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モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
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魔力酔い


 「ニコルが呼ばれていったな」


 ワーム肉祭りを終えて見ればすでに陽は高く昇り、兎や猿など小動物系の魔物が木々の影から虎視眈々とこちらを覗いて見ている昼間になった。


 冒険者達もすっかりと身支度を終え、いつでも出発できる準備は出来ているのだが、騎士達の方は出発するような気配がない。


 「まぁ『竜麝香が』が使われたみたいだしね。用心もするわね。竜麝香について聞きたいのか、別の意図があるのか…」


 ダンとネリーが心配気にニコルの去った方角を見ている。


 狩ったワイバーンを解体する時にニコルに解説してもらったのだが、倒した個体を調べるとここ2~3年に大人になったばかりの若い雄ばかりで、しかも首の あたりに「婚姻色」と言われるまだらがある物ばかりだった。

すなわち婚活中の雄ばかりだったのである。


 『竜麝香』が効くのは雄ばかりという事実を鑑みても、誰かが故意にワイバーンを呼び寄せたのは火を見るより明らかな事。


 「今思えば、蜂の魔物の件も偶然じゃないかもねぇ」

加えてネリーはそんな事も言う。


 「だってさ、おかしいじゃないか。王子の持っている石ってのが『魔物を鎮める効果』があるってなら、その石に一番近いはずの場所に蜂の魔物が寄りついたってのがどうもね」



 それならば、この遠征軍によからぬ事を企んでいる輩が潜んでいるって事になる。




 「あたし達冒険者を疑ってるんなら、ちょっと面倒くさいことになるだろうね」



 「指名の強制依頼なのに、疑われるって?冗談じゃないね」


 ラフポーチャのマリアではなく、リーダーっぽい人がうっかり、と言った風に口に出した。


 いつもはマリアの失言を抑える立場の彼だが、きっと前から思う所があったのだろう。

 ついに不満を口にしてしまったという感じだ。


 そしていつもなら一番に辛辣な言葉を吐くはずのジンは魔力枯渇でブラックユニコーンの腹に寄りかかっていた。

 顔色が悪いし気分が悪そうだ。

 目を閉じて額に手をあてている。


 ネリーとガスパが視線をかわす。

 そして心配げに私の方を見てネリーが言った。


 「フロルは何ともないかい?」


 船酔いしたような悪阻の酷いののような。

 頭蓋の中や胃の中を激しくノッキングされてるような気分の悪さは、魔力酔いの症状だ。


 この森の魔力は濃すぎる。


 体内の魔力がなくなった状態で外から濃い魔力を取り入れた為に身体に不快な症状が出るのだ。



 「少し休みたい。今出発とかでなくて助かったかも」


 「出発になったら声をかけるから座っていろ」


 ガスパとネリーに言われ、私は地面に腰を下ろした。飛竜が移動して私に太陽の直射日光があたらないようにしてくれるのが分かり、私は手をあげて竜の鱗に覆われた鼻面を撫でてやった。


 野営の時と違って、開けた場所に冒険者は集まり、反対に騎士達ワイバーンの襲来のせいで開けた場所に恐怖心があるのか森の木立の中に控えている。


 「俺達も合図があるまでゆっくりしますか」


 『カルロスミスと愉快な仲間達』のパーティのメンバーが腰を落ち着けると、皆座り込みはじめた。

 冒険者達は明け方から陽が昇るまでワイバーンと戦ったのだ。

 皆、疲れている。

 それに、隙間時間でもわずかな時間を拾って英気を養っておくことが生き残るためのコツだと充分すぎるほど分かり切っているメンバーばかりだ。


 誰かが荷物から取り出した携行食料が冒険者の間に渡されていく。

 


 木の実入りの固いクッキーの出来損ないのような食物を口に入れ、水を飲む。

 

 なかなか進まない旅の行程を思って、ため息がでた。


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