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モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
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食料問題

 私の名前はフローラ。

魔の森と呼ばれる魔物が跋扈する騎士爵領を治めるアマゾン家の7人兄弟姉妹の次女。

幼い頃に私はアマゾン家の主家であるダフマン子爵家に養女に出された。


 子爵家のお嬢様であるレイチェルと一緒に育った私は、王都にある貴族の子弟の多くが通う事にある学園の生徒となった。

その頃の学園では一人の男爵家の少女が第二王子のライオネルとその取り巻きである身分の高かったり優秀な男子生徒達を次々と魅了していっていた。


 その事が貴族内のパワーバランスを壊して政変が起きる事になり、果てには隣国との戦争が起こってしまうきっかけになって、国の中枢がガタガタになるといった出来事があった。


 そんな中で私は渦中の〝チャラ騎士″ラズリィ侯爵家のフリードに恋をし、彼との子を身ごもったが裏切られ捨てられてしまった。


 私は養家であるダフマン家に妊娠の事を言えず、ひっそりと子どもを、生まれ故郷であるアマゾン家で産むために旅に出たのだが途中で倒れてしまった。


 親切な宿屋のおかみさんに助けてもらって子どもを無事出産する事ができたが、陣痛の激しい痛みから前世を思い出す。


そしていろいろあって冒険者になり、生まれ故郷に産まれた子どもと帰ってみれば、魔の森の氾濫で故郷は壊滅的な被害を被っており、私は生き残った兄のレーフェンと共に国を再建するために前世の知識を活用することを誓った。

私はフリードとの子どものユリウスを、実は『赤の牙』と呼ばれた凄腕冒険者パーティのメンバーだった宿屋のおかみさん達や領主である兄や兄の家臣達と立派に育てる決意をしてアマゾン領の人々ともに生きていくつもりでいた。


 アマゾン領は順調に発展していき、兄は隣の王国直轄地を賜り男爵位を賜った。

領内に冒険者ギルドまで出来て、これからと言う時に…


 忘れたと思った過去が王都からやってきた。

 魔の森を鎮める方法とやらを第二王子が実行する事になりその一行にかつての恋人のフリードが付いて来る事になったのだ。

魔の森を鎮めるにはヘルドラ遺跡に過去に王家の先祖によって持ち出された石を戻す必要があるらしい。

 私は冒険者のひとりとしてその旅の一行に加わる事となり今はその旅の最中である。



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「まずい事になりました」


騎士達に呼ばれて、ライオネル王子の元へ呼びつけられたニコルが浮かない顔で帰ってきた。


「騎士団が保管していた食糧がダメになりました。」

 「どういう事?」


 早朝ワイバーンに急襲された野営地は混乱を極めた。

 天幕は潰され吹き飛び、荷物は転がり中身が散乱した。


「レーフェン様からお預かりした分は大丈夫だったんですが…」


騎士団の持ち込んだ食糧、主に保存用のパンがダメだったそうだ。


「それもワイバーンのせいじゃなくてですね」


ニコルは手にしていたパンを差し出した。それには青や黒やどぎついピンクの色とりどりの斑点が。


「ちゃんと冷めないうちに梱包しちまったんだな」


 ガスパがニコルから受け取ったパンを二つに割る。


「中も当然だめだな。…王都から持ち込んだパンがすべてこんなか?」

「いえ、全てではないですが。」


 こっちの世界では、パンに生えたかびなどは削り取って食べる事が普通だ。

 もちろん平成日本に生きた記憶のある私には一見カビていないパンにもカビものと一緒に保管されていたものにはカビの胞子が付着していて危ない事が常識だが、こちら流に合わせている。

 飢餓とカビの胞子が付着したパンと天秤にかければいたしかたない事だが、私としては余裕のある時には積極的にはあまりカビた部分を削り取ったパンとかは進んでは食べたくはない。

 何しろこちらの世界のカビの性質などよくわからないのである。

 さらにここは魔の森の中だ。

 濃厚な魔の力を受けてただのパンのカビだった物にも毒性が出たり変種になっていないとも限らない。


 「足りないのか」


 ガスパがため息をつく。


 今回、冒険者に払う依頼料をケチるためか、パンは王国が用意して支給制となっている。

 『赤の牙団』には充分なまさかの時のための備えはあるが、他の冒険者達の事はわからない。

 そして騎士団などでは自前では食糧を持って歩いている騎士など少ないだろう。


 「僕が取って返してレーフェン様にお願いをしにいくことになりました。そこで…『赤の牙』さんに護衛をお願いしたいのです」


 「そうするしかないな」


 「言いずらいんですけど、冒険者さん達の事が信用できないみたいで…」


 ニコルは申し訳なさそうな顔をした。


 「僕がいなくなると、冒険者さんたちとのやりとりに支障が出るらしく…」


 ネリーとガスパ、それにダンにこちらに残って騎士団との調整役をするように頼んできた。


 「一番年配で、みなさん大人ですし」


 「カルロや『ラフポーチャ』のゼータでもユアンでもいいと思うがね。あいつらならバカをしないよ」


 「カルロさんには別件で頼みたい事があるそうです。それに信頼度はあなた達の方が上です。…竜麝香のせいで、あちらもナーバスになっているので」


 ソルドレインのマーケットでララリィ嬢達を護衛をした事からある程度は信頼されているらしい。


 「ジルベールとフロルさんに、僕の護衛をお願いしたい。あと、騎士団の方からも一人ついてくるそうで。」


 自分は?という感じでピールが首を傾げる。


 「ピールさんには『カルロスミスと愉快な仲間達』と一緒に一部の騎士団の方と先行して騎獣達の待機場所と野営地の確保をお願いしたいそうで」


 カルロ達も元はハイグリーンの貴族に仕える騎士の家の者で身元もしっかりしている。先行しても妙な仕掛けを設置したりしないと判断されているようだ。


 「たしかに今朝みたいに、何か起こってから竜達を呼び出すのは後手にまわるね」


 今朝の事は騎獣達が一緒に夜営ポイントに待機できていたなら防げられた事かもしれない。

 いかに色ボケ中のワイバーンだとしても、目指す地に騎獣達の気配や臭いがしたならば警戒をしていきなり襲ってくるという事はなかっただろう。


 あの時、襲ってきた雄のワイバーンは雌達が人間に囚われていると判断していたようだから。


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