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モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
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ワイバーン2


 「あんのっバカ犬!」


 狐獣人のジンジャーが弓をつがえ、ターメリックが対峙するワイバーンに向けて矢を放つ。


 「ちっ!」


 舌打ちをすると「煌駆のジン」が駆けだし、魔法を使って群がりだした他のワイバーンにむけて風の刃をぶつけ追い立てる。


 私もジンと共に飛び出すと背中合わせになって、空から降りてこようとするワイバーンにむけて炎を撃ち威嚇した。


 他にも何人かの冒険者が気がついて走り寄る。

 そして倒れた騎士の元に辿りつくと振り回されるワイバーンの翼と嘴による攻撃を避けつつ、腕をつかむと引き摺って森の中へ非難させる。


 「ターメリック!」


 ジンジャーがワイバーンの注意を惹きつけているターメリックに向かって叫ぶ。


 「わかってるよっ!このっ!しつこい!!」


 「付け根を狙え!翼の付け根だ!」


 他のワイバーンと戦いつつ、カルロが叫ぶ。

 彼のパーティは避難する他の騎士を助けるために、ターメリックからそう遠くないところで戦闘していたのだ。


 「付け根ってどっち側だ?!!」


 休みなく、矢を射かけながらも少しテンパっているのか『ケモミズ』のパーティメンバーは上ずった声で聞き返す。


 「このやろう」


 『ケモミズ』パーティリーダーの熊の獣人のバジルと狸の獣人は矢を捨てて斧や剣を両手にターメリックを相手にしているワイバーンに襲いかかった。


 だが、図体の大きな二人が自分に向かってくるのを見たワイバーンはあろうことかターメリックをその鉤爪にひっかけると空に飛びあがった。


 小柄なターメリックはなす術もなく、ワイバーンの足に捕まれたまま空中に運ばれていく。


 「くそっ離せ!離せ!」


 ワイバーンの足を叩いたり噛みついたりしているが、効果はいまいちのようだ。



 ヒュィィッ!


 ジルベールの竜を呼ぶ口笛の音がした。


 呼ばれた竜が何頭かワイバーンを突き飛ばしつつ空より降下してくる。


 「来い!」


 ガスパが両手を組んで用意をした足場を利用してジルベールとネリーが、それぞれの竜の背に飛び乗る。


 竜はそのまますれすれに地面の上を滑空すると翼を二、三度羽ばたかせて空に駆け上がっていくとターメリックを爪にひっかけたままのワイバーンの進路を妨害するかのように前に躍り出た。



 ギャキュェェェェェ


 邪魔だと言わんばかりにワイバーンが鳴く。


 対して竜はその目を眇めただけだった。


 気がつけばワイバーンの群れはあらかた追い払われており、逃げそびれた数頭が竜達にいいように小突きまわされている。


 ギャッギュィィィェェェェ!


 耳障りな叫び声をあげると、爪にひっかけていたターメリックを放り出すとワイバーンは逃げる事に決めたようだ。


 「わっわぁぁ」

 

 突然宙に放り出された方のターメリックは悲鳴をあげた。


 「いかん」

 「ターメリック!」


 悲鳴と怒号があがる。



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