3話 サイガ、準備する。
感想、レビュー、ポイント、待ってまっせ!
「ただいま帰りましたー!」
「おう、おかえり。」
「とりあえず、全部ありましたよ。はい土木用具と肉体労働者の買い付けの証明書。」
「おう、ありがとう。そこで休んででくれ。」
「いやいや!サイガ様が働かれているのに私だけ休むなど言語道断ですよ!」
テンション高ぇな。
「プリンあるぞ。」
「休憩入りまーす!」
バイトかお前は。しかも忠誠心がプリンに負けてるし。
昨日のうちに作っておいて良かったな、プリン。異世界ものの小説では無類の人気スイーツだが、ここでも通じたようだ。特に女性に。
それぞれの反応。
KY母様「まぁ、おいしいですわね!・・・ぐすっ。サイガがお菓子を私のために作ってくれるなんて・・・!もう思い残すことn(以下略」
プリティエンジェルマイシスター「お兄ちゃん。(イケヴォ風の声)私に毎日プリンを作ってくれないかな。これからずっと。」
とまあこんな感じだ。キャラ立ち過ぎだろ・・。
「んー、おいしー♪」
ニコニコしているシャサを見ると癒される。作った甲斐があったな。またなでなでしたくなってきたぞ。
「しかし、大量の土木用具と肉体労働者を集めてどこを開発するんですか?」
「ん?ああ、マクスウェル山だよ。活火山なら温泉が出るかもしれん。」
「おんせん?なんですかそれー。」
「あったかいお湯をためてそこに入るんだ。」
「え!?火傷しますよそんなの!」
「いやいや、熱湯には入らないよ。ちゃんとぬるくするさ。」
「あ、そうですか。」
「お、時間だ。行くか!」
「あ、もうそんな時間ですか。よーし、理解を得られるようがんばりましょう!」
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俺たちが向かったのはこの屋敷の客室だ。そこに領内すべての村長または副村長を呼んでいる。
俺の経済改革はすなわち農業革命も含んでいるので村長団の協力を得なければ絶対に成功しないのだ。
「おーおー、集まってますね。」
「サイガ様!」
ザザザーッと全員起立し、俺に頭を垂れる。
「この度の領主着任、まことにおめでとうございます!」
「「「「「「おめでとうございます!」」」」」
「ありがとう。まぁ挨拶はその辺りで。座って下さい。」
またザザザーッと一斉に着席する。卒業式みたいだ。
「今日集まっていただいたのは他でもない、私のことをみなさんに知ってもらいたかったからです。」
皆の表情が引き締まる。俺を品定めする目。大いに期待しているというのが丸分かりな目。暴君かもしれないと不安に思う目。たくさんの目が、俺を見つめている。
「私は、このウォルフガング領を大いに発展させたい。具体的に言うと、この州の州都になれるほどに!」
州都とは、いくつかの領地をまとめた州の都である。このあたりでは、工場制手工業が発展している王族の直轄地が州都だ。
「貧困を無くしたい。教育を普及させて識字率100%を目指したい。おなかいっぱいにご飯を食べさせたい。
・・・・・全員が幸せになって欲しい!
そのためにはみなさんの力が必要です。私はまだ17歳ですが、みなさんに指示を出します。命令します。腹が立つかもしれません。命令に疑問を持つかもしれません。それでも従ってください。わからなければ、開けておくので屋敷の執務室にいつでも来て質問してください。相談も受け付けます。
私はこの1年間で結果を出さなければ、副領主のソドムに領主の座を渡さなければなりません。あいつが領主になったら間違いなくみなさんが不幸になる。だから、協力して欲しいのです。」
シーン・・・・。静寂が満ちる。ひ、響かなかったのか・・・?
「サ、サイガさま・・・。このザイナブ、老い先短いですが、一命を賭してお仕え致しますぞおおお!」
「俺もです!」「私も!」「ああ、サイガ様の時代に村長になれて、俺らは幸せだな!」「ああ、サイガ様!期待してますよ!」「よっ、若き天才領主様!」
一人が叫ぶと全員叫び始める!盛り上がっているようだ!!最後のは調子に乗りすぎだが。
「ッシ!」
『村長団全員、あなたにお仕え致します!この命に代えても、必ず結果を出しましょうぞ!』
全員でこう言ってくれた。最初にトップが覚悟を伝えるのは帝王学的にもやはり効果的だな!
「ありがとう、みんな!」
つかみは完璧。これから具体的な指示を出していく。
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どこ行ったんだろう彩雅・・・。生きてるよね?ご飯ちゃんと食べてるの?
私、四宮燐は、幼馴染の、金田彩雅が好きだ。ずっと昔から好きだった。でも、関係を壊したくなくて、今まで告白できなかった。多くの男子から好きだと言われたけど、全部断った。イケメンの生徒会長も一言で切り捨てた。まぁアレは女ったらしのクズだったから当然だけれど。
周囲は私と彩雅が恋人なのだと思ったらしい。だがそうでもないので、私がレズビアンだと陰口を叩く女子もいたし、男子を振ったことが原因で一部の女子から罵声を浴びたこともある。でも、何を言われても、
私、四宮燐は金田彩雅が好き。どうしても、気持ちが抑えられない。
彼が行方不明になる前日、本当は彼の部屋で告白するつもりだった。
成功したら押し倒してキスしようかとすら思っていた。
けれど、しゃべっていたらいつも通りの雰囲気になってしまい、私はそのまま去ってしまった。
死ぬほど後悔した。
まさか次の日に彼が行方不明になってしまうだなんて・・・。
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「おばさん、行ってきます。」
「ああ、いってらっしゃい燐ちゃん。」
金田のおばさん、やつれてる・・・。やはり息子が心配なんだろう。
私も、彼の事を考えると本当に胸が苦しくなる。
つらいよサイガ・・・。どこにいるの・・・?
学校が終わり、彩雅の部屋に寄る。(おばさんに許可はとっている)彼のマイファムをプレイするためだ。
私はこれが怪しいとにらんでいる。理由はないけれど、なんとなくそんな気がする。あ、彩雅と私の写真・・・。机に置いていてくれたんだ・・・。
「さいが・・・彩雅ぁ・・・バカ・・・。」
駄目だ。涙が、止まらない。こうなったら、もはや彼の布団に飛び込んで気持ちを落ち着かせるしか方法がない。
(お困りのようだのう?)
ようやく涙が止まり、ベッドにあお向けで寝ていた私に、突如、『声』が聴こえた。
「誰!?」
(ふふふ、わらわはわらわじゃ。それより、その男にそこまで逢いたいのかの?)
「ええ。逢う手段があるのなら、たとえ何を引き換えにしたって、彼に逢いに行くわ。」
(ふむぅ、よかろう。恋する乙女は強いの。)
「連れて行ってくれるの?」
(わらわはお主をあちらに飛ばすだけじゃ。あとはがんばれ。)
「あちら?」
と言おうとしたが、言えなかった。私の体は、すでにそこにはなかったから。
ここまでお読みくださりありがとうございました!
さて謎の声は誰だろうね・・・?(チラッ)