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モブの恋  作者: 相川イナホ
回顧編
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わたしは私の物語を紡ぐ


 わたしの生まれたアマゾン家は王国のへんぴな田舎にあるの。

 物心ついたときにはダフマン家で暮らしていたから、わたしにとって何がなんでも帰りたい場所ではないわ。こんな状態で帰って歓迎してもらえるとも思えないし、でも他に頼るところもなくて私は帰郷を決めたの。


 学園を去った時、もう8か月目に入っていたけれど心労のせいで食べてなかったからお腹はそんなに目立っていなかったと思うわ。

 でも、レイチェルからは「最近太った?顔は細くなったけど・・・」

って言われていたから気がつかれる限界だったと思うわ。


 本当、 いくらそんなにお腹が目立たなかったとはいえ、身重の身で旅をしようだなんて・・私は無知な子供だったわ。

 案の定、馬車にちょっと揺られるとお腹が張って旅は遅々として進まなかったのよ。


 そうこうしている内に戦争がはじまったの。

 原因はララリィ男爵令嬢ね。

 この国の王子と留学で学園で学んでいた「天然タラシ、他国の王子」のアレクサンダー様の令嬢を巡っての不仲がとうとう国同士の争いまでに発展してしまったようね。

 迷惑な人たち。


 私はそのせいで馬車を途中下車した町で足止めを食らってしまって、世間しらずの哀しさ、軍資金がとうとう底をついて困っていたところを親切な居酒屋のおかみさんに拾われ、働きながら戦争が終結するのを待っていたの。


 

 そしてそうしている内に産み月がきてこうして赤ちゃんを産むことになったのだけれど、15歳の成人を前に母親って、結婚が早いこの世界でも早い方ね。


 私を捨てたフリードも17歳で父親になったわけなんだけど知らないから、もう自分も父親なんだってこと気が付いているわけもないわね。

 というか戦争のどさくさで私は死んだと思われていたみたい。

 戦地に近い場所だったからね。


 誰か悲しんでくれたかな。

 レイチェルは間違いなく心配してくれたと思うけど、フリードは・・・ないわね。あの薄情で非常なあいつが心配とか少しはわたしに対して悪かったとか・・・思うわけないわよね。


 はぁ涙が出る。


 未練なんか・・・未練なんか・・・ないもん。

 でも涙が出ちゃう。まだ14歳だし。

 前世からの年齢を足すとアラフォーだけど。



 戦争はけっこう早く終結したみたい。原因が王子同士の恋のさや当てだものね。



 やってられないわね。

 


 生まれちゃったので、移動が無理になったわ。生まれたての赤ちゃんを連れて旅とかできないものね。

 居酒屋のおかみさんには悪いけど、もう少しお世話になるしかないわね。


 いろいろと懸案事項はあるけれど、わたしは私が主人公の物語をこれから作っていかなきゃだし、もうお母さんなんだから強く生きなきゃね。


 バイバイ、脇役だったわたし。フリードやララリィが主人公だった物語に何の影響も与える事ができなかった私。


 

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