この写真とか」

 許可をもらって撮影してきた何枚もの被害書籍の写真。それを少し進めるや否や、奈緒が小さく悲鳴を上げ息を呑んだのが分かった。

「これ……血? そんなわけないよね……?」

「ただの赤ペン。どっちにしても気味悪いよね。軽くトラウマになるよ」

 書籍いっぱいに書き込まれた殴り書きの赤文字は、日を追うにつれ内容が詳細に、過激になっていく。

 男子学生の誰々が二股をかけているだの、事務職の女性が夜な夜な既婚者の相手をしているだの。中には先に口に付いたセクハラ教授への言及もあり、ざまあみろと思わないでもなかったが。

「んで。奈緒から見た感じどうよ。何か感じることとか、引っかかることとかある?」

「んん~……っ、そうだなぁ」

 眉をぎゅうっと寄せあげた奈緒は、一枚一枚写真を慎重にスライドさせていく。

 さっきは私のことを察しが良いと表現してはいたものの、私から言わせるとこの子の方が余程小さな取りこぼしを拾い上げる能力に長けていた。

 子供ながらの発想に近い、純粋な考えのもとで導き出される綻び。何かひとつでも、得られるものが有ればいいと思い、静かに答えを待つ。

「犯人もよくもまぁこんな沢山のゴシップを集めたよね。暴露された人たちも生徒から先生までいるみたいだし。普通に学校内の関係者だとしても、ここまで知るのは難しいと思うなぁ……とか?」

「ふんふん」

「それとさ。どうでもいいところかもだけど、被害者の中に旧字を使ってる名前の人がいるよね。この人とか、この人」

 奈緒の細い指がたどる先には、確かに旧字を使った名前の人が数名見られた。中には読み方を窮する漢字もある。

「こういうのってさ、普通に生活してたらまず意識しないところだよね。私、会社でよく人事部から書類出してもらうけど、いまだに漢字を迷う社員いるもん。神崎の崎の字とか!」

「ということは」

 旧字の使い方が全部正しいとしたら、名簿等で正確に名前を把握しやすい職員寄りの犯行か。

 いずれにしても、犯人に近付く手掛かりになるかもしれない。

「今のところ気付いたのはそのくらいかなぁ。ごめん、大したこと言えなかったよ」

「ううん。寧ろ助かった。ひとりじゃ煮詰まってばかりだったから」

 やっぱり奈緒に聞いて良かったよ。そう告げると、奈緒はほっぺたをピンクに色づけて笑みを綻ばせた。

「今日は私が奢るから。すみません栄二さん。追加で飲み物、良いですか」

 声をかけると、すぐさま栄二さんが穏やかな笑顔でオーダーを書き付ける。この人もそうだ。裏の性格は謎にしても、人を引き寄せる人というのはどこか温かい。

「でもそっかぁ。このことがあったから、何かいまいち元気がないんだね、杏も」

 安心したような言葉に、ココアのスプーンに触れかけた指が小さく震えた。

「てっきり、あの馬鹿幼馴染みと何かあったのかと思ったよー。妙に考え込んだ後みたいな顔をしてたから!」

「そう、かな?」

「私としてはね。透馬君は完全に杏のこと特別視してるし、物腰柔らかいし優しいし大人だし。ちょっとモテすぎちゃうのが気にかかるけど、良い人だと思うなぁ~」

 一応周囲の女性客に遠慮したのか、若干小声で告げた奈緒は、ふふん、と鼻を鳴らす。私もそれに曖昧に笑みを浮かべながら、当の二人のことを思い返していた。

 好意を向けてくる所作こそ見せられても、真に受けちゃいけない。

 薫は小さい頃から実直で誤魔化しが嫌いな奴だった。だからこそ、二年前のことを罪の意識として今まで心に残し続けていた。愛情と同情をはき違えているだけだ。

 そして透馬も、本音を曝け出しているのは全部「アリサちゃん」と呼ばれた彼女にだけ。珍しくなびかない自分に一時的に興味を持っただけだろう。

 どんなに言葉で繕ったって、どいつもこいつも自分の他に「特別な人」がいる。私よりも愛らしくて素直で魅力的な人が。

 部外者は――私のほうだ。

「杏? どうしたの?」

 心配そうに眉を下げる奈緒と目が合う。

「ん。心配してくれてありがと。でも大丈夫。もう心配いらないや」

「へ?」

 丸くなった瞳に、ふっと笑みを送る。

「もう何もないよ。薫のことも、透馬のことも」

 この時期に事件が起こって良かったのかもしれない。ひとつのことに集中できる。大好きな、本のことだけに。

 最近の自分は可笑しかったのだ。散々個人主義で生きてきたくせに、今更他人のことで胸を淀ませるなんてらしくない。

 今度こそ迷いは捨てる。人に振り回されるのは真っ平だ。

 目を伏せ、ふたつの残像をゆっくりと溶かし落としていく。大丈夫。前だってそうだった。

 二年前のあの時だって、自分にそう言い聞かせてここまで来たんだから。


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