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モブの恋  作者: 相川イナホ
ヘルドラ遺跡にむけて
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人はそれをフラグと呼ぶ

 「出発!」


 高らかにファンファーレが吹き鳴らされる。

 鼓笛隊が鼓舞するかのように勇ましいリズムを刻む。

 王都からわざわざ、今日の為にこの鼓笛隊さん達ははるばるこの僻地まで来たらしい。


 いいのか中央。そんなお金があったらとかつい考えてしまう。

 王族であるライオネル王子に権威づけをしたいのはわかるけれど、誰に対するアピールなんだろう。

 なんだかなぁ。


 ライオネル王子配下の騎士隊を先頭に冒険者達も出発する。


 「ふん。ようやく腰をあげたか」


 声だけで姿は見えなかったけれど、たぶん今言ったのは煌駆のジンだろう。

 相変わらず歯に衣着せぬ物言いだ。


 と、いうのも、ララリィ嬢が襲撃のショックを受けたという事で5日間もソルドレインの旧領主館に滞在なさったので出発が大幅に遅れたのだ。


 「それにしても、アレがユリウス坊の父親ねぇ」

 ネリーは肩を竦めた。

 あのユリウスそっくりな金の髪と目の色でそうとわかったらしい。


 「チラリと見ただけどさ。なんだか芯のなさそうな男だね」

 「というかバカだな!」


 続いてダンが断じる。…洒落でなはい。



 「今となったら、自分の見る目のなさに軽く落ち込む…」


 私は俯いた。

 言い訳をすれば、あの頃は私も若かった!世間知らずだった。

 今となって見れば黒歴史他ならないけれど。

 本当に人生やりなおしたい。すでに転生済みのこの身なれど!




 当時は真剣に恋をしていた。


 もちろん、フリードの何処が良かったと思っていたのかは思い出せる。


 あんなんでも、付き合っていた時はイイ人だった。優しかったし。恰好よかったし。


 でも不誠実で心ない仕打ちに傷つけられたのも事実。

 思い出したくもないような気持ちと何故?という気持ち。


 私の気持ちは振り子のように揺れる。

 もう吹っ切れた気になっていると思えば、急に焦がれるような気がして胸がチリチリしたりする。


 多分、ちゃんと「さよなら」をしていないからだ。

 突然切られてしまった思いの行方は収まるところを見つけられないでいる。



 「若い頃はいろんな経験をするもんさ。大丈夫、今のあんたはいい女だよ。ユリウスの母親だし。おまけに強い」

 ネリーが私だけに聞こえるよう耳元で囁くように言ってくれた。


 ありがとうネリー。

 ネリーのかけてくれる言葉は暖かい。



 「あのお嬢様もねぇ…襲撃でショックを受けたって言うけど、男を侍らしてキャッキャしてたようにしか見えなかったんだけど」


 やっぱり他の人の目からもそう見えたんだ。

 美男の侍従にドジっ子年下騎士、ワンコ魔術師、俺様王子にチャラ騎士などに取り巻かれつつも、ガスパに色目を使ったりしていたし。

 私の敬愛する兄をも取り込もうとしていたそぶりもあった。


 どんだけハーレム要員を増やしたいんだよ!


 この欲深さんめ!


 兄は子煩悩パパで、領主としての責任感の塊なのでララリィ嬢に墜ちる訳はないけれど、ガスパが墜ちないかちょっとドキドキ心配でした。

 でも…


 「どうも始終あの娘から邪念を感じる…」


 ガスパにはララリィ嬢から送られる秋波も、邪念としか感じられない様で…思っていたより枯れが進んでいるようでした。


 ガスパさぁぁぁん(泣)


 「取り巻きがあの娘と関わると仕事を忘れてしまうのは通常なのか?」


 ララリィ嬢の町歩きの護衛についた冒険者達は町での不足物資の調達が出来なかった。

 当然その事を優秀なあの兄が気が付いていない訳もなく、ちゃんと物資を補てんしていてくれてあったのだが、あのドジっ子騎士のアレンがやらかしてくれていた。


 そう、単純なミス「配るの忘れてた」を発動。

 アレンという少年騎士は前は鍋を焦がして分隊長さんにも怒られていたし、さすがドジっ子属性というか何というか残念な仕様だ。


 「はぁぁ。何ともしまらないなぁ」

 「こんな気の抜けた状態で遺跡に突っ込んでいって…大丈夫なのかい?」

 「大丈夫じゃない気がする」


 主に騎士団が。


 「赤の牙団」や同じ冒険者が巻き込まれるような事態にならなきゃいいけど。


 人はそれをフラグと呼ぶ。


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