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モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
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勝ったものの

 「楽勝だったな」


 高価な素材になるような物や魔石、食べられる部位を出来るだけ取り分けて保管し、死んだ魔物の身体の残りを炎で焼く。

 この世界では死んだ者はアンテッド化する事もあるらしい。


 それにしても勝ち戦というのはこういう物か。


 ライオネル王子の率いる騎士団は浮かれ、高揚しているようだ。


 普段、魔物を相手にしていない彼らだったが、今日は楽な戦だったはずだ。

 母猫が狩りやすいようにあらかじめ怪我を負わせた獲物を子猫に与えるように、冒険者達はあとは止めを刺すだけの状態の魔物を騎士達に差し出した。

 それには実際に闘わせて、それぞれの魔物の癖や急所を知り、戦いに慣れてほしかったからという理由がある。


 御膳立てされた戦いだったことに何人の騎士が気づいているだろうか。

 彼らの浮かれっぷりを見ていると、どうも怪しい気がする。


 今日の戦いはたぶん前哨戦という奴だろう。

 ピールが言ったようなおぞましい姿の魔物とはまだお目見えしていないからだ。


 たいした被害も出なかったはずだがそれでも怪我人は出たらしい。

 騎士団ではララリィ嬢の治癒魔法が役にたったそうだ。


 「ララリィ。無理をしないでくれ」

 「わたし、みなさんのお役に立ちたいんです」


 甘々な王子とララリィ嬢のそんなやり取りがあったらしく、王子とその取り巻き達が感動していたらしいとまた風呂の歩哨に出かけていったネリーから聞いた。


 「魔の森」に突入したというのに、戦いが終わってキャンプを張ったとたんにお風呂に入ったとか、ちょっとあきれた。


 迂闊すぎる。


 迂闊と言えば、とりあえず魔物で迂闊な奴らは今日の戦いである程度は駆逐できたようだ。

 残っているのは、こちらの戦力より格下で襲うのを躊躇っているような弱い魔物か、むやみに攻めかかったりしないようなある程度知能や本能のある奴らになった。


 これからは魔の森の中の戦闘になる。

 彼らのホームグラウンドとも言えるので、私達は充分注意をしなければならない。


 「しかし少人数ならばもっと早く遺跡に辿りつけるのになぁ」


 冒険者パーティ「ラフポーチャ」のリーダーっぽい人が夜営準備をしながらぼやく。


 冒険者を含め200人程の行程である。

 見通しも悪いうっそうとした魔の森の中にあっては足取りは重い。


 実際のところ、冒険者パーティを雇い、飛竜で飛べば遺跡までは3日程の距離である。

 王子の権威付けのためか騎士団がつき、さらに有力貴族の子息まで各自数人程度とはいえ私兵を連れての参戦は悪戯に人員を膨らませている。

 膨らんだ分動きもスピードも遅くなる。


 野営地を見繕うだけでも大作業だ。


 一応出発前に目鼻はつけてはあるのだが、予定野営地に到着してみれば、全員が休むには狭く、雑草が高く生い茂り倒木などで状態が悪い事も多い。


 「飛竜で行ったとしても無理じゃない?お嬢様のせいでどのみち遅れるよ。主にお風呂が原因でね!」


 マリアが容赦なく言った。


 いやみの一つも言いたくなるのも無理もない。


 結局、野営に適したいい場所は王子達や騎士達が使い、冒険者に与えられるのはハズレの場所なのだ。


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