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モブの恋  作者: 相川イナホ
幕間 ハイグリーンギルドで
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冒険者になって4


 「お金は貸せる程持ち合わせはないけど、今度店の休みの日に一緒にダンジョンに潜るつもりなんだ。雑魚の相手ならできるからね。サムもそのぐらいなら協力できるだろ?」


 良い狩場でなら人数が多ければ狩れる獲物の数は多くなる。

 ランクの上のヒックス達の報酬の取り分は多いわけだから、つまりはそういう事だ。

 実際5人でパーティを組んでいた時にも初心者達の集まりにしては、それなりの稼ぎをしていたものだ。

 方向性などの違いで仲違いしてしまったが、同じ村の出身ということで5人の連携は初心者パーティにしてはうまいこと取れていたと思う。



 「ヒックス達に稼がせてやろうぜ。一度位付き合ってやりゃ、気がすむだろう。金はないけどこの身なら貸し出してやれる。意地してる訳でもないからな」


 サムも肩をすくめそれに同意した。



 ラスティの主張で、ヒックス達のレベルに合わせたダンジョンではなくラスティとサムのレベルに合わせたダンジョンに行くことになった。

 よくある洞窟型のダンジョンでダンジョン初心者がやや慣れて来た頃に行くのに最適な穴場的なダンジョンとの事だった。


 久しぶりに顔を合わせた故郷組みの5人だった。

 ヒックスとボビーはサムと顔を合わせても顔を顰めるだけだったが、パメラは凄く喜んでくれた。


 ヒックスとボビーが前衛。パメラは真ん中。その後ろにサムとラスティ。


 1年前とおなじ役割をお互いに確認した5人はダンジョンに潜っていった。



 サムは、仲間から抜けた後はソロでの活動が多かったので、あまりダンジョンに潜った経験がない。

 それでも次々と湧いてくる獲物に疑問を感じた。



 「なぁ。ダンジョンて普通こんなに魔物がわくのか?」

 「さぁ。僕も久しぶりだからアレだけど、ヒックス達は『稼げるところ』を知っているんじゃない?」


 スライムの核は安価だが確実に売れる。兎の魔物もその肉や皮がいつでも買い手がつく。

 そのスライムや兎のような魔物が次々と湧いてくる。

 草原ではなく洞窟に何故兎がいるのかは疑問だが、魔物というものはそういうものらしい。


 こんなに狩りやすい魔物ばかり出てくる場所をサムは知らなかった。

 そして穴場的な存在のためだろうか、他に人の姿を全然見かけないのも変なような気がした。


 「ひとつひとつはお安めだけど数を集められたとなればひと財産だね。よし、この辺のはあらかた狩ったから奥へ進もう」


 サムと話をするのはラスティだけである。ヒックスとボビーは不機嫌なまま、パメラはそんな空気に戸惑っているように見えた。


 (昔のよしみで手助けに来てやったというのに…)


 サムも、今回だけの事だと自分に言い聞かせ、居心地悪い空気を気にしないように自分の役割だけはきちんと遂行することにした。



 「あいかわらず、そうするんだな」


 ヒックスが珍しくサムに話しかけた。


 「ああ」


 答えを返した時にはヒックスはもう反対方向を見ていた。

 サムは肩をすくめ「話かけたんじゃなくて独り言かよ」と呟いて、残りの使用済みの矢を回収する作業を続けた。


 節約のためだが、他のメンバーにはいい顔をされなかったサムの習慣である。

 村でどん底の経済状態を経験したサムには矢の使い捨てなど到底できるものではなかったのである。

 だが、矢を回収することに拘っていては進度が送れる。

 ヒックスは「そういうものはまた買い足せばいい」という考えのようで、そのことでよく喧嘩になったものだった。


 今は冒険者になった頃に比べて回収することに以前ほど拘りはないが、それでも矢は出来るだけ節約をしたいのに変りはなかった。


 ラスティも獲物を回収し終わったようだったので、サムも皆の背を追った。


 「剣は使わないのかい?」


 ラスティが聞いてきた。


 「未熟な剣技に振り回されてしまうだろうからね。俺は弓が得意だし、お金が溜まったら指南してくれる人を探すよ」


 ただし、姉を買い戻して自由の身にしてからだ。

 サムの優先順位は決まっていた。

 まずは姉のことが一番である。

 上がるか分からない剣技の腕にお金を費やす余力はない。


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